あいらいふレポート

【あいらいふレポート】第13回健康寿命をのばそう!アワード 厚生労働省・スポーツ庁が表彰イベント開催


2024年11月29日、東京・千代田区の日経ホールで「第13回健康寿命をのばそう!アワード」の表彰式が開催されました。

同アワードは、主催する厚生労働省とスポーツ庁が、介護予防の推進と、健康増進・生活習慣病予防に資する優れた取り組みを行った企業・団体・自治体を表彰し、他の模範となる取り組みの奨励・普及を図ることで、健やかで心豊かに生活できる社会の実現を目指すイベントです。

本特集では、表彰式当日のもようをお届けします。

健康づくりを目指す国民運動
スマート・ライフ・プロジェクトとは?

今回、ご紹介する「健康寿命をのばそう!アワード」は、厚生労働省が主導する「スマート・ライフ・プロジェクト(以下、SLP)」の一環として開催されるイベントです。同プロジェクトの参加団体の中から、特に優秀な取り組み事例を選出して表彰しています。

では、SLPとは、どのような活動なのでしょうか?

SLPは、「健康寿命をのばそう。」をスローガンに、日本国民が人生の最期まで元気に、健康で楽しく毎日を送ることを目標とした国民運動です。

現在は、公式Webサイトを通じた健康情報の発信や、運動、食生活、禁煙、健診・検診の4分野を中心としたアクションの呼びかけ、健康寿命の延伸に取り組む企業・団体・自治体の表彰といった各種の事業活動を通じて、個人や企業の健康づくりに対する動機づけを図っています。厚生労働省の啓発事業として2011年にスタートし、現在は国内約1万2000の企業・団体が参画しています。

健康寿命とは「健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間」のことで、2000年にWHO(世界保健機関)が提唱した概念です。

「令和6年版 厚生労働白書」によると、2019年における日本の平均寿命は、男性81.41歳、女性87.45歳。一方、健康寿命は男性72.68歳、女性75.38歳となっています。他者の支援や介護を受けながら日常生活を送る期間が、男性では8.73年、女性では12.07年に及んでいます。

日本は世界的な長寿国といわれていますが、平均寿命と健康寿命との差は、決して小さいとは言えません。さまざまな施策を通じて縮小傾向にはあるものの、過去20年にわたって目立った改善は見られず、健康寿命をいかに効果的に延ばすかが、個人の生活の質の低下を防ぎ、社会保障負担の軽減を図る上での大きな課題となっています。

このように、SLPが立ち上げられた背景には、日本社会における高齢化の進展や、疾病構造の変化といった要因が挙げられます。

介護予防・高齢者生活支援分野で
13の企業・団体・自治体を表彰

2012年から開催されている「健康寿命をのばそう!アワード」は、今回で第13回を迎えました。

同アワードの〈介護予防・高齢者生活支援分野〉では、後述する「地域包括ケアシステム」の構築に向けて、地域の実情に応じた優れた取り組みを行い、かつ、それが個人の主体的な取り組みの喚起につながっている企業・団体・自治体を表彰しています。

今回は54件の応募の中から、有識者で構成された評価委員会が、特に優れた取り組みを審査・選出。厚生労働大臣最優秀賞1件、厚生労働大臣優秀賞3件(企業/団体/自治体)、厚生労働省老健局長優良賞9件(同)の表彰を行いました。

最優秀賞に選ばれたNPO法人 JAあづみくらしの助け合いネットワークあんしん(長野県安曇野市)の代表者は、

「地元で安心して暮らしていくために、住民同士が“困ったときはお互いさま”の思いで、一つひとつの活動をコツコツと続けてきた取り組みが評価され、このような栄えある賞の受賞につながった。

これからも地域の皆とともに手を携え、頑張っていくための勇気をいただいたと思っている」とコメントしました。

表彰の終了後、今回の評価委員長を務めた、埼玉県立大学理事長の田中滋教授が登壇。医療経済学、医療経営学の領域でさまざまな業績を残し、地域包括ケアシステム研究の第一人者でもある田中教授は、

「高齢者人口がピークを迎える2040年には、日本国内における85歳以上の人口が1000万人を超え、全人口に占める割合が急上昇していく。

このため、住民がより長く地域で暮らし続けられるように、介護予防の取り組みをいっそう推進することはもちろん、サービスの提供者と利用者が、“支える側と支えられる側”という画一的な関係に陥らぬよう、シニア世代の社会参加をこれまで以上に進める工夫も求められる。世代を超えて、住民がともに支え合う地域づくりを進める工夫が何より重要だ。

今回も、住民が主体的に取り組みに参加しているか、高齢者の役割や生きがいを創出しているか、といった観点を重視して審査を行った。

受賞された取り組みはいずれも、今後、他の市町村が介護予防や生活支援のための基盤整備を進めていく上で、大変に参考となる事例。本アワードを通じて、地域におけるさまざまな活動に光が当たり、住民主体の地域づくりが推し進められ、地域力の向上につながっていくと確信している」と講評を述べ、受賞者を激励しました。

田中滋評価委員長による講評

その後、「厚生労働省では、国民誰もが健やかで心豊かに生活できる活力ある社会を実現するため、また、社会保障制度を持続可能なものとしていくために、健康寿命を延伸する社会の構築に向け取り組んでまいります」とのアナウンスが流れ、会場が拍手に包まれる中、閉会となりました。

SLPでは、活動の趣旨に賛同し、介護予防・高齢者支援の取り組みを推進する企業・団体を募集しています。

メンバー登録の手続きは、公式Webサイト(https://www.smartlife.mhlw.go.jp 上で可能。登録を済ませた企業・団体は、メンバー専用マイページから、SLPのロゴマークやポスターをダウンロードして利用することができます。

地域で取り組む介護予防の礎
地域包括ケアシステムとは?

「地域包括ケアシステム」とは、「高齢者が要介護状態となっても、住み慣れた地域での暮らしを最期まで続けられるように、地域が一体となって、医療・介護・予防・住まい・生活に関する支援体制を包括的に確保する仕組み」のことです。

おおむね30分以内に必要なサービスが提供される日常生活圏域(中学校の校区程度の広さ)を単位として想定し、高齢者のニーズや身体の状態の変化に応じて、介護サービスをはじめ、さまざまなサービスが切れ目なく提供される「地域包括ケア」の実現を目指します。

地域包括ケアシステムの考え方は、2005年に行われた介護保険法の改正により、初めて取り入れられました。現在は、いわゆる団塊の世代の全員が75歳以上の後期高齢者となる2025年をめどとして、全国でシステムの構築が進められています。

この地域包括ケアシステムが有効に機能するためには、介護に携わるさまざまな機関や組織、団体間の連携が欠かせません。

具体的には、高齢者のための総合相談窓口として、すべての市町村に設置されている地域包括支援センターを中心に、ケアマネジャー、医療ソーシャルワーカー、介護事業者、医療機関、社会福祉協議会、民間企業、NPO、ボランティア、民生委員・住民組織、保健所・保健センターなどが挙げられます。

地域包括ケアシステムは、介護の主体を国から自治体や地域ネットワークに移行する取り組みの一環でもあり、地域の自主性や主体性に基づいて、各地域の特性に応じたシステムを作り上げていく必要があるとされています。このため、これらの担い手による地域ネットワークが介護の分野で果たす役割は、今後、ますます重要になると予想されています。

第13回 健康寿命をのばそう!アワード(介護予防・高齢者生活支援分野)/表彰事例一覧

厚生労働大臣 最優秀賞(1件)
NPO法人 JAあづみくらしの助け合いネットワークあんしん
「皆の願いを実現する地域協同の取り組み 人と人との支え合いの循環が、あんしんして暮らせる里をつくる」(長野県安曇野市)

取り組みの敬意・背景

・JAの組合員をはじめとする地域住民が持つ不安を安心に変え、地域のさまざまなニーズに応えるため、1998年に団体を設立し、2013年にNPO法人化。住み慣れた地域で暮らし続けることができる地域づくりを住民自らの手で実践。

取り組みの内容

・参加者が主体的に運営する「あんしん広場(※)」を中心に、配食、農作業、体操、セミナーなど幅広い活動を実施。一部の活動は市からの委託を受け、介護予防・日常生活支援総合事業の一般介護予防事業や訪問型サービスA、通所型サービスA・Cとして実施。

・御用聞き車両「あんしん号」:近隣に商店がない地域で、野菜や調味料、日用品などの移動販売を「あんしん広場」を中心に実施。

・生き活き塾:食・農・環境を中心に毎月1回の学習会を開催。野菜の自給活動や、休耕田に菜の花を植えて菜種油を精製するプロジェクト、あんしん広場・デイサービスでの朗読ボランティア活動、童謡唱歌の会、体操教室などを実施。

※あんしん広場:地域のさまざまな人々が気軽に集まれるよう、おおむね公民館を単位に会員の自主的な仲間づくりをすすめ、「通いの場」として介護教室や住民同士の交流会を開催している。

取り組みの効果

・1998年から活動を継続しており、多くの人々が参画している。過去に支援の担い手として活動した人が支援を受ける側に回るなど、幅広い世代が参画し、支え合いの循環が生まれている。

・あんしん広場などの活動への参加が、高齢者の社会参加や地域交流の機会になっている。

厚生労働大臣 優秀賞(3件)

企業部門
株式会社ホクノー
「地域スーパーを核とした地域包括ケアシステム「ホクノー健康ステーション」モデル」(北海道札幌市)

・地域の高齢化や人口減少、買い物難民の発生、住民の運動不足などの課題があり、地域住民の暮らしや健康などの生活全般をサポートする体制を整えるため、同社の経営するスーパーマーケット内に、通いの場「ホクノー健康ステーション」を設置。

・地域住民が趣味や特技を生かした講師やボランティアスタッフとして参画する体操教室や文化教室を開催し、参加者に役割や生きがいを与えるとともに、低コストでの開催を実現。

・地域住民の買い物の場であるスーパーマーケットに設置され、参加しやすいこともあり、1日あたり100名近くが参加。

・スーパーマーケットとしてもより多くの集客を実現。

団体部門
熊野町シルバーリハビリ体操指導士会
「住民主体の介護予防─誰も見捨てない、自助・互助のまちづくりを目指して─」(広島県熊野町)

・高齢化が進む中で、住民と行政の協働による自助・互助の取り組みが必要と考えた熊野町が、2011年にシルバーリハビリ体操指導士養成講習会を開始。その後、行政や関係機関と連携して地域活動を展開する目的のもと、指導士認定者の間で組織化に向けた協議が行われ、2014年に熊野町シルバーリハビリ体操指導士会を発足。

・町内の5か所でシルバーリハビリ体操教室を開催(2023年度は415回開催)。

・自主活動グループ、サロン、介護施設などに指導士を派遣し、体操教室を開催(2023年度は837回派遣)。

・体操教室では、体操指導と併せて健康・介護予防に関する情報提供を行う。

・体操指導を通して住民のニーズを把握するなど、地域のネットワークづくりに寄与している。

自治体部門
北海道釧路市
「みんなで作る!「おたっしゃサービス」─いつまでも元気で暮らせるまちを目指して─」

・2017年度より介護予防・日常生活支援総合事業の通所型サービスBとして、「おたっしゃサービス」を開始。

・地域住民、NPO法人、介護サービス事業者など、多様な主体がさまざまな会場(老人福祉センター、商業施設、民家など)で取り組みを実施。

・約150名のボランティアによる運動機能向上や認知症予防、参加者同士の交流の活動を実施し、2023年度は延べ6000人以上の市民が参加。

・主な活動内容は、運動機能向上(ストレッチ、風船バレー、ボール体操)、認知症予防(ふまねっと、後出しじゃんけん、クイズ)、参加者同士の交流(生け花、茶道、料理・食事会)。

・国保データベース(KDB)システムの健康スコアリングと同じ手法により、参加者の介護認定度の変化を分析したところ、本取り組みに3年間継続して参加された方のうち、85%の方の要介護認定度が維持・改善。

厚生労働省老健局長優良賞

企業部門
Care Viewer株式会社
「Challenge for HX(ヘルスケアトランスフォーメーション):働きやすい環境から、健康寿命を支える介護へ」(北海道札幌市)

ショッピングリハビリカンパニー株式会社
「デジタルを活用した介護予防&生活支援事業」(三重県いなべ市)

団体部門
社会福祉法人さつき会フィットネス倶楽部コレカラ
「地域を巻き込むあったかすな住民参加型介護予防」(北海道鷹栖町)

平尾校区自治連合会
「『誰でも・気軽に・い~もんだ』─都市部における身近な公園を活用したフレイル予防の取り組み─」(福岡県福岡市)

山浦地区まちづくり推進協議会
「健康長寿のふるさと『いやされ・支え合う』地域やまうら」(大分県杵築市)

自治体部門
札幌市南区介護予防センターまこまない
「介護予防センターと大学の協働による介護予防の地域実践─“すごろく”を楽しみながら介護予防!─」(北海道札幌市)

茨城県常陸太田市
「健康寿命延伸プロジェクト「長生き上手常陸太田」でつくる健康長寿のまちづくり」

千葉県栄町
「『ヨガビト講座』─ヨガをするひとを増やして、健康とまちづくりをすすめるプロジェクト」

奈良県大淀町
「小規模自治体の介護予防、認知症予防の取り組みを支える大淀町地域包括ケア専門職会議」

スマート・ライフ・プロジェクト

https://www.smartlife.mhlw.go.jp

健康寿命をのばそう!アワード

https://www.smartlife.mhlw.go.jp/award

取材・文:あいらいふ編集部
撮影:木下治子

豊かなシニアライフのための情報誌『あいらいふ』編集部
【誌名】『あいらいふ』vol.175(2025年1月30日発行号)
【概要】初めて老人ホームを探すご家族さまの施設選びのポイントをさまざまな切り口でわかりやすく解説。著名人に介護経験を語っていただくインタビュー記事のほか、人生やシニアライフを豊かにするためのさまざまな情報や話題を取り上げて掲載。
【発行部数】4万部
【配布場所】市区役所の高齢者介護担当窓口・社会福祉協議会・地域包括支援センター・居宅介護支援事業所・訪問看護ステーション・病院・薬局など1万か所

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