【知っトク「注目のトピック」vol.13】政府が推進する新たな「高齢社会対策大綱」。高齢者の暮らしはどう変わる?目的とポイントは?
2024年9月、政府は6年ぶりとなる新たな「高齢社会対策大綱」を閣議決定しました。75歳以上の後期高齢者に対して、医療費の3割負担を求める対象者層の拡大を検討するなど、新たな施策がシニア世代の暮らしにどのような影響を与えるのか。ポイントを解説します。
「高齢社会対策大綱」とは?
「高齢社会対策大綱」(以下、大綱)は、高齢社会対策基本法に基づき、政府が推進すべき高齢社会対策の基本的かつ総合的な指針として策定されるものです。1996年に最初の大綱が作成されて以来、経済・社会情勢の変化を踏まえながら、おおむね5年ごとに見直しが行われてきました。
今回の大綱に見られる基本的な考え方と注目すべきポイントを、社会保障や医療、生活支援の側面から見ていきましょう。
後期高齢者の医療費
3割負担の対象拡大を議論
今回の改訂では、現在、原則として医療費の自己負担が1割となっている75歳以上の後期高齢者に対して、3割負担を求める対象者層の拡大を検討することが大綱中に明記され、報道でも話題を集めました。
現在、日本の人口に占める65歳以上の高齢者の割合は29.3%に上り、世界で最も高齢化の進んだ国となっています。
大綱も、社会を持続可能なものにしていく上で「年齢のみを基準として『支える側』と『支えられる側』を分けるのは、実態に合わなくなっている」と指摘。所得のある高齢者には応分の負担を求め、「支える側」に回ってもらうことの必要性を強調しました。
また、これに伴い、年金改革においては、高齢者の労働意欲を高め、市場への参加を促す目的で、一定以上の収入を得ると年金が減額される「在職老齢年金」制度の見直しを図ることが議論されています。
高齢者の住環境整備に注力
賃貸住宅の拡充図る
大綱では、高齢者の就業・所得や健康・福祉など、5つの基本的施策を掲げています。
このうち、生活環境の分野では、重要項目の一つとして「豊かで安心した住生活の確保」を挙げ、増加し続ける高齢期の独り暮らしに対応するための環境整備に取り組む姿勢を示しました。
年齢や身寄りがないことを理由に、シニア世代が賃貸住宅への入居を断られるケースが相次いでいるため、大綱では、民間の空き家などを活用し、シニアの入居を拒まない賃貸住宅や、入居者の見守りなどのサポートを行う賃貸住宅の供給を、官民連携で促進するとしています。
今年5月には、新たに都道府県が「居住支援法人」を指定する制度を定めた改正住宅セーフティネット法が成立し、地域におけるシニア世代の住まいの確保機能の強化に向けて動き出しました。
共生社会の実現にむけて
社会保障制度における医療・介護費の問題をはじめ、超高齢社会の日本は、多くの課題を抱えています。今回の大綱では、「自立・自律」「地域の活力」「相互支援」というキーワードが、随所に見受けられました。
大綱に記された、すべての人が「支える側」「支えられる側」となる施策が着実に進み、多世代が安心して生活できる共生社会の実現につながることが期待されています。
内閣府ホームページ「高齢社会対策大綱」
https://www8.cao.go.jp/kourei/measure/taikou
内閣府の策定した新たな高齢社会対策大綱は、2026年度の診療報酬改定や、2027年度の介護報酬改定に大きな影響を与えると見られています。
介護情報誌『あいらいふ』編集部
【誌名】『あいらいふ vol.174(2024年12-1月号)』
【概要】 初めて老人ホームを探すご家族さまの施設選びのポイントをさまざまな切り口でわかりやすく解説。著名人に介護経験を語っていただくインタビュー記事他、人生やシニアライフを豊かにするためのさまざまな情報や話題を取り上げて掲載。
【発行部数】4万部
【配布場所】市区役所の高齢者介護担当窓口・社会福祉協議会・地域包括支援センター・居宅介護支援事業所・訪問看護ステーション・病院・薬局など1万か所