あいらいふレポート

【知っトク「注目のトピック」vol.09】疑似体験を通じて生き方・老い方を考える。日本科学未来館の新たな展示『老いパーク』とは?

国民のおよそ3割が65歳以上の超高齢社会・日本。そもそも「老い」とは、一体どのような現象なのでしょうか?東京・江東区の日本科学未来館では、「老い」を体感できる体験型展示『老いパーク』を開設しました。今回は同施設の概要をご紹介します。

疑似体験を通じて考える
「老い」との付き合い方

日本科学未来館では2023年11月、7年ぶりに常設展示の大幅リニューアルを実施。「ロボット」や「地球環境」などおなじみのテーマとともに、新たに「老い」を題材とした体験型展示『老いパーク』をオープンしました。

同パークは、前例のない超高齢社会を迎えている日本において、私たちが「老い」とどのように付き合っていけば良いのか、“豊かで自分らしい生き方・老い方”を実現するために、科学技術をどのように活用できるのかを学び、考えることを目的としています。

実際に、あいらいふの40代編集部員が同パークを見学してきました。

入り口では、ひときわ大きく輝く「老」のロゴマークが来場者をお出迎え。テーマパークのようなカラフルで明るい空間に、フェンスや遊具に見立てた「老い」についての解説が多数設置されています。

配布されている展示ガイドを手に取ったところ、ぼやけた印刷で文字がまったく読めず、ビックリ!後から老眼の疑似体験であることに気づかされるなど、インパクトのある仕掛けがあちこちに施されていました。

編集部員が挑戦!
「老い」を疑似体験

パーク内の展示は3段階に分かれています。

STEP1は「老いってなんだろう?」。来館者一人ひとりが考える「老いの始まる年齢」をマッピングして表示したり、20年前と現代の高齢者の運動機能データを比較することで、老いに対するとらえ方は時代や個人の考え方によってさまざまに異なり、一律に年齢では定義できないことを学びます。

STEP2の「老いを体験しよう!」では、シニア世代の多くが自覚しやすい目、耳、運動器(骨や筋肉など)、脳の4つの老化現象を疑似体験することで、誰にでも訪れる「老い」を体感します。

シニア世代がスーパーマーケットまで歩いて買い物に行く過程を再現したシミュレーター「スーパーへGO!」では、腰を曲げ、足に重りをつけた状態で外出にチャレンジ!なかなか前に進めず、横断歩道を渡るだけでも一苦労であることが、実感を伴って理解できました。

各アトラクションの主な監修は、国立研究開発法人 国立長寿医療研究センターなどが担当。併せて、現在わかっている老いのメカニズムや老化への対処法、研究開発中のロボットを用いたシニア世代のサポート技術なども紹介し、科学技術の側面から「老い」との付き合い方の選択肢を提示します。

STEP3の「自分らしい老いって?」は、同パークでの体験や、シニア世代へのインタビュー映像などをもとに、来館者が自分自身にとっての「望ましい老い」を考えるエリアです。

編集部員も、パーク内のさまざまな展示を体験したことで、すべての人の人生の延長線上に「老い」があることをあらためて認識するともに、「老い」との付き合い方には、思った以上にさまざまな選択肢が用意されていることに気づかされました。

社会課題を“自分の体験”に
浅川館長の思い

2021年の就任当初から、本展示の企画に携わってきた館長の浅川智恵子さんは、日本アイ・ビー・エム㈱の東京基礎研究所で、視覚障害者の支援プロジェクトなどを進めてこられた経歴をお持ちです。

今回のリニューアルに際しては、「展示体験が『未来の社会課題を、自分のこととして考える第一歩になる』ことを目指しました。将来、私たちが直面する可能性が高い課題を、最新の科学的知見とともに体験できるよう工夫しています。皆さん自身の未来を考える機会としていただければ」とコメントされています。

学習や疑似体験を通じて、「老い」に関するさまざまな知識や思いを共有する「老いパーク」。シニア世代とともに過ごす機会の多い方は、ぜひ一度訪れていただき、コミュニケーションのヒントを得るきっかけとしてみてはいかがでしょうか。

「日本科学未来館 老いパーク」
https://www.miraikan.jst.go.jp/exhibitions/future/oipark/
開館時間 10:00〜17:00
休館日 火曜日、年末年始
入館料 大人630円、18歳以下210円
6歳以下の未就学児無料

介護情報誌『あいらいふ』編集部
【誌名】『あいらいふ 2024年4-5月号』
【概要】 初めて老人ホームを探すご家族さまの施設選びのポイントをさまざまな切り口でわかりやすく解説。著名人に人生観を語っていただくインタビュー記事他、人生やシニアライフを豊かにするためのさまざまな情報や話題を取り上げて掲載。
【発行部数】4万部
【配布場所】市区役所高齢者介護担当窓口・社会福祉協議会・地域包括支援センター・居宅介護支援事業所・訪問看護ステーション・病院・薬局など1万か所

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