支援連携の輪

【ソーシャルワークの現場から -支援連携の輪-】[東京]医療ソーシャルワーカー・細川 沙紀氏

医療ソーシャルワーカー・細川 沙紀氏
medical social worker / Saki Hosokawa

「選択肢」は希望。
意思決定につなげる支援を

入院患者さまとご家族が安心して治療・療養に専念できるよう、また退院後にも安心して暮らせるよう、心理的・社会的問題を解決するための支援や調整を使命とする医療ソーシャルワーカー(以下、MSW)。緩和ケア病棟で、日々患者さまとご家族を支援する細川さんに話をうかがった。

ご家族を不安にさせない

■あいらいふ編集部(以下、あいらいふ):
よろしくお願いいたします。
最初に、MSWになった経緯を教えてください。

■医療ソーシャルワーカー・細川さん(以下、MSW細川):
三世代同居の家庭で長女として育ち、要介護5の祖父を学生時代から家族と協力して自宅で介護していた経験があったため、福祉の仕事に対する理解はありました。また、子どもの頃から面倒見が良いといわれて相談を受ける機会が多かったのですが、頼られることが励みになり、人の役に立つことに喜びを感じる性格でした。ですから、他人が抱えている悩みや問題を解決するような仕事がしたいとずっと考えていました。

大学時代は法学部で法律を学んでいたのですが、ホームヘルパー(訪問介護員)のアルバイトをしているうちに、次第に医療や福祉の仕事への興味が高まっていきました。ケアマネジャーの母からMSWの仕事を勧められ、自分でも適性があると感じていたので、社会福祉士の国家資格を取得して、MSWとして新百合ヶ丘総合病院に入職しました。今年で7年目になります。

■あいらいふ:
7年で副主任心得となり、多くの後輩をまとめる立場になられたんですね。
MSWには、どのような能力が必要だと思われますか?

■MSW細川:
やはりコミュニケーション能力は大切です。私は現在、患者さまの苦痛の緩和と生活の質を向上させるためのケアを提供する、緩和ケア病棟で働いています。緊急事態に直面して気持ちに余裕がない患者さまとご家族には特別な配慮が必要ですし、医師や看護師、薬剤師・栄養士・リハビリテーションスタッフなど、さまざまな専門職がチームの一員となるので、多職種の方々と上手にコミュニケーションがとれないと、業務に支障が出る可能性もあります。外部の医療機関との連携も必須ですので、スムーズに業務を進めるためには信頼関係を築く能力が必要です。

例えば私は、ご家族からお話をうかがう際、必ず事前に患者さまの病室に行って、ご挨拶させていただきます。そうすると、ご家族も安心してお話ししていただけることが多いんですね。そして、事前の情報収集を行い、お困りごとを想定してから質問するように心がけています。祖父の介護をしていた経験があるからこそ、ご家族の状況を理解したり、共感を示せる点もあります。お困りごとが具体的に把握できれば、解決に向けたさまざまなサポートを提供できますから。

とはいえ、実は私は人見知りなんですよ。プライベートではママ友作りにも苦労するほどです(笑)。けれども、患者さまとご家族を不安にさせないためには、甘えてはいられません。仕事となったら別人です。業務に対する責任感ゆえに身に付いたスキルだと自負しています。

■あいらいふ:
質問に対して、わかりやすく滑らかに答えてくださるので、人見知りとお聞きして驚きました。MSWとして、こういったコミュニケーションのとり方は良くないという例はありますか?

■MSW細川:
MSWになる前の話ですが、大好きだった祖父が入院したときに、家族の立場でMSWと関わった際の記憶が、悪い意味で印象に残っています。祖父が退院する際、MSWから「転院先はここしかありません!」と突き放すように病院名を告げられて、ほかに何の選択肢も示してもらえなかったんです。質問しようとしても遮られてしまい、家族全員が寄る辺ない気持ちにさせられました。私が関わる患者さまとご家族にはそんな思いはさせたくない、と強く思っています。

当院は“救急車を断らない”をモットーにしているので、身寄りのない方や、経済的に余裕のない方など、困難な状況に置かれた患者さまもたくさんいらっしゃいます。中には、退院後の選択肢が比較的限られてしまうケースもあるのですが、今後の暮らしを何ひとつ選べないと患者さまに思わせるような対応は絶対にしない、と心に決めています。

患者さまの幸せを一番に

■あいらいふ:
緩和ケア病棟での業務には、どのような特徴がありますか?

■MSW細川:
終末期の方が多いので、対応にはスピードが求められます。また、緩和ケア病棟を担当するMSWは、がんの疼痛・精神症状に対する緩和ケアを学ぶがん研修を受けるなど、知識を増やすよう努めています。また、ご家族にとっては患者さまの病気の種類が何であっても受容が難しいことに変わりはないので、ご家族へのケアも必要です。

■あいらいふ:
印象に残っているエピソードはありますか?

■MSW細川:
「自宅で療養生活をしたい。約束していた家族旅行にも行きたい」と希望されていた患者さまとご家族のために、MSWとしてさまざまな調整を行って在宅医療が可能な態勢を整え、病院からご自宅に帰宅していただいたことがあります。最終的には病状が悪化し、病院に戻ってお亡くなりになったのですが、ご逝去された後に、ご家族が家族旅行の写真を見せにきてくださいました。そして、私が関わってくれて良かったと感謝のお手紙もいただいたんです。

MSWは、患者さまが生まれてから亡くなるまでに経験するさまざまな出来事の中で、最も苦しいタイミングで関わりを持つ人間です。そんな時期に、私が関わったことで感謝していただけるような結果に辿り着けたなら、これほどうれしいことはありません。

■あいらいふ:
働く上で、日頃から心がけていることはありますか?

■MSW細川:
時として、ご家族が患者さまの回復を願うあまり、無理にリハビリをさせようとするケースがあります。けれども、例えば全身マヒで寝たきりの患者さまに対して、一日に何時間も他動的に身体を動かしてリハビリをさせることが、本当に患者さまのためになるのでしょうか。ご家族が望むリハビリを実施しても患者さまは苦しむだけ、という場合があるんです。

そんなときには多職種での連携を図り、医学的な話は医師から、日常生活については看護師から、リハビリについては理学療法士(PT)から説明していただけるようにお願いして、ご家族と話し合いの場を設けるようにしています。

患者さまのお身体の状態を医学的な見地から説明し、専門家から見たリハビリによる負担をお伝えするなど、常に「患者さまにとって一番の幸せを、ご一緒に考えていきましょう」という姿勢を心がけています。患者さまとご家族の双方に満足のいく時間を過ごしていただくことが、最大の目標です。

■あいらいふ:
専門職の方から説明してもらえると、ご家族も納得しやすいですね。病院内の多職種連携とともに、MSWの仕事には先ほどもお話しに出た外部の医療機関に加え、あいらいふのような有料老人ホーム紹介会社との連携も必要です。あいらいふに対しては、どのような印象をお持ちですか?

■MSW細川:
他の老人ホーム紹介会社と比べて格段に情報量が多く、それが最新の情報で、なおかつ、ご提供のスピードも速いですね。さらに、ご提案いただく施設数が多いので、選択肢が増やせる。例えば身寄りがない方を受け入れてくれる施設を探していて、他社からのご紹介が1、2か所に限られてしまう場合でも、あいらいふなら4か所、5か所とご紹介いただけています。

ご家族がいくつもの選択肢の中から、最善のものを選んだと感じられる状況にこそ意味があると思うので、その点、あいらいふの対応は本当にありがたい。担当ライフコーディネーターの山﨑さんは私と年齢も近く、コールバックも早いので、相談しやすい存在です。

■あいらいふライフコーディネーター・山﨑光也(以下、ILC山﨑):
ありがとうございます。細川さんから弊社にご連絡いただく際は、事前にご家族の意向をしっかりと確認してから相談してくださるおかげで、ご家族との面談を非常にスムーズに進めることができています。

■あいらいふ:
あいらいふは現在、有料老人ホームのご紹介だけでなく、シニア世代が直面する暮らしの中のさまざまなお困りごとをサポートする「トータルサポート事業」も展開しています。MSWの方から見て、こうしたサービスの必要性は感じますか?

■MSW細川:
介護保険サービスだけでは補えないサービスを、日常的に頼みたいというニーズは多いと思います。特に、子どもがいない方からの資産管理などの依頼は今後、増えるのではないでしょうか。MSWとしても、退院後に公的なサービスだけでなく、さまざまな種類の自費の介護サービスもあるとお伝えできるのは歓迎すべき状況です。

■ILC山﨑:
日常の家事のお手伝いや見守り、専門家による成年後見制度や家族信託など、さまざまなトータルサポートのサービスを提供しております。必要な方がいらっしゃいましたら、引き続き、どうぞお役立てください。

■あいらいふ:
山﨑さんから見て、細川さんはどのようなお人柄ですか?

■ILC山﨑:
先ほど、細川さんは子ども時代から面倒見が良かったとお話に出ましたが、今も後輩たちの面倒見が良く、こちらの病院にお邪魔するたびに皆さまに慕われている様子が伝わってきます。何かトラブルが起きたときには、細川さんに相談すれば解決してくれる頼もしい存在だとお聞きしました。後輩の方々は、”細川チルドレン”と呼ばれることもあるそうです(笑)。

■あいらいふ:
子どもの頃から、面倒見の良さや相談しやすいお人柄は変わらないんですね。ご自身の仕事のスタイルから、MSWの後輩の方々に学んでほしい点はありますか?

■MSW細川:
みんな一人前のMSWなので、仲間たちに学んでほしいなどと言える立場ではないんです。非常に優秀な後輩たちですから。それに、MSWは正解のない仕事なので、それぞれのキャラクターを活かして活躍してほしいと思っています。もちろん、誰かが困難なケースを抱えているときには、担当者だけが責任を負う状況にならないように、しっかりと状況を共有してもらい、全員でフォローするよう努めています。

ただ、ひとつだけ、何度も繰り返し伝えていることがあります。それは、「退院後にどのように過ごすかを選ぶのは、患者さまとご家族。こちらが決めつけてはいけない。選ぶために最大限のサポートをすることが、私たちMSWの役割」ということです。そして、患者さまとご家族から、関わって良かったと感じてもらえるMSWになってほしいと願っています。

■あいらいふ:
細川さんの今後の目標を教えてください。

■MSW細川:
まだ担当したことのない回復期の患者さまや、疾患のある方がいらっしゃるので、さらに経験を積みたいと思います。そして、昨年から看護師の方が同じ部署で働く体制に変わったため、さまざまな疾患への対応方法などを教えていただきながら、どのようなケースでも万全の対応ができるMSWを目指していきます。

■あいらいふ:
最後に、お仕事をする上で愛用している物があれば教えてください。

■MSW細川:
仕事柄メモをとる機会が多いので、いろいろなペンを試した結果、書きやすさでこのペンを選びました。当院のMSWは全員が同じペンを使っているので、替え芯をまとめて購入できて便利です。

【プロフィール】
南東北グループ 医療法人社団三成会

新百合ヶ丘総合病院
サポートセンター 医療福祉課
副主任心得 細川沙紀

大学の法学部を卒業後、別業種での就職を経て、適性のあるMSWを目指そうと決意。訪問介護員(ホームヘルパー)として働きながら社会福祉士の資格を取得し、2017年に新百合ヶ丘総合病院に入職。現在は同病院で入退院やがん相談などの支援を行う「サポートセンター」医療福祉課の副主任心得を務める。ご家庭では祖父、両親、細川さんご夫婦、お子さまの4世代同居のご自宅で育児に奮闘中。

===取材協力===
南東北グループ 医療法人社団三成会
新百合ヶ丘総合病院
神奈川県川崎市麻生区古沢都古255
https://www.shinyuri-hospital.com

介護情報誌『あいらいふ』編集部
【誌名】『あいらいふ 2024年6-7月号』
【概要】 初めて老人ホームを探すご家族さまの施設選びのポイントをさまざまな切り口でわかりやすく解説。著名人に人生観を語っていただくインタビュー記事他、人生やシニアライフを豊かにするためのさまざまな情報や話題を取り上げて掲載。
【発行部数】4万部
【配布場所】市区役所高齢者介護担当窓口・社会福祉協議会・地域包括支援センター・居宅介護支援事業所・訪問看護ステーション・病院・薬局など1万か所

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