対談・インタビュー

【経営トップ対談 vol.03】 シニアの住生活を支える「まごころアパート」 民間企業がつなぐ“地域の絆(きずな)”

シニア世代のお困りごとをサポートする生活支援サービス「まごころサポート」。同ビジネスを展開するMIKAWAYA21株式会社は、4月から新たに、シニア世代のための見守りサービス付き集合住宅を運営する『まごころアパート』事業を立ち上げました。

同事業の狙いはどこにあるのか。同社の青木慶哉社長とあいらいふ代表・藤田が、これからのシニアビジネスと街づくりについて語り合いました。

シニア世代の居住環境を整備
安心の住まいを低コストで提供

藤田 全国200以上の加盟店を拠点に、1200名以上のコンシェルジュ(地域スタッフ)が、シニア世代の日常生活のお困りごとをワンストップで解決する生活支援サービス「まごころサポート」。老人ホーム紹介業をメイン事業とするあいらいふも、地域貢献を目的に、同サービスのフランチャイズに加盟しています。

その「まごころサポート」が、新たにシニア世代の豊かな居住環境の整備を目指して「まごころアパート」事業をスタートさせました。同事業のコンセプトについて、青木社長にお話をうかがいたいと、対談をお願いしました。

青木 「まごころアパート」は、地域に数多く所在する一般的な賃貸アパートを、街中にある“小さなシニアの支援拠点”として整備することで、シニア世代が地元を離れず、住み慣れた環境を大きく変えずに、安心して暮らし続けられる街づくりを目指す事業です。

基本的には、人の動きを検知するWi-Fiセンシング技術を利用したご入居者の見守りサービスと、同じアパート内に部屋を借りて住んでいただく「まごころサポート」のコンシェルジュによる生活支援、ご入居者同士のふれあいを促すコミュニティデザイン建築。この3要素を組み合わせてご提供します。

技術によるつながり、コンシェルジュとのつながり、ご入居者同士のつながりの3本柱で、ご高齢の方が抱えがちな健康や身の回りの不安を解消するとともに、地域との結びつきも感じながら暮らせる居住環境をご用意しようという構想です。

事業の立ち上げに当たっては、優れたWi-Fiセンシング技術をお持ちの㈱おきでんC plus C、コミュニティデザインを得意とされる㈱オンデザインパートナーズの各社と連携しました。

Wi-Fiセンシングには、設置コストが少なくて済むメリットがあります。デバイスによっては、初期費用が1~2万円、月額が1000~2000円で運用できる。手頃な価格で、ご入居者が見守りを受けられるのは魅力です。適切なタイミングで、誰かが声をかけてくれる安心感を大切にしていきたいと考えています。

生活支援員がアパート内に同居
見守りの実効性高める

藤田 「まごころアパート」の構想は、どのようなきっかけで生まれたのですか?

青木 2年ほど前から、沖縄電力さんの子会社が、Wi-Fiセンシングを使った身守りサービスの実証実験を進めていました。弊社もお手伝いをしていたのですが、社会への実装を目指す段階になって、では実際に誰が見守るのかという問題に行き当たりました。

藤田 行政の職員、民生委員、自治会員。地域のシニアの見守りをお願いするにも、どこも人手が足りていない。ご利用者が独り暮らしの場合は、Wi-Fiセンシングのデータ履歴からご本人に何かあったことがわかったとしても、離れたところに住むご家族が電話をかけるくらいしかできないですね。

青木 その通りです。こんな時にいち早く駆けつけてあげられるのは一体誰だろうと考えた時に、私たちには全国の「まごころサポート」のコンシェルジュさんがいるじゃないか!と思い至りました。

「まごころサポート」は、“すべてのシニアに良き隣人を”をコンセプトにしています。そこで今回は、コンシェルジュさんが同じ場所に住むことを大事にしよう、本当の意味でのご近所さんになって、見守りを兼ねて生活支援を行っていただこうというアイデアが浮かびました。

藤田 代わりにコンシェルジュさんは、「まごころアパート」内に低価格で住むことができる。居住しながら、住まわれているシニア世代の見守りを担当される訳ですね。

「まごころアパート」を
コミュニティの土台に

青木 もう一点、弊社がシニア向けサービスを展開する上で重視しているのは、ご利用者同士のコミュニティを築いていただくことです。そこで、コミュニティデザインのオンデザインさんにも加わっていただきました。

アパート内のコンシェルジュさんのお部屋は、リビングおよびダイニングルームが共用のコミュニティ空間とつながっており、寝室や水回りなどの生活空間と分かれた設計となっています。ここは天気の悪い日でも、室内で少人数のコミュニティ活動が行えるスペースとなります。

また、アパート内には、各部屋を横切る通路と中庭を兼ねた「ミチニワ」を設けて、デッキや縁側、菜園や日陰棚などを設置し、ご入居者間のコミュニケーションの場として活用します。

私たちは、いわゆる“江戸時代の長屋文化”のようなものを、もう一度再生したいと考えています。アパート内でご入居者同士が仲良くなって、井戸端会議をしたり、週末は皆で食卓を囲もうと呼びかけて、部屋から出てきてもらう。そんな光景を日常のものにしたい。

藤田 コンシェルジュさんが、アパート内の交流をけん引する。加えて、地域のシニアの支援拠点として、ご近所の見守りも事業として展開されると。

青木 アパート内の5部屋、10部屋だけではもったいない。本事業のモデルとなっているアパートが横浜にあるのですが、ご近所には大きなお家で独り暮らしをしている方もいらっしゃるし、近隣にも複数のアパートがあります。

昨今、各地で自治会が機能停止に陥ったり、行事やお祭りのような地元のイベントを担うコミュニティが、どんどん縮小していく傾向にありますが、「まごころアパート」をもう一度、街づくりの最初の拠点にすることを目指したいですね。

国交省モデル事業に選定
社会課題解決への貢献も

藤田 「まごころアパート」は、国土交通省が昨年公募した「人生100年時代を支える住まい環境整備モデル事業」に採択されました。ライフステージに応じて変化するシニア世代の居住ニーズに応え、誰もが安心して暮らせる居住環境の整備を促進する上で、重要な役割を果たすとの評価です。事業の先導性が国から認められたことに関して、ご感想はいかがでしょうか。

青木 実はこの事業の採択は大変厳しくて、一度は落ちているんです。ただ、次こそは通したいから、こういった要件を満たしてくださいと国土交通省の関係者からアドバイスまでいただきました。

なぜ、そこまで協力的になっていただけたかというと、昨今の大量に発生している空き家・空きアパートの問題。それから、賃貸物件の大家さんがご高齢の方のご入居を好まないため、増え続けるシニア世代の住む場所がなくなるという問題。加えて、住み替えが進まないために、シニア世代が老朽化した建物に住み続けざるを得ないという問題。これらの深刻な社会問題の解決の一助になると評価されたようです。

さらに、シニア世代の賃貸物件へのスムーズな住み替えが可能になれば、アパートの新築や改修需要はもちろん、離れることになったご自宅など不動産の売買も活発になる。建設・不動産市場を刺激することで、大きな経済対策になるとの見通しも出ています。

シニアの負担を和らげる
住まいのダウンサイジング

藤田 まさに一石二鳥、三鳥の取り組みですね。身体の状態に合わせて洋服や食べ物を変えるように、生活スタイルに合わせたサイズの住宅への住み替えを検討することは、不安や負担の少ない老後を送る上で、欠かせない要素だと思います。

私自身も、若いころは身軽な賃貸派でしたが、歳をとるに連れて住み替えられなくなると聞かされて怖くなり、あわてて家を購入した経験があります。シニア世代が少ないリスクで住まいをダウンサイジングできる「まごころアパート」の存在は、いずれ高齢者となる現役世代の安心にもつながりますね。

青木 単身や高齢のご夫婦の二人暮らしで、ご自宅が維持できなくなって住み替えたいが、老人ホームや高齢者住宅は手が出ない。特養も空いていない。高齢社会でシニア人口が急増すれば、そういった方の受け皿がますます必要になります。

「まごころアパート」を導入していただければ、アパートのオーナーさんにとっても、さまざまなリスクがあって貸しづらい相手だったシニア世代が、一夜にしてマーケットに変わる訳です。

藤田 ご利用者の目線で言えば、老人ホームに入居する場合でも、利用料の支払いで資金が足りなくなる状況は防ぎたい。仮に入居資金が15年分とした場合、余命を考慮して75歳では入居せず、80歳まで一般的な生活支援を受けながら、ご自身の費用でまかなうことも考えられます。

この段階で「まごころアパート」を利用できれば、資金の負担状況を見ながら施設へのご入居の時期を調整できますし、施設側とスケジュールを共有することで、施設選びの選択肢も広がりますね。

青木 実は「まごころアパート」を思いついた時に、真っ先に思い浮かんだのが、あいらいふさんにご相談に来られた方の7割がご入居に至らないという藤田社長のお話でした。施設への入居を検討したものの、実現しなかった方のための事業になれば、と。

一方で、「まごころアパート」には、ご入居後に身体状況が変化して要支援・要介護状態となったご利用者のサポートをどうするかという課題が残っています。

少し不安はあるけれど、まだ大丈夫という間は「まごころアパート」で過ごしていただいて、いよいよとなったら、そこからもう一度、あいらいふさんに施設をご紹介いただく。両事業が連携することで、ご自宅から施設まで、ご利用者の住まいに関する切れ目のないサポートをご提供できると思います。

シニアのビッグデータを活用
サービス開発の秘訣

藤田 青木社長は、さまざまなシニア向けサービスを開発されていますが、どこから着想を得ていらっしゃるのでしょうか?

青木 私たちはCRM(顧客関係管理:企業が利用者との良好な関係を築くためのツールやシステム)を重視する会社です。「まごころサポート」のコンシェルジュさんがご利用者から聞き取ったお困りごとやご要望を集積した「シニアの本音ビッグデータ」が、私たちの最大の強みです。

全国から、定期的に届けられる数百、数千の声を拾い上げていくと、さまざまなニーズの中から大きな塊が生まれてくる。一定のボリュームを超えたものを、サービスとして形にしていく構図です。

藤田 今後、「まごころアパート」の見守りサービスがスタートすると、そのビッグデータに加えて、Wi-Fiセンシングを経由した行動データも集まってくる。睡眠状況や運動量、歩く速度などですね。

青木 二つのデータを融合させれば、この方はフレイルの初期段階にあるのではないか、といった情報を事前にキャッチして、介護予防に役立てることもできますし、仮に自治体の要介護認定に採用されれば、介護サービスの必要度のより正確な判断が可能になります。

将来、「まごころアパート」事業が全国に広がった場合は、両データの影響力も非常に大きくなる。そのぶん、データの取り扱いには細心の注意を払わねばなりません。ですので、これから「まごころサポート」事業を担当していただく企業は、相当厳選していくことになると思います。

シニアの力を借りた
“長生きする街”づくり

藤田 青木社長は“シニア世代の社会参加”と“持続可能な街づくり”を、ご自身の2大目標として掲げていらっしゃいます。持続可能な街づくりとはどのようなものでしょうか。

青木 私たちはシニア世代を応援するサービスをいくつも開発していますが、“人の長生き”だけでなく、“街の長生き”を実現したい。そのためには人・物・お金が街の中を循環する新陳代謝が必要です。

シニアを支える「まごころサポート」であれば、若い人に仕事が生まれ、お金が循環し、街に活気が戻る。また、近年は地元のおばあちゃんたちが用意した手作り弁当を、地域の企業や団体に宅配する「ジーバーFOOD」など、元気なシニアにプレーヤーとして、街の担い手になっていただくサービスも次々と誕生しています。

私は、「まごころサポート」をはじめとする弊社のシニア向けビジネスが、最終的に地域の活性化につながるというビジョンを持っていましたが、今回、各サービスの点と点をつないだ姿を、住宅という形で“見える”化することができた。「まごころアパート」は、私たちがこれまでに展開してきたサービスの集大成的な位置づけになったと思います。

藤田 「まごころアパート」は、シニアのサポート事業であると同時に、地域のサポート事業でもあるということですね。 シニアが安心して暮らせる、そして街に住む人たちの交流の拠点にもなる場所を、民間企業が運営し、ビジネスとして成り立たせる。ますます高齢化の進む日本社会にとって、希望にあふれる取り組みだと思います。本日はありがとうございました。

東京・荒川区西尾久のMIKAWAYA21本社ビル1階「街仲キッサ・スナック 荒川本店」前にて。

プロフィール

MIKAWAYA21株式会社 代表取締役・青木慶哉さん

MIKAWAYA21株式会社 代表取締役・青木慶哉さん

1976年生まれ、大阪府枚方市出身。23歳で読売新聞販売店の経営を始め、27歳で顧客1万2000件を抱える関西最大の新聞販売会社に成長させる。2012年に会社を売却し、MIKAWAYA21を創業。高齢者の日常生活のお困りごとを解決する「まごころサポート」事業のフランチャイズ展開を開始する。その後もさまざまなシニア向けビジネスを軌道に乗せ、2023年に新事業「まごころアパート」の立ち上げを発表。

株式会社あいらいふ 代表取締役・藤田敦史

株式会社あいらいふ 代表取締役・藤田敦史

1973年生まれ、群馬県みどり市出身。大学卒業後、外資系金融機関で3年間、リテール営業を経験。その後、コンサルティング会社で中小企業の支援、大手営業会社の社長直轄部署でM&Aを担当する。45歳で株式会社ユカリアへ転職し、2020年6月に子会社化したあいらいふの代表取締役に就任。メイン事業の有料老人ホーム紹介業とともに、「まごころサポート」のフランチャイズ加盟店として、ビジネスによる超高齢社会の課題解決を目指す。

介護情報誌『あいらいふ』編集部
【誌名】『あいらいふ 2023年8-9月号』
【概要】 初めて老人ホームを探すご家族さまの施設選びのポイントをさまざまな切り口でわかりやすく解説。著名人に介護経験を語っていただくインタビュー記事他、人生やシニアライフを豊かにするためのさまざまな情報や話題を取り上げて掲載。
【発行部数】4万部
【配布場所】市区役所高齢者介護担当窓口・社会福祉協議会・地域包括支援センター・居宅介護支援事業所・訪問看護ステーション・病院・薬局など1万か所

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