支援連携の輪

【ソーシャルワークの現場から -支援連携の輪-】[京都]居宅介護支援事業所 代表・渡邉 祐一氏、介護支援専門員(ケアマネジャー)・森本圭祐氏

※写真のスプレーボトルは同社が運営する障がい者支援施設にてラベル貼りを行っている除菌・消臭剤

居宅介護支援事業所 代表・渡邉 祐一氏、介護支援専門員(ケアマネジャー)・森本圭祐氏
chief executive officer / Yuichi Watanabe, care manager / Keisuke Morimoto

働いてくれる人の幸せのために

介護を必要とする方やご家族の相談に乗り、適切な介護サービスが受けられるようにサポートすることが、ケアマネジャー(以下、ケアマネ)の大切な仕事。今回は、ケアマネの待遇改善に果敢に挑み、結果的にご利用者へのサービス向上につながっている事業所の代表らに、お話をうかがった。

「稼げない」常識を変えたい

■あいらいふ編集部(以下、あいらいふ):
今回は居宅介護支援事業所を運営する株式会社五力の代表・渡邉さんと、同事業所で活躍するケアマネ3名さまに、お話をうかがいたいと思います。よろしくお願いいたします。まずは、渡邉さんのこれまでの経歴を教えてください。

■居宅介護支援事業所 代表・渡邉さん(以下、代表・渡邉):
居宅介護支援事業所「ごりきケアプランセンター」は、2019年1月に設立しました。経営者で尼さんでもあった祖母から、訪問介護事業を立ち上げるから代表に就くようにと頼まれたことが、介護業界に関わるきっかけです。それまで、介護や福祉の仕事に関わった経験は皆無でした。

前職では、全国展開している飲食店チェーンの東京・日本橋にある店舗を任され、店長として身を粉にして働いていました。オフィス街にある繁盛店でしたので、昼の3時間で何百人のお客さまにランチを提供できるか、スタッフと一丸となってアスリートのように限界まで数字に挑戦する毎日でした。充実した生活でしたが、思わぬタイミングで未経験の分野にチャレンジする機会が与えられたので、思い切って決断しました。

■あいらいふ:
店長まで務めていたのに、決断されたんですね。もともと起業したかったのですか?

■代表・渡邉:
起業したいという気持ちはあったのですが、明確な理由があるわけではなくて。店長といっても、特に失うものはありませんから。単純に、型にはめられるのが嫌いな性格なんだと思います。

そうして最初に立ち上げた「ヘルパーステーションごりき」には専門職の方がそろっていたので、私自身もホームヘルパー(訪問介護員)をしながら、最初は労務や経理をすべて私が担当していました。

■あいらいふ:
飲食業とはまったく違う業務ですね。慣れるまで苦労したのでは?

■代表・渡邉:
私はそれ以外、できなかったので。おかげさまでホームヘルパーは15名も集まり、事業自体は順調ですぐに軌道に乗ったのですが、ものすごい勢いでお金が出ていくんですよ。黒字倒産しないように、自らの報酬は後回しにして、従業員の給料を支払うために土日にアルバイトをして稼いだり、個人で保有していた株式を売り払ったりしていました。

当時は、一体何のために仕事をしているんだろう、と考えたこともありました。飲食店の店長を務めていた時代はそれなりの給料をもらっていたのに、一気にゼロになり、さらにはマイナスになってしまったのですから。

過去を振り返ると、私は高校も大学も、その後に留学した海外の専門学校も中退しており、転職回数も多いんです。大学を中退してぶらぶらしていた時期には、祖母に「ちゃんとせえへんやったら、あんたを殺して私も死ぬ!」と怒られたぐらい(笑)、一つのことを一生懸命続けることができない人間でした。

そんなマイペースで生きてきた私が、何のために仕事をしているんだろうと自問自答した結果、出した答えが「一緒に働いている人の給料のため、その人たちが幸せになるために頑張ろう」だったんです。

■あいらいふ:
前職の店長もあっさり辞められたというお話でしたね。それが、ここにきて急激に責任感が芽生えた。その理由は何ですか?

■代表・渡邉:
もともと介護業界は低賃金だと聞いていましたが、それはおかしいという意識があったんです。責任ある仕事を担う従業員が頑張るためには、理由が必要です。賃金を上げるために頑張ろうと思ってほしいし、ここで働いて良かったと喜んでほしい。根底にその想いがあったからこそ、苦しい時期を乗り切れたのだと思っています。

その後、居宅介護支援事業所、障がい者福祉事業、介護タクシーと年々事業を拡大していくことになりましたが、そこで働く従業員に対しても、できるだけ賃金を上げたいと思い、実行しています。ケアマネに対しても同様で、「ケアマネは稼げない」といわれる常識を変えたい。今日は弊社のケアマネ3名も同席していますので、ぜひ彼らにも話を聞いてください。

■あいらいふ:
森本さんは、どのようなご縁で入社されたのですか?

■ケアマネジャー・森本さん:
入社前は、他社で正社員の理学療法士(PT)として働きながら、「ヘルパーステーションごりき」でホームヘルパー(訪問介護員)のアルバイトをしていました。経験を積み、一年前にケアマネの資格を取得したのですが、ケアマネの仕事は大変そうなイメージがあって、転職に踏み切る勇気が出ませんでした。

けれども、ホームヘルパーとして働き始めて一年ほど経った頃、サービス提供責任者の方と渡邉社長から、「せっかく資格があるのなら挑戦してみたらどう?」と勧められて。やっぱりご縁ですね。入社後、約半年がたちましたが、二足のわらじを履いていた以前よりも、ケアマネのみを専業にしている現在の方が安定した収入を得られています。

■あいらいふ:
ベテランのお二方は、入社前と比べていかがですか?

■ケアマネジャー・辻さん、木村さん(以下、CM辻、CM木村):
約1.5倍ぐらい年収が上がりました。もっと上がったかもしれません。頑張った分をしっかりとお給料に還元してくれるので、働き甲斐があります。

■あいらいふ:
人手不足の問題も深刻ですし、収入面の話は避けて通れない問題ですね。

■代表・渡邉:
ごりきと関わることで、みんなが豊かになってほしい。そうでないなら、私がやる意味がありません。利益のみを追求するなら、それが得意な企業が運営すればいいのですから。ごりきがやるからには、事業が成り立つように利益も上げつつ、従業員も、ご利用者の幸せも叶えたいんです。

■あいらいふ:
他社より給料を上げるために、どのような工夫をしているのですか?

■代表・渡邉:
弊社のホームページにも掲載しているとおり、求人に必要以上のお金をかけず、従業員への福利厚生や教育、待遇改善にお金を使いたいと考えています。

また、固定費をできるだけ低く抑える努力をしています。複数の事業を一つの場所で行っているので、その分、賃料は安く抑えられる。家具やパソコンなどはすべて中古品をそろえています。知り合いから無償で譲っていただいた物もあります。

それと、今でこそ事務員を配置していますが、長期間、私一人で経理や管理業務を行っていたことも、人件費の抑制につながりました。あとは、理事長や理事などお金のかかる役職を設けていないことも大きいかもしれません。

■あいらいふ:
ホームページに掲載されている求人にお金をかけないというお話自体が、何より応募意欲をかきたてる情報になりますね。労働環境や働きやすさの面で工夫されていることはありますか?

■代表・渡邉:
フレックスタイム制とテレワークを導入して、働きやすい環境を整備しています。また、PBX(※)という機器を利用して、代表電話番号に電話がくるとテレワーク中でも外出中でも全員に着信する効率の良い通話網を整えました。

■CM辻:
必ず出勤しなければいけない日は月3回だけで、それ以外の日はテレワークも、ご利用者宅への直行直帰も可能です。自分の生活スタイルに合わせて動ける自由な環境なので働きやすさは抜群です。

■CM木村:
自社で介護タクシーや便利屋の事業も展開しているため、さまざまな要望を対処するときに助かっています。

※写真右 代表・渡邉さん、左 ケアマネジャー・森本さん

自費サービス利用を選択肢に

■あいらいふ:
昨年から、家事代行や不用品の処分、通院の付き添いなど、さまざまなお手伝いをする「便利屋ごりき」も始められましたね。状況はいかがですか?

■代表・渡邉:
厳しいですね。原因の一つとして、ケアマネが業務の範囲外のことでも、ご利用者のためにとボランティアの状態で手助けしている。そのような状態のご利用者が数名だけならまだしも、担当するご利用者の1/3、1/4を占めるようになったら、本業にも支障を来してしまいます。

■あいらいふ:
ボランティア精神でご利用者の生活を支えるといっても、限界がありますからね。

■代表・渡邉:
介護保険制度も財政面で大変厳しい状況を迎えていますし、今後、要支援1・2の方が受けられる介護サービスが、現状のまま維持できるかはわかりません。

介護保険のサービスに頼りきりではなく、必要とする方に自費でのサービスを提供できる仕組みをつくっておかないと。社会制度としての介護・福祉にかかる人的・経済的負担を早急に、いかに軽減するかが重要だと考えています。

■あいらいふ:
ご利用者が本格的に介護を必要とされるようになると、有料老人ホームも選択肢に入ってくると思われます。有料老人ホームの紹介業は、弊社のメイン事業ですが、ケアマネの立場からは、有料老人ホームに対してどのような印象をお持ちですか?

■CM木村:
特別養護老人ホーム(特養)や介護老人保健施設(老健)は費用が安い分、入所希望者が多く、なかなか入所できません。経済的に余裕がある方なら、費用やサービスなど、さまざまな選択肢の中から選べて、待たずに入居できる有料老人ホームをお勧めすることも少なくありません。

実際に、ご利用者が有料老人ホームへのご入居を希望される場合は、あいらいふ(まごころ入居相談<※>)のような有料老人ホーム紹介事業者に対応をお願いしています。施設数があまりに多いので、私たちケアマネには、それぞれの施設の特徴や入居条件、レクリエーションの有無など、細かな部分までわからないんです。安心してお願いできるプロの方々に、いつもサポートしていただいています。

■あいらいふ:
ありがとうございます。引き続き、必要な際はぜひ弊社のサービスをお役立てください。
今後、さらなる新事業を展開するご予定はありますか?

■代表・渡邉:
いくつかやってみたい事業はあります。けれども、弊社の事業はすべて最初に”人とのご縁”があって始まった事業なんです。

■あいらいふ:
何年までにこの事業を始めよう、といった事業計画を立てていたわけではないんですか?

■代表・渡邉:
ええ、違うんです。例えば、障がい者福祉事業の場合は、弊社社員の過去の職場から、「事業所の閉鎖が決まり利用者さんが困っているので、何とかなりませんか?」と、切迫した状況で相談されたことがきっかけでした。それなら、うちで事業所を始めてみましょうか、という流れです。ただただ、ご縁に恵まれ、人が集まってきてくれた結果、今があるんです。

ですから、「一緒に働いている人たちが幸せになるために」という気持ちを忘れずに、家族や友人、仕事仲間からいただいてきたたくさんの愛情を、従業員にも、従業員を通じてご利用者にも、注いでいこうと思っています。

■あいらいふ:
素敵なお話をありがとうございました。

【プロフィール】
株式会社五力

法人代表 渡邉 祐一

オーストラリアに留学し、英語と経営学を学ぶ。帰国後、飲食業界を経て、未経験で介護事業の経営者となる。介護を知らないことを強みと捉え、専門家がいかに活躍できるかを考え、組織作りをしている。今後も農業やイベント企画など、事業をさらに広げていきたいと語る。 モットーは「新しいことを面白がる」。

===取材協力===
株式会社五力
京都府京都市右京区西京極北庄境町61-7
https://herupa-goriki.com/

介護情報誌『あいらいふ』編集部
【誌名】『あいらいふ 2024年6-7月号』
【概要】 初めて老人ホームを探すご家族さまの施設選びのポイントをさまざまな切り口でわかりやすく解説。著名人に人生観を語っていただくインタビュー記事他、人生やシニアライフを豊かにするためのさまざまな情報や話題を取り上げて掲載。
【発行部数】4万部
【配布場所】市区役所高齢者介護担当窓口・社会福祉協議会・地域包括支援センター・居宅介護支援事業所・訪問看護ステーション・病院・薬局など1万か所

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