あいらいふレポート

【知っトク「注目のトピック」vol.12】〝孤食〟になりがちな高齢者に〝共食〟の場を。「こども食堂」ならぬ、「シニア食堂」とは?

東京都が2023年度から実施している、高齢者向け施策「TOKYO長寿ふれあい食堂推進事業」。地域のシニアが気軽に立ち寄り、飲食をしながらさまざまな交流ができる「シニア食堂」の開催により、食を通じたシニアの居場所づくりを支援する取り組みをご紹介します。

孤食によるリスクの存在

家族形態や生活スタイルの変化とともに、1人で食事をする〝孤食〟の習慣が増加しています。独り暮らしのシニアも年々増え続けており、65歳以上の男女それぞれの人口に占める独り暮らしの方の割合を1980年と2020年で比較すると、40年間で男性は約3.5倍、女性は約2倍に増加(※1)。日本老年学的評価研究機構が公表している複数の研究によると、シニアの孤食は低体重やうつ症状のほか、死亡リスクをも上昇させる危険性が示唆されています(※2)。

〝共食〟の場で楽しく交流促進

こうした状況を受けて、東京都では2023年度から、「TOKYO長寿ふれあい食堂推進事業」を開始しました。

同事業は、都が都民から募集した事業案を公表し、都民によるインターネット投票の結果を踏まえて実施を決める、「都民提案採択事業」の一つ。地域の高齢者が気軽に集まることができる「シニア食堂」で栄養バランスの良い食事を提供するとともに、社会的な交流を促進し、心身の健康増進を目指しています。

1食堂あたり年間上限24万円まで運営経費の一部が支給されるほか、健康講座の開催や多世代間交流の取り組みに対しても、それぞれ規定額の補助金が上乗せされます。2023年度は、文京区、目黒区、荒川区、豊島区、奥多摩町の4区1町が申請し、計13拠点で開催されました。

今年度も同事業は継続中

昨年度に「シニア食堂」を開催した、地域の高齢化率(※3)が50%を超える奥多摩町では、2つの自治会が利用料100円で「シニア食堂」を開き、どちらも20人以上のシニアが参加して交流を楽しみました。また、同事業の開始前から同様の活動をしている団体にも補助金の交付は可能で、目黒区では以前から区立の特別養護老人ホームで開催していた、誰でも自由に参加できるシニア向け食事会に同補助金を適用し、栄養指導にも力を入れています。

さらに、千葉県や埼玉県、京都府にも「シニア食堂」を営んでいる団体があり、シニア自身が調理したり、こども食堂と合同で開催するなど、工夫を加えた取り組みにも挑戦。今後の広がりが注目されています。

「都民提案採択事業」の実施期間は通常、一年間のみと定められていますが、事業を担当する東京都福祉局内でも継続する必要性が認められ、都が実施する通常の施策に形を変えて、2024年度も継続中です。

TOKYO長寿ふれあい食堂推進事業 補助要件
・原則として、月に1回以上、定期的に開催すること。
・補助金を申請する区内で開催すること
・参加する高齢者のおおむね10人以上が安全に食事を取りながら交流をすることができるスペースを確保すること など

※1:内閣府「令和4年版高齢社会白書」より
※2:日本老年学的評価研究「孤食」に関する各種プレスリリースより
※3:65歳以上の人口が総人口に占める割合

介護情報誌『あいらいふ』編集部
【誌名】『あいらいふ vol.173(2024年10-11月号)』
【概要】 初めて老人ホームを探すご家族さまの施設選びのポイントをさまざまな切り口でわかりやすく解説。著名人に人生観を語っていただくインタビュー記事のほか、人生やシニアライフを豊かにするためのさまざまな情報や話題を取り上げて掲載。
【発行部数】4万部
【配布場所】市区役所高齢者介護担当窓口・社会福祉協議会・地域包括支援センター・居宅介護支援事業所・訪問看護ステーション・病院・薬局など1万か所

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