あいらいふレポート

【知っトク「注目のトピック」vol.14】認知症の当事者が製品・サービスの開発に参画「オレンジイノベーション・プロジェクト」とは?

認知症になってからも、自分らしく暮らし続けられる「共生社会」の実現を目指して、経済産業省が2023年から推進している「オレンジイノベーション・プロジェクト」。今回は、認知症の方が企業の製品・サービスの開発に参画する、同取り組みの概要をご紹介します。

認知症患者と企業が“共創”
さまざまな課題解決を目指す

日本国内において認知症、およびMCI(軽度認知障害)と診断される人の数は、2040年に約1200万人に達すると推計されています。

今後、認知症と付き合いながら日常生活を送る方が急増すると見込まれる中、認知症による身近なお困りごとに対応し、サポートする製品・サービスの開発が急務となっています。

そんな、認知症の当事者が抱える、日常の中のさまざまな課題の解決を目的として、経産省が推進している取り組みが、「オレンジイノベーション・プロジェクト」です。

この活動は、認知症になってからも、患者としての視点を活かして、使いやすい製品・サービスの開発プロセスに参画してもらい、企業とともに新しい価値を生み出す「当事者参加型開発」として注目されています。

では、実際にどのような製品が生まれているのでしょうか。

コンロからスキンケアまで!暮らしを変える新製品

一例として、ガス器具メーカーの㈱リンナイが開発した、高齢者や認知症の方に配慮したガスコンロが挙げられます。

点火・消化の基本操作で迷わないよう、点火スイッチのカラーに、認知症の方でも区別しやすい配色を採用。ほかにも、鍋を置きやすい大型の五徳や、聞き取りやすい音声案内を搭載しました。認知症患者の声から生まれた、当事者参画型開発の先行事例です。

また、大手自動車メーカーが開発を進めている、道案内機能を搭載した腕時計型「歩行ナビシステム」は、画面のデザインや色使いに、軽度の認知症を患う方のアイデアを活かしました。免許を返納したシニア世代のサポートにも役立てようと、現在も改良が続けられています。

ほかにも、認知機能の低下で音が聞き取りにくい方のための「集音器」などを開発。また、美容の分野からは、化粧水を液ダレしにくい泡状に加工するなど、工夫を施したスキンケア製品が登場し、すでに介護美容セラピーの現場で使われています。

誰もが自分らしく輝く社会へ
認知症と共生する未来を育む

認知症の人々が、自分らしく暮らし続けられる社会の実現に向けて、企業、官公庁、自治体、研究機関、介護・医療機関などが官民一体となって広まりつつある「オレンジイノベーション・プロジェクト」。

誰もが認知症になりうる時代を生きる私たちが、当事者の思いや考えに触れ、ともに思考しながら“共創社会”を実現するための第一歩として、介護の現場にイノベーションをもたらす可能性を秘めています。

経産省では、2025年3月に、初の試みとなる「オレンジイノベーション・アワード」の表彰式を開催予定。今後も、さらに参加企業・団体を増やし、実践例を積み上げていくとしています。

「オレンジイノベーション・プロジェクト」
https://www.dementia-pr.com/

同プロジェクトは、企業にとっては、超高齢化社会における新たなビジネスチャンス。認知症の当事者にとっては、欲しいものが形となる喜びや、企業との共創を通じて自己肯定感を得る機会になっています。

豊かなシニアライフのための情報誌『あいらいふ』編集部
【誌名】『あいらいふ』vol.175(2025年1月30日発行号)
【概要】初めて老人ホームを探すご家族さまの施設選びのポイントをさまざまな切り口でわかりやすく解説。著名人に介護経験を語っていただくインタビュー記事のほか、人生やシニアライフを豊かにするためのさまざまな情報や話題を取り上げて掲載。
【発行部数】4万部
【配布場所】市区役所の高齢者介護担当窓口・社会福祉協議会・地域包括支援センター・居宅介護支援事業所・訪問看護ステーション・病院・薬局など1万か所

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