あいらいふレポート

【知っトク「注目のトピック」vol.03】高齢者の健康が国家的課題に。厚生労働省の打ち出した 「健康寿命延伸プラン」とは?

厚生労働省が2019年に策定した「健康寿命延伸プラン」をご存じでしょうか?高齢者が自立して生活できる期間を延ばそうという試みですが、背景には社会保障費の伸びを抑えたいという行政側の思惑も。今回は、同プランの概要をご紹介します。

健康寿命を3年延伸し、
2040年に男女75歳以上に

健康寿命とは「健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間」のこと。2000年にWHO(世界保健機関)が提唱した概念です。

厚生労働省の「令和4年版 厚生労働白書」によると、2019年における日本の平均寿命は、男性81.41歳、女性87.45歳。一方、健康寿命は男性72.68歳、女性75.38歳となっています。他者の支援や介護を受けながら日常生活を送る期間が、男性では8.73年、女性では12.07年に及んでいます。

日本は世界的な長寿国といわれていますが、平均寿命と健康寿命との差は決して小さくなく、他の先進諸国と代わり映えしません。さまざまな施策を通じて徐々に縮小傾向にはあるものの、過去20年にわたって目立った改善は見られず、健康寿命をいかに効果的に延ばすかが大きな課題となっています。

厚生労働省が2019年に策定した「健康寿命延伸プラン」は、この健康寿命に関する目標と、それらを達成するための施策について定めたものです。2040年までに、健康寿命を2016年に比べて男女ともに3年以上延伸し、平均で75歳以上とすることを目指しています。

同プランでは、健康寿命の延伸に向けて、①次世代を含めたすべての人の健やかな生活習慣の形成、②疾病予防・重症化予防、③介護予防・フレイル対策・認知症予防の3分野を中心に、取り組みを進める方針を掲げています。具体的な方策としては、健診率の向上や、高齢者が気軽に体操などを楽しめる「通いの場」の充実などを挙げており、これらの内容は、2019年に閣議決定された「骨太の方針」に反映されました。

“健康”推進には
社会保障費抑制の視点も

“健康寿命の延伸” が国を挙げての課題となっている背景には、増大する社会保障費の伸びを抑制し、制度を維持可能なものにしようという行政側の思惑もあります。前述の骨太の方針には、同プランの目的として

・個人の健康を改善することで、生活の質を向上し、将来の不安を解消する。
・健康に働く方を増やすことで、社会保障の「担い手」を増やす。
・生活習慣の改善や介護・認知症の予防を通じて、増え続ける医療・介護需要に対する効果が得られる。

といった文言が並んでいます。

現在、国会では2024年の介護保険法改正に向けて、介護サービス利用料の自己負担分が2割となる人の範囲を拡大する歳出削減案が検討されています(現在は原則として1割負担)。

また、2027年の改正では、要介護1~2の高齢者が利用する訪問介護・通所介護を、介護保険の対象から外し、市町村が運営する「総合事業」へ移管する構想も浮かび上がっています。

社会保障でカバーできる範囲が狭まり、高齢者一人ひとりが自衛を求められる世の中にあって、健康で質の高い人生を送るためには、国からの支援とともに、私たち自身も意識改革を行っていくことが大切です。

厚生労働省「e-ヘルスネット 」では、一般の方を対象に、健康に関する情報をわかりやすく提供しています。毎日の生活習慣を見直すためのヒントになる情報を、各分野の専門家がお伝えします。

「健康寿命延伸プラン」
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/hale/h-01-004.html

介護情報誌『あいらいふ』編集部
【誌名】『あいらいふ 2023年4-5月号』
【概要】 初めて老人ホームを探すご家族さまの施設選びのポイントをさまざまな切り口でわかりやすく解説。著名人に介護経験を語っていただくインタビュー記事他、人生やシニアライフを豊かにするためのさまざまな情報や話題を取り上げて掲載。
【発行部数】4万部
【配布場所】市区役所高齢者介護担当窓口・社会福祉協議会・地域包括支援センター・居宅介護支援事業所・訪問看護ステーション・病院・薬局など1万か所

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