INTERVIEW

話しやすく、落ち着いた雰囲気で ご相談に真摯に向き合う。

ライフコーディネーター 谷本 直人

  • 成し遂げたときの景色を もっと広げるために

    あいらいふのライフコーディネーターになるまでの経緯を聞かせてください。

    中学二年生のときに母が他界してから、厳格な父に、男手一つで育てられました。

    私は三人きょうだいの長男ですが、父に叱られながら家の手伝いをし、時に反発してはまた叱られて。それでも、姉や弟のことも気にかけながら葛藤の思春期を過ごす中で、「人のために何かをしたい」という思いが芽生えていったのを覚えています。

    福祉系の大学に進学したのですが、スーパーマーケットでアルバイトをしていた際に、販売の仕事に興味を持ち、卒業後はそのままスーパーの店長として社会人経験を積みました。

    人間的に未熟な20代でしたが、「頼られる人になろう」という志をもって、売上にコミットすることの楽しさや、物事に冷静に対処することの大切さを学ぶことができたと思っています。

    30代に入ってから、大学での学びを活かす方向へ人生を切り拓こうと、介護の現場に足を踏み入れ、デイサービス、訪問入浴の責任者、高齢者施設への訪問販売を経験しました。

    介護サービスの提供やご利用者とのふれあいを通じて、在宅生活を支える仕事に意義ややりがいを感じていたのですが、折悪く腰を痛めてしまったんです。

    自分だけでできることに限界を感じ、もっと周りの人の力を借りて活動の範囲を広げようと、相談員の仕事に転職しました。

  • #常に謙虚に、相手本位に。

    仕事観について聞かせてください。

    まず、自分を過信しないこと。「常に謙虚な気持ちで」、「初心忘れるべからず」、これらの考えを前提として持っています。

    相談員になって間もない頃、ご相談に乗る中で、相手への気配りが足りなかったと後悔したことがありました。

    例えば、ご相談者に電話1本かけるにしても、ご本人が出やすい時間帯を事前に確認していなかったり、会いに行けるのに電話で済ませていたり。自分本位の仕事になっていました。だから信頼を得られなかったんだ、と。

    以来、ご相談の際には、相手のご意向に沿った対応を徹底しています。ご相談を途中で断念されてしまうことが、何よりも残念で仕方ありませんから。

    また、「とにかくしっかりと聞く」ことも大切に実践しています。電話で聞く、会いに行って聞く。担当のケアマネジャーや、必要があればご相談者のご親戚にまでお話を聞く。自分の考えだけでなく、同僚や後輩の考え方も聞く。

    この繰り返しがあってこそ、間違いに気づけたり考えを広げられて、今の自分があると思っています。

    かつての上司に言われた「自分のものさしで相手を測ってはいけない」という言葉も、今に通じています。これは、いちライフコーディネーターとしてだけでなく、大宮エリアのエリアマネージャーとしての役割を果たす上でも活きている教えです。

  • ルーティンワークではないからこそ、解決できた時の喜びは大きい。

    ライフコーディネーターとして心がけていることはありますか?

    ご提案の際に、ご相談者から「検討します」という言葉をいただくと、私は気になってしまいます。“検討する”のは、何かしらがネックになっているからだ、と。その場合は、踏み込んでおうかがいします。「お金ですか」「場所ですか」と。

    もちろん、踏み込むにあたって、その際の聞き方が重要であることは明白です。そのため、威圧的と受け取られないように気をつけることはもちろん、ご相談の入口の時点から、礼儀や言葉遣い、雰囲気や清潔感には人一倍注意を払っています。

    資金や財産の話は、聞きづらいということも理解できますが、表面的な希望予算に対するご提案と、ご事情を深くおうかがいした上でのご提案とでは、当然、内容が異なります。

    5年後、10年後も考えたご提案のためには、すべての情報を正しくおうかがいする必要がある。そのために、ご相談者からの信頼を得られるよう、日頃からの身だしなみや意識を大切にしよう。チームの仲間にも、このようなメッセージをマネージャーとして伝えています。

    私自身が、これまでにいただいたご相談の件数は3,000件を超えました。ご相談の内容は千差万別ですが、チームの仲間に対しては、ご入居者のお身体の状態やお人柄などを踏まえたご提案ができるよう、アドバイスを欠かさず、経験値を惜しみなく共有することを心がけています。

  • 「ありがとう」に届くまで

    印象深かった出来事や、ご相談者とのエピソードはありますか?

    数年前のことですが、お母さまの施設選びについてご相談をいただきました。ご相談者である娘さんは、お母さまにどのような暮らしをしてほしいかという明確なイメージをお持ちで、ご自身で各所から情報を得て、施設へ直接問い合わせもしていらっしゃいました。

    ところが、娘さんの思い描く施設での暮らしや、お母さまのために希望する多くのサービス、これらすべてに応えられる受け入れ先はなかなか見つかりません。私が関わった時点では、施設側からも「受け入れは困難」との返答が寄せられている状況でした。

    一方、お母さまのご自宅での暮らしは限界で、すぐにでもご入居先を探さなければなりません。

    私は、受け入れのネックとなっている点やその理由を娘さんにお伝えし、お仕事の合間に、毎日お電話でお話をうかがいました。何度もお会いしに行き、お母さまにとって本当に必要なサービスと、なくてもかまわないものの取捨選択をして、施設側への問い合わせを繰り返しました。

    数か月間、ご相談に応じる中で、当初は「紹介業者」としての関わり方だったところから、「ライフコーディネーター」としての信頼をいただけるようになりました。無事にお母さまのご入居先が見つかった際には、「正しい施設選びをサポートしていただけました。ありがとうございます」と、何度も感謝の言葉をいただいたことが、今でも強く印象に残っています。

    この話に限らず、やはり「ここに決めます」と決断していただけた瞬間は、ライフコーディネーター冥利に尽きますね。

    とはいえ、ご入居がすべてではありません。ご相談者が次の一歩を決めて進まれたことが、ご不安がひとつ解消されたことの表れであり、その都度いただける、「ありがとう」の言葉とセットになっているものだと思っています。

    ですから、「ありがとう」や「助かった」の言葉がないときは、まだ何かご不安があるということ。そういった意味で私は、ご相談において「ありがとう」や「助かった」を日々、探し求めているのかもしれません。

  • 自身と会社の将来について、どのようなビジョンを描いていますか?

    私自身、在宅介護サービスの仕事をしていたこともあって、老人ホーム紹介だけではなく、在宅での暮らしを継続するためのサポートやサービスも含めてご提案できる自社の体制を、強く誇りに思っています。

    これからも、施設選びのご相談はもちろん、その手前からご相談いただき、早い段階からその方とご家族の人生を末長くコーディネートしていきたいですね。

    また、マネージャーとしては、会社のビジョンである「介護の悩みのない社会」の実現を目指し、仲間と協力し合いながら達成感を共有したいと考えています。

    あいらいふには、自ら挑戦したいと思ったときに手を挙げてトライできる文化が根付いています。明確な「軸」が存在する一方で、取り組み方については任せてもらえる環境です。

    私もチームの中で「軸」をしっかりと示しつつ、常に仲間をサポートし支えられるように、これからも心がけていきたいと思っています。


    取材・文・撮影:あいらいふ編集部