【特別インタビュー】人生100年時代の歩き方介護費用、医療費、税金、社会保険料…プロに聞く“払い過ぎ”防止のテクニック
社会の高齢化が加速する中、介護費用、医療費、税金や社会保険料といった“公的支出”の負担がますます重くのしかかるシニア世代。もし、支出の適切な見直しや、公的な支援制度の活用を通じて、経済面での安心が手に入るとしたら?
本特集では、公的支出の適正化サービス「賢約サポート」を提供する(一社)日本ライフマイスター協会の理事であり、同サービスの開発者でもある藪内祐子さんにお話をうかがいました。専門家のアドバイスを通じて、より安心で充実したシニアライフを目指しませんか?

シニア世代の資産と生活を守る
公的支出適正診断とは
──シニアライフのトータルサポートカンパニーを目指すあいらいふは現在、メイン事業である老人ホームの紹介業のみならず、さまざまなシニア向けサービスを拡充・展開し、シニアのお困りごとの相談窓口としての役割を果たしています。
今回は、シニア世代の生活防衛といった観点から、公的支出の削減を視野に、多数のご利用をいただいている「公的支出適正診断」サービスについて、藪内理事にお話をうかがっていきます。まず、同サービスの概要についてお聞かせください。
当協会では、「賢約サポート」のサービス名で、ご利用者に公的支出適正診断の機会を提供しています。
公的支出適正診断とは、介護費用や医療費、税金、社会保険料といった公的な支出についての適正化を図り、現在と将来、場合によっては過去にさかのぼって、支出を合理的に削減するお手伝いをするサービスです。
介護保険や年金といった、公的制度に関する知識を幅広く備えた専門家である「公的支出診断士」が、ご利用者の現在の公的支出が適正かどうかを診断し、正しい納税と公的助成制度の活用についてご提案を行います。
また、還付金が受けられる可能性がある方には、専任の税理士が付き添い、還付申請までをサポートします。
──ご相談にかかる費用は、どのように支払われるのでしょうか。
ご相談から診断結果のご報告(レポート)までは無料です。診断結果により還付金が発生する場合に、当協会の提携する税理士とご契約いただき、ご利用者が受け取った還付金の一部を、報酬としてお支払いいただきます。
2019年に開始した「賢約サポート」サービスですが、累計のご相談件数はすでに3000件に達しました。ご利用者のうち約7割の方が、当サービスを利用することで、公的支出の削減を実現しています。
知らなければ損をする?
日本の申請主義の壁
──介護保険や年金。いずれも公的な制度でありながら、サービスを十分に活用できていない方が多いのでしょうか?
老後のお金を守る上でのポイントは、公的な控除と負担軽減の制度をしっかり活用することです。ですが、残念ながら現状では、7割の方が制度を上手に使えていません。
「賢約サポート」のようなサービスが成り立つ前提として、日本は公的な制度やサービスを利用する際に、窓口に自ら足を運んで申し出なければならない「申請主義」の国であることが挙げられます。
ご自身で申請した方だけに制度が適用されるのですが、国も自治体もどのような制度を使えるのか、積極的に告知してくれることはありません。
その上、年金は日本年金機構、税金は国税庁、健康保険や介護保険は厚生労働省と、制度を所管する団体や法律がそれぞれ異なる縦割りの仕組みによって、国民にとってますますわかりにくく、使いづらい構造になっています。
このため、利用できる制度の情報は、シニア世代とご家族がご自身で集めなければならないのです。公的な支援の対象となる範囲をきちんと理解して、これまで制度を使えなかった方が十分に活用できるようになると、トータルで数百万円もの差が生じるケースもあります。
──申請主義の下では、「知る・知らない」の差は非常に大きなものになるのですね。
多くの人々が、公的支出のムダに気がつかないまま、生活の破綻を迎えるリスクを抱えています。制度を知らないがために、必要以上の費用を負担し、貯えを使い果たしてしまうことが起こり得るのです。
誰もが、「自分が使える制度は何?」と尋ねさえすれば、一つの窓口、一度の手続きで制度を使えるようになれば良いのに。公的制度全般を網羅し、アドバイスができる専門家を育てることができれば、制度を本当に必要としている人が住みやすい社会になる。
そう考えた私は、どなたでも気軽に「年金」「税金」「健康保険」「介護保険」をワンストップで相談、解決できる窓口を、オンライン上に作ることにしました。それが「賢約サポート」です。
家計の健康診断
「賢約サポート」のメリットは?
──「賢約サポート」のメリットには、どのようなものがありますか?
「賢約サポート」では、ご利用者の現在の公的支出が適正かどうか、無料で診断が行えますから、どなたにでもメリットがあります。
これまで払い過ぎていた方、手続きに漏れがあった方は、①公的支出が適正化され、税金や社会保険料の控除、介護費の軽減など支出が削減できる。②当協会と提携している税理士の手続きによって、払い過ぎた金額を還付金として受けられる可能性がある。など大きなメリットが得られます。
確定申告をすることで、最大で5年分の還付金をさかのぼって受けられるほか、手続き後は、その先何年にもわたって負担が軽減され、手取りの収入が増えることになります。
また、支出が適正であった方も、①誤りがなかったことがわかり、安心につながる。②当協会に所属する公的支出診断士のアドバイスにより、今後の支出を見直すべきタイミングがわかる。といったメリットが得られます。
住民税や所得税、医療費や介護費用、施設費用が減額され、経済面、ひいては精神面においても余裕が生まれれば、人生そのものが大きく変わると言っても差し支えないかもしれません。お一人おひとりが持っている公的な権利をしっかりと活用して、明るい将来を目指していただきたいですね。
今すぐ活用できる
シニア世代向け公的制度とは?
──シニア世代が活用しやすい公的制度で、見落とされがちなものはありますか?
シニア世代とご家族にとって、有効な制度をいくつかご紹介します。
① 障害者控除
実は障害者手帳を持っていなくても、要介護認定を受けていれば、税金の面では「障害者手帳を持っているのと同じ控除を受けることが可能」です。
住民税、所得税も安くなりますし、非課税世帯となれば、医療費や介護施設を利用される際にかかる費用も安くなります。
② 寡婦控除
子どもを扶養していなくても、旦那さんを亡くされた方は寡婦控除が受けられます。年金額の高い方は、大きな節税につながる可能性があります。
また、離婚経験のある方が、親御さんなどの親族を扶養に入れると寡婦控除が受けられます。
③ 扶養控除
お子さんの扶養に入れる状態でも、手続きをされていない方もいます。扶養に入ることで扶養控除を適用できますので、お子さんの住民税、所得税が安くなります。
④ 健康保険
お子さんの健康保険の扶養に入ることで、月々の健康保険料の支出を減らすことが可能です。障がいを抱えているご家族、60歳を超えているご家族は、年収180万円まで扶養に入ることができます。
ただし、高額療養費については自己負担限度額が引き上げられるなどのデメリットもありますので、事前にご確認ください。
⑤ 世帯分離
親子が世帯を一緒にしていることで、課税世帯となってしまい、介護保険の軽減が受けられなくなることがあります。
このようなケースでは、住民票を分けて世帯を分離することで、お子さんの収入が親御さんに影響を及ぼさないようにする方法があります。
同じ住所でも住民票を分けることは可能ですから、同居しながらでも、医療費や介護施設を利用する際の自己負担額を大きく引き下げることが可能です。
安心の生涯に向けて
「賢約サポート」が目指す将来像
──「賢約サポート」は、2019年に誕生した比較的新しいサービスです。今後の目標、協会の将来像は。
当協会では、「賢約サポート」サービスの普及・推進とともに、公的支出の適正化を目指す上で車の両輪となる「公的支出診断士」の人材育成に力を注いでいきたいと考えています。
また、現在、大きな社会問題となっている現役世代の介護離職防止に貢献するため、企業における福利厚生の一環としての「賢約サポート」システムの導入を進めて参ります。
「公的支出診断士」の資格は、ケアマネジャー・医療ソーシャルワーカー・介護施設の経営者・地域包括支援センターの職員といった介護に携わる方々にも、ご自身のカウンセリング範囲をレベルアップするツールとして活用いただけるのではと考えています。ご興味をお持ちの方はぜひ、お問い合わせください。
【プロフィール】
合同会社AYUMIサポート代表社員/一般社団法人日本ライフマイスター協会理事/
大阪府グループホーム外部評価委員/介護情報チャンネル『ゆるっとかいご』メンバー
藪内祐子さん
元行政職員。年金・健康保険・税金の部門で8年間の経験を重ねた後、介護保険に関して10年の相談支援を行う。退職後に設立した合同会社AYUMIサポートにて、公的支出の適正化サービス「賢約サポート」事業を創設。現在は、同サービスの普及・利用者増に力を注ぐとともに、企業を対象とした講演やセミナー活動を通じて、公的支出の適正化による「介護離職ゼロ」の実現、従業員の可処分所得増に貢献している。著書に『元行政職員が語る介護 知っておきたいお金のこと』(NextPublishing Authors Press刊)。
取材・文:あいらいふ編集部
資料提供:一般社団法人日本ライフマイスター協会
豊かなシニアライフのための情報誌『あいらいふ』編集部
【誌名】『あいらいふ』vol.175(2025年1月30日発行号)
【概要】初めて老人ホームを探すご家族さまの施設選びのポイントをさまざまな切り口でわかりやすく解説。著名人に介護経験を語っていただくインタビュー記事のほか、人生やシニアライフを豊かにするためのさまざまな情報や話題を取り上げて掲載。
【発行部数】4万部
【配布場所】市区役所の高齢者介護担当窓口・社会福祉協議会・地域包括支援センター・居宅介護支援事業所・訪問看護ステーション・病院・薬局など1万か所