【知っトク「注目のトピック」vol.15】認知症にも優しいスーパーが導入した「スローショッピング・パートナー」とは?
2040年、認知症1000万人時代に先駆けて、「スローショッピング」を軸に認知症の方との共生社会の実現に取り組んでいるのが、岩手県を中心に18店鋪のスーパーマーケットを展開する、株式会社マイヤ。
地域住民を巻き込んで、認知症の方に買い物をしていただく機会を増やし、皆が元気に暮らせる街づくりを目指します。その取り組みとは?

商品選びには踏み込まず
寄り添いながら買い物をサポート
厚生労働省の予測では、「軽度認知障害(MCI)」の方を含めると、2040年には認知症と診断される方が1000万人を超えると言われています。
そんな中、株式会社マイヤでは、地域に根ざしたスーパーとして、認知症の方々との共生社会の実現に向けた、さまざまなアプローチを行っています。
「認知症の方の多くが、お買い物や趣味の活動など、さまざまな場面で外出や交流の機会を減らしています。これにより、お買い物で商品を選んだり、購入したりといった自己決定の機会や、人対人のコミュニケーションの機会がどんどん失われてしまいます」と話すのは、販売部統括マネージャーの辻野晃寛さん。
2019年より、マイヤ滝沢店(岩手県滝沢市)でスーパーにおける認知症共生サービスを開始し、現在は4店舗で展開しています。
その取り組みの一つが、「スローショッピング・パートナー」活動です。
「該当する店舗では、指定された曜日に認知症をお持ちのお客さまのための優先レジを設置し、必要なペースでお買い物を楽しんでいただくための配慮をしています。
また、自治体などが主催する『認知症サポーター養成講座』を受講された方に、お買い物への立ち会いやご相談、袋詰めなどのお手伝いをお願いしています。
とは言え、商品を選ぶのはあくまでもお客さまです」と辻野さん。認知症の方が、ご自身で買い物をする機会を奪わないようにするための配慮だそうです。
「買い物に出かけることで、運動機能や認知機能に良い影響があると言われています。ご高齢の方にとっては、お買い物そのものがリハビリにつながるのではないでしょうか」
絵文字と陳列の工夫で
商品の視認性を高める
マイヤでは、店舗のバリアフリー化も進んでいます。商品陳列棚への誘導のために、床面などに大きめの文字と絵文字で掲示したり、棚板を低くして視認性が高まるように工夫しています。

「最初はトイレの場所を知らせる際に、上向きの矢印を書いた看板を吊り下げていたのですが、認知症の方には、上の階に上がると認識されているケースがありました。そこで、床面に矢印を貼ったところ、勘違いされる方がほとんどいなくなりました」
そのため、売り場の案内も床面に絵文字で表示することになったそうです。
「ご高齢になると、商品を見つけにくくなりますし、店員へのお声がけをためらってしまう方もいらっしゃいます。こういった一つひとつの配慮が、認知症の方やご高齢者との共生社会の実現につながるのではないでしょうか」
株式会社マイヤ
https://www.maiya.co.jp/
「スローショッピング・パートナー」活動は毎週木曜日開催。10名から15名のサポーターが、認知症の方と会話をしながら買い物をサポートします。商品選びは、あくまでも本人任せ。
豊かなシニアライフのための情報誌『あいらいふ』編集部
【誌名】『あいらいふvol.176(2025年3月27日発行号)』
【概要】初めて老人ホームを探すご家族さまの施設選びのポイントをさまざまな切り口でわかりやすく解説。著名人に介護経験を語っていただくインタビュー記事のほか、人生やシニアライフを豊かにするためのさまざまな情報や話題を取り上げて掲載。
【発行部数】4万部
【配布場所】市区役所の高齢者介護担当窓口・社会福祉協議会・地域包括支援センター・居宅介護支援事業所・訪問看護ステーション・病院・薬局など1万か所