【ソーシャルワークの現場から-支援連携の輪-】[大阪]ケアプランセンターさんきゅーネクスト/介護支援専門員(ケアマネジャー)・山本 昌史 氏

介護支援専門員(ケアマネジャー)・山本 昌史 氏
care manager / Yamamoto Masashi
人を支える仕事は 一人じゃできない
介護保険制度のもとで、ご利用者を適切な介護サービスにつなぐケアマネジャー(以下、ケアマネ)。大阪府高槻市の居宅介護支援事業所に勤める山本さんは、20年以上にわたり、ご利用者に寄り添いながら、地域の支援者同士を結ぶ活動にも取り組んできました。
「人を支える仕事は、一人じゃできない」。多職種とのつながりを大切に歩んできた山本さんに、対人援助にかける思いをうかがいました(聞き手:あいらいふ編集部、あいらいふライフコーディネーター・種池 健太)
介護の世界で25年
■あいらいふ編集部(以下、あいらいふ):
本日はよろしくお願いいたします。まず、山本さんが介護業界に入られたきっかけから教えてください。
■ケアマネ・山本さん(以下、CM山本):
この業界に入ったのは2000年ごろ。もともとは別の仕事をしていたのですが、知人から「介護保険という新しい制度が始まるから、福祉の業界で一緒にやってみないか」と声をかけられたのがきっかけです。
決して立派な志があったわけではありませんが、新しいことが始まる面白さには魅力を感じていましたね。
最初は民間のデイサービスの立ち上げに携わり、運営だけでなく現場にも入るようになって。介護の経験はありませんから、毎日が勉強でした。
現場でご利用者と接する中で、この仕事の面白さを実感するようになり、「もっと深く知りたい」という思いが強くなりました。経験を積む中で、ケアマネの資格も取得しました。
■あいらいふライフコーディネーター・種池(以下、ILC種池):
何が山本さんのモチベーションにつながったのでしょうか。
■CM山本:
やっぱり、ご利用者やご家族から「ありがとう」と言っていただけることですね。こんなに人から感謝される仕事があるのか、と感動して(笑)。
人の人生に関わり、その方の生活を支える仕事の面白さを知って、自分の生涯の仕事にできればと思ったんです。
「相談できる」と思ってもらえる存在に
■あいらいふ:
ご利用者とご家族のご相談に乗る上で、山本さんが大切にされていることは何でしょうか。
■CM山本:
大切なのは、困ったときに「この人なら相談できる」と思っていただける関係をつくることです。
ケアプランのご相談では、ご本人の日常生活だけでなく、家族関係や経済的なご事情といった、特にプライベートな部分までお話しいただくこともあります。信頼関係のない相手に、なかなか本音は話せませんよね。
ですから、相手の話をしっかり聞くことはもちろんですが、僕はそれだけではなく、自分自身の経験や考え方もお話しするようにしています。趣味の話をしたり、「私も同じような経験があります」とお伝えしたり。
共通点や、共感できることが一つでも増えれば、もっと身近な存在になれるのでは。そんな思いで、自分の人柄を知っていただき、人と人との関係を築いていくことを心がけています。
■ILC種池:
ケアマネは、ご利用者と数年単位で関わることも多い仕事だと思います。長いお付き合いを続ける中で意識されていることは?
■CM山本:
本当に長い方ですと、10年近く担当させていただくこともあります。
良い関係が築けていると、ご利用者から「待っていたよ」「そろそろ来る頃だと思っていた」と迎えていただけることもあります。
「今月はこんなことがあった」と、ご本人からお話ししてくださったり、ご家族からも気軽にご相談をいただけるようになったり。そうした関係を築けることは、この仕事ならではの魅力だと思います。
私も、以前にお聞きしたお話や何気ない会話なども覚えておいて、「以前にこんなお話をされていましたね」などと、やり取りをするように心がけています。
■あいらいふ:
ご利用者の皆さんとの時間が、山本さんご自身の活力にもなっている感じですね。
■CM山本:
友人とは少し違いますが、近しい身内のような感覚でしょうか。日頃の事務作業のストレスを、ご相談者とお会いしてお話しすることで解消しています(笑)。
困ったとき、思い浮かぶ顔
■あいらいふ:
山本さんは、高槻市内の介護関係者による連絡会「高槻ケアネット」の会長としても活動されています。
■CM山本:
高槻ケアネットは、介護保険制度が始まった2000年に、「みんなで学び、横のつながりを持とう」という考えからスタートしました。
私自身は20年ほど活動に参加しており、2022年から、2代目の会長を務めています。現在は、約60人の個人会員のほか、およそ10事業所が参加しています。
当初はケアマネが中心でしたが、現在は、医師や看護師、リハビリ職、介護事業者、福祉用具の専門相談員などが参加する多職種連携のネットワークへと発展しました。
ケアマネの仕事は、一人で完結できるものではありません。僕が知らないことをネットワークの中の誰かが知っていたり、その逆もあります。だからこそ、普段から横のつながりを築いておくことが大切です。
一人の人間、一つの制度では解決できないこともある。「この人に相談したい」と思える相手がいれば、ご利用者への支援の幅が、大きく広がります。
ケアネットは、そうした専門職同士の顔の見える関係づくりを支え、地域全体でご利用者を支える連携をスムーズにする役割を果たしています。
■あいらいふ:
実際に、ネットワークが活かされた場面はありますか?
■CM山本:
印象に残っているのは、老々介護を続けていたご家族のケース。介護を担われていた方が、突然倒れて救急搬送、入院されてしまったんです。
情報を知った訪問看護から連絡が入り、そこから、ネットワークを通じて連携。被介護者の方の安全を確保するための、レスパイト入院(介護者の休養を目的とした被介護者の短期入院)を手配しました。幸い、翌日には受け入れ先が決まり、介護タクシーによる入院先の病院への送迎まで、迅速につなぐことができました。
日頃から連携していた皆さんの力添えがあったからこそで、もし普段から顔の見える関係ができていなければ、ここまでスムーズには進まなかったと思います。
あらためて、人と人とのつながりの大切さを実感した出来事でした。「人を支える仕事は、一人じゃできない」。いつもそう感じています。

お話をうかがった山本 昌史さん(右)とあいらいふライフコーディネーターの種池 健太(左)
最後にもう一度、甲子園へ
■あいらいふ:
これまで担当された中で、特に印象に残っているご利用者とのエピソードはありますか?
■CM山本:
忘れられないのは、末期のがんを患われていた、阪神タイガースファンのご利用者です。訪問するたびに、昨日の試合について熱く語ってくださる、本当に野球が好きな方でした。
ご病状など、体調がすぐれない中でも、いつも笑顔を絶やさず、周囲を明るくしてくださっていたことが印象に残っています。
ある日、その方が「最後に、もう一度だけ甲子園へ行きたい」とお話しされたんですが、その言葉を聞いて、訪問診療の先生が観戦チケットを手配してくださったんです。訪問看護師さんは、ボランティアで付き添いを申し出てくださいました。
私たちもケアネットを通じて、福祉用具や介護タクシーの担当と相談しながら、車イスで観戦できるように準備を進めました。地域の多職種が、「何とかご利用者の願いをかなえたい」という思いで動いていました。
直前になってご本人の容体が急変し、甲子園へ行くことはかなわなかったのですが、火葬場に向かう前に、ご本人を乗せた車が甲子園の前を通りました。
「生きている間には行けなかったけれど、最後に大好きな甲子園を見せてあげたい」。そんなご家族や支援者の思いが重なった出来事でした。
今でもあの時のことは忘れられません。「その人らしい人生」を支えることの意味を、あらためて教えていただいた出来事だったと思っています。
支援の輪を、これからも
■あいらいふ:
最後に、今後の目標を教えてください。
■CM山本:
2026年の6月から、新たに立ち上げるケアプランセンターで、管理職を務めることになりました。
“一人でも多く、一日でも長くケアマネが活躍できる”をコンセプトに、在宅勤務や時短勤務など、ライフスタイルに合わせた柔軟な働き方を取り入れる予定です。
ケアマネの高齢化や人材不足は、地域の大きな課題です。介護保険制度が始まった頃に資格を取得した世代が退職し、地域のケアマネは今後、ますます減っていくことが予想されています。
「フルタイム勤務は難しいけれど、経験を生かして現場で働きたい」。そうした方々が無理なく働き続けられる環境を整えることで、多くのケアマネが地域で長く活躍できるようにしたいと考えています。
■ILC種池:
さんきゅーさんへおうかがいするたびに感じるのですが、とてもアットホームで一体感のある会社ですよね。
ケアプランセンターや福祉用具など複数の部署があっても、それぞれが壁を作ることなく、一つのチームとしてご利用者を支えている印象があります。会社全体に「人を大切にする」考え方が根付いていることが、雰囲気から伝わってきます。
■CM山本:
ありがとうございます。ご利用者やご家族との信頼関係も、社内のチームワークも、支援者同士の連携も、すべて人と人とのつながりから生まれるものだと思っています。
これからも地域の皆さんと力を合わせながら、一人ひとりが安心して暮らし続けられる地域づくりに、少しでも貢献していきたいですね。
===取材協力===
ケアプランセンター さんきゅーネクスト
大阪府高槻市上土室6-29-16
取材・文・撮影:あいらいふ編集部
豊かなシニアライフのための情報誌『あいらいふ』編集部
【誌名】『あいらいふ』vol.184(2026年7月30日発行号)
【概要】初めて老人ホームを探すご家族の、施設選びのポイントをさまざまな切り口でわかりやすく解説。著名人に介護経験を語っていただくインタビュー記事のほか、人生やシニアライフを豊かにするためのさまざまな情報や話題を取り上げて掲載。
【発行部数】4万部
【配布場所】市区役所の高齢者介護担当窓口・社会福祉協議会・地域包括支援センター・居宅介護支援事業所・訪問看護ステーション・病院・薬局など1万か所