【ソーシャルワークの現場から-支援連携の輪-】[京都]脳神経リハビリ北大路病院/医療ソーシャルワーカー・吉良 英弥 氏
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医療ソーシャルワーカー・吉良 英弥 氏
medical social worker / Kira Hideya
ヘルパー・ケアマネ・MSW 輝く三つの経験
京都市内の回復期リハビリテーション病院に勤務する、医療ソーシャルワーカー(以下、MSW)の吉良英弥さん。訪問ヘルパー、ケアマネジャー(以下、ケアマネ)として培った経験を活かし、「在宅生活を知るMSW」として、退院支援と地域連携に取り組まれています。
「ご本人の思いと、少しの環境調整があれば、どなたでもご自宅に帰れる」の信念のもと、地域のケアマネや多職種と連携し、切れ目のない支援を実践する吉良さんに、お話をうかがいました。
在宅生活を知る強み
■あいらいふ編集部(以下、あいらいふ):
本日はよろしくお願いします。まず、現在のお仕事について教えてください。
■医療ソーシャルワーカー・吉良さん(以下、MSW吉良):
京都市内にある「脳神経リハビリ北大路病院」の地域連携室で、回復期リハビリテーション病棟の患者さんを中心に、退院支援を担当しています。
急性期の治療を終えた患者さんが、ご自宅へ戻られるのか、施設へ入居されるのか。
患者さんやご家族のお気持ちをうかがいながら、医師や看護師、リハビリスタッフ、地域のケアマネなど多職種と連携して、退院後の生活を組み立てていくお手伝いをすることが主な役割です。
■あいらいふ:
吉良さんは、訪問ヘルパー、ケアマネを経てMSWになられたそうですね。
■MSW吉良:
もともとは大学で農学を学んでいて、卒業後はカナダへワーキングホリデーに行きました。もう、何十年も前の話ですが、行く先でさまざまな人や文化に触れた経験は、大きな財産になったと今でも感じています。
子どもの頃の自分は口下手で人見知りな性格だったので、そうした環境が自分を成長させてくれたという思いもありますね。
帰国後は、学生時代に飲食店でアルバイトをしていたこともあって、「人と接する仕事がしたい」という思いと、シンプルに人の役に立ちたいという希望があって、福祉の分野に進むことを決めました。
まずは訪問ヘルパーとして働き始め、約7年間、在宅介護の現場を経験。その間、通信教育で社会福祉士の資格を取得し、同じころにケアマネの資格も取得しました。
その後は、別の病院内にある居宅介護支援事業所にケアマネとして勤めたのですが、その病院の地域連携室へ配属されたことをきっかけに、MSWとして働くようになりました。
振り返ると、本当に巡り巡って今の仕事にたどり着いたという感じですね。それでもここに行き着いて、天職だなと思える仕事をしているのは幸せだと思っています(笑)。
退院後のイメージを共有する支援
■あいらいふ:
訪問ヘルパー、ケアマネとしての経験は、現在のMSWとしての退院支援にも生きていますか。
■MSW吉良:
それはもう。ヘルパー時代は毎日のようにご利用者のご自宅へうかがっていましたから、どなたにも必ずその方らしい生活があって、それを支えるのが福祉だということを、現場で身をもって教わりました。
ケアマネになると、今度は介護サービス全体を組み立てる立場になります。訪問介護やデイサービス、福祉用具のレンタルをどのように組み合わせれば、ご利用者が安心して暮らせるのかを考えるようになりました。
ヘルパーとケアマネ、二つの経験があるからこそ、退院後のご自宅での生活を、患者さんとご家族が具体的にイメージできるように伝えられ、退院までの道筋を描きやすくなる。在宅介護の現場を見てきた経験が、自分の強みだと思います。
入院中は「この状態で、本当に家に帰れるのか」とご不安を抱きがちです。お気持ちは痛いほどわかります。ただ、ご本人の思いと少しの環境調整があれば、どなたでもご自宅に帰れるというのが私の信条ですね。
もちろん、「ご自宅に帰せなかったら負け」という頑なな話ではありません。在宅介護を知っているからこそ、ご利用者とご家族に、実情に即した選択肢を、より幅広く効果的に提示できる。ご本人とご家族にとって最も納得していただける道を、一緒に考えながら選んでいただくことが大切です。
支援者同士の「顔の見える関係」
■あいらいふ:
吉良さんが、地域連携で大切にされていることを教えてください。
■MSW吉良:
個人的に重視しているのは、退院後に患者さんの在宅生活を支える、地域のケアマネとの連携ですね。とにかく話しかけやすく、気軽に声をかけてもらえる存在であることを心がけています。
退院支援は病院だけで完結するものではありません。患者さんがご自宅へ戻られてから、本当の生活が始まります。その生活を支えるのは、地域のケアマネや介護サービスの皆さんです。
病院から地域へ支援を「引き継ぐ」のではなく、「一緒に支える」感覚を大切にしています。
電話でのやり取りだけで終わらせず、一度でも顔を合わせて話をすると、その後の相談のしやすさが断然、違ってきます。そうした積み重ねの中で、構築される関係性を大事にしたい。
患者さんの退院前には、病棟のリハビリ専門職がご自宅を訪問し、住環境や生活動線を確認する「家屋評価」※という業務があるのですが、このときに、できるだけ同行するようにしています。
現地で直接、ケアマネと顔を合わせて、「ここは手すりが必要ですね」「このサービスを利用しましょう」と、支援体制を一緒に組み立てていく。専門職同士の『顔の見える関係』が、切れ目のないサポートにつながります。
※家屋評価:退院後の生活を見すえた、ご自宅の住環境の確認・評価業務

チームプレイでゴールを目指す
■あいらいふ:
休日は、どのように過ごされていますか。
■MSW吉良:
最近は、バスケットボールに夢中です。もういい年になってから始めた趣味なのですが(笑)、何よりチームプレイが楽しい。
得点がたくさん入る競技なので、初心者でもシュートを決められる場面がありますし、チーム全員でゴールを目指していく一体感が醍醐味ですね。
この感覚は、医療や介護の多職種連携にも通じるものがあると思います。医師や看護師、リハビリスタッフ、MSW、地域のケアマネ。
それぞれ役割は違いますが、目指しているゴールは、「患者さんが安心して生活できること」。一人ではできないことも、チームが連携して支えることで実現できる。その面白さが、MSWの仕事にも共通していると感じます。
10年後も、現場で患者さんと向き合いたい
■あいらいふ:
最後に、今後の目標をお聞かせください。
■MSW吉良:
地域連携室では主任代行という立場になり、管理業務も少しずつ増えてきました。
もちろん組織をまとめる役割も大切ですが、私はやはり現場が好きですね。お一人おひとりのお気持ちに寄り添い、患者さんとご家族にとってより良い選択肢をどう実現するかを考え続けることが、私にとって一番やりがいを感じられる仕事です。
いま、48歳ですが、10年後だろうと、何年たっても、現場で患者さんやご家族と直接お話をしながら、退院支援に携わっていきたいと思っています。
===取材協力===
医療法人清水会 脳神経リハビリ北大路病院
京都府京都市左京区一乗寺西水干町25-2
取材・文・撮影:鈴木孝英
豊かなシニアライフのための情報誌『あいらいふ』編集部
【誌名】『あいらいふ』vol.184(2026年7月30日発行号)
【概要】初めて老人ホームを探すご家族の、施設選びのポイントをさまざまな切り口でわかりやすく解説。著名人に介護経験を語っていただくインタビュー記事のほか、人生やシニアライフを豊かにするためのさまざまな情報や話題を取り上げて掲載。
【発行部数】4万部
【配布場所】市区役所の高齢者介護担当窓口・社会福祉協議会・地域包括支援センター・居宅介護支援事業所・訪問看護ステーション・病院・薬局など1万か所