あいらいふレポート

【特集】東京2025 デフリンピック 〈前編〉

開催期間2025年11月15日~26日(12日間)

デフリンピック公式サイトはこちら

デフアスリートのための国際的な総合スポーツ競技大会「デフリンピック」。デフ(Deaf)とは、英語で「耳がきこえない」という意味。

競技中は補聴器などを外し、全員が公平にきこえない立場で競技をする。日本では初開催となるデフリンピック。
音のない世界で生きるアスリートたちが、どのような戦いを繰り広げるのか、注目競技や見どころをご紹介します。

デフリンピックを通して世界がひとつになる

デフリンピックは、100 年前にフランス・パリで初めて開催され、スポーツを通じた社会変革を目指して始まりました。

提唱者であるユジェーヌ・ルーベンス・アルケ氏は、自身もデフアスリートとして、きこえない人々の社会的地位向上や手話言語の理解促進を目的にこの大会を立ち上げました。

2025 年11 月には東京でデフリンピックが開催されます。そのビジョンは「誰もが個性を活かして活躍できる共生社会の実現」です。きこえない人ときこえる人が共に運営するこの大会は、共生社会の象徴とも言えるでしょう。

また、今回の大会では新たな競技分野への挑戦も進められています。射撃やテコンドーなど、これまで日本選手が参加していなかった競技にも選手が挑戦する予定です。

さらに、ユニバーサルデザインや最新のコミュニケーション技術も取り入れられ、きこえない人々の活躍の場が広がることが期待されています。

デフリンピックをもっと楽しむための見どころ

今大会で特に注目したい魅力的な選手や、他の国際大会にはないデフリンピックならではの新競技、アスリートたちに思いを届ける応援の仕方などを一挙ご紹介します。

主な競技は駒沢オリンピック公園(東京都世田谷区)のほか、東京都内の総合体育館や運動公園などで開催。自転車競技は日本サイクルスポーツセンター(静岡県)、サッカーはJヴィレッジ(福島県)にて開催されます。競技(射撃はオンラインのみ視聴可能)、なんと無料・事前予約なしで観戦が可能です。

また、国立オリンピック記念青少年総合センター(東京都渋谷区)には「デフリンピック スクエア」が設置され、無料で体験できるコンテンツが用意されます。

デフリンピックで使用されるスタートランプを使った短距離走や競歩、VR体験などが予定されています。ぜひ現地まで足を運んで、デフリンピックを体感しましょう!

今回、デフリンピックに出場する日本代表選手は総勢273名。中でも注目の5名の選手に、大会への意気込みを伺いました。


茨隆太郎選手:デフ水泳(いばら りゅうたろう)
デフリンピックには過去4大会に連続出場し、19個のメダルを獲得。前大会では主将も務めた。

「選手として個人の目標は個人種目7、そしてリレー種目1、合わせて8種目にチャレンジする予定です。金メダルは6個を目標にしています。観客席を満席にするのも夢なので、たくさんの人に見ていただけたら嬉しいです」


亀澤理穂選手:デフ卓球(かめざわ りほ)
今大会で5回目の出場。過去4大会で銀3個、銅5個の合計8個メダルを獲得したレジェンド。

「これまでは残念ながら金メダルを取ることができていないので、今回こそ金メダルを獲りたい。そして、皆さんの人生の記憶に残る自分らしいプレーができるように頑張ります」


山田真樹選手:デフ陸上(やまだ まき)
初出場の2017年大会では、金2個、銀1個と計3個のメダルを獲得。パントマイムや演技にも挑戦する表現者でもある。

「デフリンピックは耳がきこえない選手たちだけの大会と思われがちですが、実はきこえない人だけであってもデフリンピックは成り立ちません。観客の皆さんと一緒に、最高の思い出を作っていきたいです」


中田美緒選手:デフバレー(なかた みお)
デフバレーボール女子日本代表として、11年にわたってチームを牽引。2017年大会ではチームを金メダルに導いた。

「デフバレーボールの魅力はなんといっても、音のない世界の中どうやって点数を取っていくか。チームの中でのコミュニケーションであるアイコンタクトの様子なども見てほしい。こういったスポーツの世界もあるんだという、新しい発見をしていただけると思います」


町田瑠音選手:デフ陸上(まちだ るのん)
今大会初出場、東京都立葛飾ろう学校の現役高校生。女子の4×400メートル、ミックスの4×400メートル代表選手として選出。

「日本で初めての開催、そしてさらに100 年記念という大きな大会に参加でき、本当に嬉しくて胸がいっぱいです。4×400リレーは、お互いに助け合うチームワークの競技。仲間と一緒にコミュニケーションをスムーズに取りながら、うまくバトンを渡していく様子を、ぜひ皆さんにお見せしたいと思います」

各競技スケジュールはこちらからどうぞ

オリンピックにはないデフリンピックならではの種目が、北欧生まれのクロスカントリー「オリエンテーリング」です。地図とコンパスを頼りに、各所に設置されたチェックポイントを通過してゴールに着くまでの「速さ」を競います。

今大会では、日比谷公園を中心とする日比谷エリアと、伊豆大島(裏砂漠)の二ヶ所で開催。きこえない選手が競技に参加しやすいよう、情報伝達やコース設定などでの工夫が凝らされているのも必見。音声情報だけでなく、視覚情報(地図、コース表示、サインなど)のユニバーサルデザインが会場周辺に広がります。

スポーツ観戦の醍醐味のひとつが応援です。拍手や声援、応援歌などの「音」で応援を届ける代わりに提案されたのが、手話言語をベースとした「サインエール」という応援手段。東京から世界へ新たな応援スタイルを届けていきます。

日本の手話言語をベースに複数の動きを組み合わせた、「行け!」「大丈夫 勝つ!」「日本 メダルを つかみ取れ!」の3つの基本要素から構成。例えば顔の横で両手を上げて手首をヒラヒラさせて勢いよく前に突き出す「行け!」のエールです。老若男女誰でも簡単に「視覚」で届けられる応援のカタチとして広がっていきそう。応援席で目一杯カラダを動かし、選手たちにパワーを届けましょう!

サインエールの公式サイトでは応援レクチャー動画を公開!

サインエール公式サイト

各国のデフスポーツ協会に登録されている選手で、きこえる一番小さな音が55dB(デシベル)を超えている人が参加対象。dBは音の大きさを表す単位で、聴力を測る際に用います。

きこえる人の聴力レベルは0dB。数字が大きいほどきこえにくいとされ、55dBは車の騒音がきこえない程度の聴力を指します。

大会の競技では、補聴器などのきこえを補うものはすべて外すことになっています。たとえうっかり着けたままであっても、競技会場や練習会場に入った場合は失格となります。

デフリンピック〈後編〉に続く

豊かなシニアライフのための情報誌『あいらいふ』編集部
【誌名】『あいらいふ』vol.179(2025年9月25日発行号)
【概要】初めて老人ホームを探すご家族さまの施設選びのポイントをさまざまな切り口でわかりやすく解説。著名人に介護経験を語っていただくインタビュー記事のほか、人生やシニアライフを豊かにするためのさまざまな情報や話題を取り上げて掲載。
【発行部数】4万部
【配布場所】市区役所の高齢者介護担当窓口・社会福祉協議会・地域包括支援センター・居宅介護支援事業所・訪問看護ステーション・病院・薬局など1万か所

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