INTERVIEW
個性豊かな物語を読み進めるかのように。
ご相談者の人生にふれ、感動を分かち合う。
ライフコーディネーター 飯岡 直也
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#ゼロを50%にする仕事
- あいらいふのライフコーディネーターになるまでの経緯を聞かせてください。
子どもの頃から病弱だった私は、将来、医療や介護の仕事に就きたいと考えていました。お世話になった方々に、そして親に、いつか恩返しがしたい。
そんな思いから、高校3年生のときにヘルパー2級(現在の介護職員初任者研修)を受講し、卒業後、すぐに介護業界で働き始めました。
地元である茨城県の特別養護老人ホームなど、複数の施設に勤めましたが、転機となったのは、サービス付き高齢者向け住宅で働いたときです。そこは小規模な施設だったため、受け入れに限界がありました。
また、お身体の状況が変化して、やむなく退去せざるを得ない方も多かった。ネットで調べた転居先の候補の資料をお渡ししながら、ご利用者やご家族が抱いているであろうご不安に、課題を感じていました。
そんな折、老人ホームの紹介業という職種を知ったのです。そこから、施設へのご入居をめぐって困っている方の役に立ちたいと思うようになり、やがてあいらいふへの転職を決めました。 -
- 仕事をする上で心がけている点や、自分ならではの“強み”は何ですか?
介護の現場で働いて10年、これまでに培った実践的な知識と専門性が、自分の強みだと実感しています。お身体の状態やご家族のご状況、経済的なご事情によってさまざまに異なるご相談に、都度全力で取り組んできました。
また、支援に際してのパートナーである、ケアマネジャーやソーシャルワーカーと育んだ揺るぎない信頼関係も、私の大事な財産です。
一方で、現場経験が長いからこその悩みを抱えた時期もありました。なまじ施設の内情がわかる分、あれもこれも、100%最善のご提案をしなければいけないとの思いばかりが先行して、ご相談者をお待たせしてしまっていたのです。
自問自答を繰り返す中で、100%の正解を求めて立ち止まるよりも、踏み出して「ゼロを50%に近づける」努力の大切さに気づきました。目の前のご相談者とご家族のお気持ちに寄り添い、少しでもご希望に沿えるよう精一杯サポートすることが、より良いケアのための第一歩なのだ、と。
気持ちを切り替えてからは、ご相談者お一人おひとりに合わせた、自分が最適だと考えるプランを、自信をもってご提案できるようになりました。結果として、病院や居宅介護支援事業所からもご相談をいただく機会が大幅に増え、担当するエリアの施設とも、より良好な関係を築けています。
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終末期ケアを通して知った
人から必要とされる仕事の重み- 印象深かった出来事や、ご相談者とのエピソードはありますか?
先日、難病のALS(筋萎縮性側索硬化症)と診断されたご相談者の終末期ケアに携わりました。
和菓子のお店を営まれていた方で、ご家族や医療スタッフとの連携のもと、ご本人のご意思を尊重したサポートを目指しました。「最期まで自分で食べたい」というご希望の通り、施設側の協力を得て嚥下(えんげ)訓練を行い、ご自身のお店の商品を細かくしたものを、食べていただけるまでになったのです。
ご本人とは、当初、2時間の予定で面談をしたのですが、しゃべるのもやっとといったご様子のご相談者が、「最期まで自分で食べたい」「最期は住み慣れた地域で迎えたい」と、ご自分の言葉で必死にご希望を伝えようとされていました。
病院の面会時間が過ぎたところで、「廊下を貸してください」とお願いし、廊下の角まで車イスでお越しいただいて、 最後までお話をうかがったことを覚えています。
その方が亡くなられたと聞いたときはショックでしたが、ご家族に遺された手紙には、必ず、私への感謝を伝えてほしいと書かれていたそうです。自分が人から必要とされていることを心から実感し、ライフコーディネーターの仕事に対する使命感を、よりいっそう深めてくれた体験でした。
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- 昨年7月に、エリアマネージャーに昇進。今後のビジョンは?
エリアマネージャーとしてチームをまとめる立場になったことは、私自身の弱点を克服する転機にもなっています。
より良いサービスを提供するためには、チームの思いを一つにするとともに、メンバーがそれぞれの強みを活かし、ともに成長していける環境づくりが大切です。私自身もマネージャーの名に恥じないよう、これまでの経験と実践のすべてを、現場に還元していきます。
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“自分らしく生きる”
大切な言葉をくれた恩師との再会- 最後に、飯岡さんにとってライフコーディネーターとは?
ライフコーディネーターは、まるで個性豊かな物語を読み進めるように、ご相談者の多様な人生にふれ、感動をわかち合える仕事です。
人生の岐路に立つ方々のストーリーと真摯に向き合い、その方らしい生き方を共に創り上げていく。それは私にとっても、自分が自分らしくあるための、かけがえのない体験です。
「自分らしく生きる」は、私にとって宝物のような言葉なんです。中学生の頃、身体が弱く、内気でいじめにあっていた私を、当時の恩師が「あなたはあなたしかいない。自分らしく生きることは大切なこと」なのだと叱り、励ましてくれました。
誰かと比べることなく、常に自分の心に正直であることは、いまも私がこの仕事をする上で、もっとも大切にしている教えのひとつです。
実は先日、偶然、その恩師と再会したんです。現在の仕事や当時の感謝を伝えると、驚きながらも、「あなたは立派になった。たくさんの人を幸せにしてあげてね」と、さらなる激励の言葉をいただきました。
ライフコーディネーターという仕事を選んで、本当に良かったと思っています。これからも、ご相談者により豊かに暮らしていただけるよう、全力でサポートすることはもちろん、いずれはシニア向けのサポートにとどまらず、広く福祉の分野に貢献する、“すべての人のためのライフコーディネーター”を目指すつもりです。
取材・撮影/あいらいふ編集部
文/山田ふみ