【ソーシャルワークの現場から-支援連携の輪-】[大阪]巽病院介護老人保健施設/支援相談員・外山 寛貴 氏

支援相談員・外山 寛貴 氏
social worker / Toyama Tomoki
いくつもの出会い 一人ひとりの選択
およそ数か月の入所期間の中で、入所から在宅復帰までを見据え、ご利用者とご家族に伴走する。それが、介護老人保健施設(以下、老健)の支援相談員の役割です。
医療機関とは異なる立ち位置から、地域住民の方の生活再建を支える外山さんに、対人援助にかける思いをうかがいました。(聞き手:あいらいふ編集部、あいらいふライフコーディネーター・高屋敷 祐喜)
在宅復帰を支える 老健の支援
■あいらいふ編集部(以下、あいらいふ):
外山さんは現在、大阪府池田市にある老健で、支援相談員としてご活躍されています。まず、お仕事の内容について教えてください。
■支援相談員・外山さん(以下、外山):
老健は、病院での治療を終えた方が、すぐにご自宅での生活に戻ることが難しい場合に、リハビリや日常生活支援を受けながら、在宅復帰を目指す施設です。
ご利用者の身体状況や目標に応じて、日常生活動作(ADL)改善のためのリハビリを行い、在宅復帰に向けた支援を進めます。
ご入所からご退所までの数か月間、ご利用者やご家族に寄り添いながら、その方にあった暮らし方を一緒に考え、退所後の生活再建につなげていくことが支援相談員の役割です。
■あいらいふ:
現在、勤務されている「巽病院介護老人保健施設」の特徴を教えてください。
■外山:
当施設は120床を有する、地域では比較的大規模な老健です。グループ内の病院だけでなく、大阪の池田市・豊中市・箕面市などの周辺地域や、兵庫県の伊丹市・川西市など、近隣地域の医療機関からもご利用者をご紹介いただいています。
また、在宅復帰だけでなく、特別養護老人ホームの入所待機中の方や、継続的な療養・支援を必要とされる方の受け入れにも、積極的に取り組んでいます。
巽病院に隣接しているため、医療との連携が取りやすい点は、当施設の大きな特徴です。急な体調変化への対応や受診調整など、ご家族からも「ここなら安心」というお声をいただいています。
リハビリについても、入所後3か月間は週6回、1回20分のリハビリを実施しています。施設医の指導のもと、充実したリハビリをご提供できる体制も、ご利用者のADLの向上を後押しています。
■あいらいふ:
ご入所者の受け入れに際して、貴施設の強みを感じることはありますか?
■外山:
やはり、病院併設施設であり、ご利用者の急変時にすぐに対応できることですね。入院となった場合でも、治療が終了すれば、再度、老健にお戻りいただけます。そういった連携も強みと考えています。
ご利用者の医療情報なども、迅速に共有できる環境があります。入退所調整についても、病院の医療ソーシャルワーカー(以下、MSW)と顔を合わせてやり取りするので、書面だけにとどまらない、ご本人の細やかな情報を共有することができています。
ご利用者への支援については、関係事業所とのチームによる支援を目指しています。そのため、実際のサービス調整を担う担当者と、「もうすぐご自宅に戻られますよ」「今このようなリハビリを頑張っています」といった情報を共有し、退所後の生活へ、タイムラグなくスムーズにつなげることを徹底しています。
■あいらいふライフコーディネーター・高屋敷(以下、ILC高屋敷):
巽病院さんは、地域に根差した医療・介護を大切にされていますね。実際におうかがいするたびに、地域の方々から寄せられる信頼の厚さを感じます。
人とかかわる喜びを キャリアの原点に
■あいらいふ:
外山さんは、もともとホテル業界で働かれていたそうですね。
■外山:
そうですね。子どもの頃から、人を喜ばせることが好きな性格で。学生時代はサッカー部に所属していましたが、道具の準備なども率先して行うタイプでした。
人と直接関わり、おもてなしを通じて喜んでいただける仕事がしたいと思い、大学卒業後はホテル業界に就職しました。
■あいらいふ:
ホテル勤務で培った経験は、現在のお仕事にも生きていますか?
■外山:
相手の立場に立って考える接客・接遇の姿勢には、今も助けられています。
もう一つ、学んだことは、第一印象の大切さです。
ご不安を抱えた状態で施設に来られるご利用者やご家族に、「この人なら、話しても大丈夫そうだ」と思っていただけるかどうか。初めて会うときの振る舞いで、その後のご利用者やご家族との関係性が変わると実感しています。
■あいらいふ:
ホテル勤務から、福祉の道へ進もうと思われたきっかけは。
■外山:
ホテルには、3年ほど勤めました。仕事にもやりがいはありましたが、少しずつ「もっと相手の人生に近いところで、人と関わる仕事がしたい」と思うようになりました。
同じ頃、家族を通じて対人援助職の存在を知りました。ご利用者お一人おひとりの状況に合わせて関わり方が変わること、また、さまざまな可能性の中から、その方にとって最適な支援の形を考えていく仕事の奥深さに魅力を感じました。
そこから1年間、専門学校に通って社会福祉士の資格を取得しました。
その後は、MSWとして働き、現在は巽病院介護老人保健施設で支援相談員として働いています。

同じ目線に立ち 選択肢を共有する
■あいらいふ:
支援相談員として、ご利用者やご家族と接する際に、心がけていることはありますか。
■外山:
まずは、丁寧にお話をうかがうこと。やはりいろいろなご希望というのは、ご利用者と向かい合い、お話を重ねる中で見えて来るものだと思っていますので。
ご利用者やご家族のご希望は、本当にさまざまです。ご本人には「家に帰りたい」「これまで通りの暮らしを続けたい」という思いがある一方で、支えるご家族側には介護への不安や、生活上の課題があります。
特に、ご自宅へ戻られる場合は、退所後の生活を具体的にイメージできるよう、多職種と連携しながら支援を進めます。ご家族に安心していただき、「これなら生活できそうだ」と思っていただけるような関わりを大切にしています。
中には、難しいご希望もありますが、入り口から否定することはせず、まず、ご利用者のお気持ちを受け止めることを大切にしています。そのうえで、実現可能な部分を一緒に探していく。ご本人やご家族と、ともに考える姿勢が大切だと思っています。
ご相談を受ける中で、同じケースは一つとしてありません。その方が見ている世界を想像し、選択肢を共有する。そこが支援の入口であり、この仕事の面白さでもあると感じます。
■ILC高屋敷:
ご利用者やご家族との信頼関係は、どのように築いていくのでしょうか?
■外山:
数か月とは言え、時間はあっという間に過ぎてしまいます。何もしなければ、特にご家族との関わりが薄くなってしまう難しさがありますね。
そのため、日頃から積極的にお声がけをして、相談員という存在を意識していただくことを大切にしています。まず「いつでも相談できる存在」と感じていただくことが、信頼関係の土台になると思います。
■あいらいふ:
老健ならではの、支援の特徴や難しさはありますか?
■外山:
ご利用者と長く関わる分、お一人おひとりにとって何が最善なのかを常に考え続ける必要がある。そういった意味でのやりがいや、大変さがあると思います。
在宅復帰や他施設への入居、入院など退所後の選択肢も多いので、多職種との連携も欠かせません。介護職員、看護師、リハビリ職、医師をはじめ、ケアマネジャーや病院のMSW、グループ内の訪問看護や通所サービスなどと連携しながら支援を進めています。
老健の支援には、明確な「正解」はありません。ご利用者のご希望や身体状況だけではなく、ご家族のご事情、地域資源、公的な支援制度の活用など、さまざまな要素が重なります。
例えば、介護保険制度の第2号被保険者(※)にあたる方で、身寄りのない方の支援に携わったことがあります。比較的珍しい事例だったため、必要な手続きや書類についても知識がなく、その都度確認しながら進めていく必要がありました。
(※)40歳以上65歳未満の医療保険加入者。16種類の「特定疾病」により介護や支援が必要になった場合にのみ介護保険サービスを利用できる。
市役所や生活保護のケースワーカーとも連携しながら、一つひとつ整理していったのですが、支援を進める中で、自分自身も多くのことを学ばせていただいたケースでした。
制度の運用や、個別のケースへの対応など、現場での経験がそのまま学びとなる。これまでに携わった方から、一つひとつ教えていただいているような感覚ですね。
■ILC高屋敷:
ご利用者の中には、老人ホームへのご入居を選ばれる方もいらっしゃいますが、あいらいふのような老人ホーム紹介業については、どのような印象をお持ちですか?
■外山:
難しいご事情を抱えたご利用者にも、真摯に施設をご紹介いただけたり、ご家族との調整にも力を貸していただけたりと、支援を進める上で心強い存在ですね。
特に、地元だけでなく広いエリアで施設を探す場合は、あいらいふさんをはじめとする紹介業者さんの情報量に助けられています。
一人ひとりの最善を積み重ねて
■あいらいふ:
最後に、外山さんの今後の目標をお聞かせください。
■外山:
些細なことでも、頼ってもらえるのが一番うれしいですね。「まずは相談してみよう」と思っていただける相談員になりたいです。
老健には、ご利用者の在宅生活を支えるという役割があります。世の中では「3か月だけ利用する場所」「入所できるのは一度きり」というイメージを持たれることもありますが、実際はそうではありません。
例えば、ご自宅へ戻られたあとも、ショートステイを利用しながら、体調がすぐれなければ老健に再入所していただくなど、その方に合った生活を続けられる“循環型”の支援ができる仕組みがあります。
私自身、こうした柔軟さは老健の魅力だと感じています。目の前の相手を喜ばせたいという自分の価値観に合っているというか、どのようにご利用者とご家族のお力になれるか、工夫のしがいがあるところです。
再入所という選択肢もあるからこそ、「施設も検討したけど、頑張ってもうちょっとだけ、家に戻られへんかな?」といったご希望も、もっと自然にご相談いただければと思っています。
ご利用者やご家族に、「相談してよかった」と思っていただけるよう、お一人おひとりにとっての最善を積み重ねていきたいですね。

===取材協力===
医療法人マックシール 巽病院介護老人保健施設
大阪府池田市天神1-5-22
取材・文・撮影:あいらいふ編集部
豊かなシニアライフのための情報誌『あいらいふ』編集部
【誌名】『あいらいふ』vol.183(2026年5月28日発行号)
【概要】初めて老人ホームを探すご家族の、施設選びのポイントをさまざまな切り口でわかりやすく解説。著名人に介護経験を語っていただくインタビュー記事のほか、人生やシニアライフを豊かにするためのさまざまな情報や話題を取り上げて掲載。
【発行部数】4万部
【配布場所】市区役所の高齢者介護担当窓口・社会福祉協議会・地域包括支援センター・居宅介護支援事業所・訪問看護ステーション・病院・薬局など1万か所