あいらいふレポート

【特集】東京2025 デフリンピック 〈後編〉

開催期間2025年11月15日~26日(12日間)

デフリンピック公式サイト

今大会初出場のハンドボールチームが目指すは「まず一勝!」

デフリンピックに、デフハンドボールの男子日本代表が出場するのは、今大会が初めてになります。

大会に先立って行われた代表選手の強化トレーニング合宿にお邪魔して、そのようすを取材。亀井良和監督と、チームをけん引する津村開選手、定野巧選手、チームに帯同する手話通訳の斉藤純さんに、大会に向けての想いをうかがいました。


亀井良和(かめい よしかず):監督

指導者としてのキャリアは長いのですが、デフハンドボールの指導をするのは初めてです。娘に聴覚障がいがあり、手話を用いて生活していることもあり、日本ハンドボール協会からお話をいただいて、一年ほど前に正式に監督に就任しました。

デフスポーツはデフアスリート全員が補聴器を外し、自分の日常のコミュニケーションの手段を超えてスポーツをしていくという、とても難しく、奥深い世界です。新たなコミュニケーションの取り方を模索する姿を見ていただくことが、この大会の意義であったり、これから先の社会のあり方につながっていくのではと感じています。

まずは、一勝したい。一方で、どうしても試合結果に目をとらわれがちですが、選手たちがどのようなコミュニケーションを使って、考え、動き、そして試合に立ち向かっているのかにも注目して観ていただきたいですね。プレイをしていない場面でも、素晴らしいシーンがたくさんあるはずです。

また、今大会で、初出場できるということをきっかけにして、日本のデフアスリートたちが、聴覚障害のある子どもたちに、これからのデフハンドボールを育てていってほしい。スポーツ文化のひとつとして継承されていくことが、大会のさらに先にある目標です。


津村開(つむら かい):CP/160cm/京都府

ハンドボールのキャリアは小学校3年生から。小学校の時は全国大会に出場、中学校では全国大会でベスト8まで行きました。ろう学校ではなく公立学校に通い、きこえる人とプレイしていました。

以前、日本代表の試合観戦中に、偶然近くにデフの方たちがいて、補聴器をつけていた僕に声をかけてもらい、「練習をしているから気軽に来てほしい」と誘われたことがこのチームに入ったきっかけです。僕自身は補聴器を着けることでコミュニケーションを取れるため、これまで手話言語をあまり使う機会がありませんでした。しかし、デフハンドボールに必要な手話言語はしっかり身につけたいと思います。

チームとしては、まず1勝。個人としては、自分がチームを引っ張っていける存在になり、1試合ずつしっかり点を決めて、勝ち上がりたいです!


定野巧(さだの たくみ):GK/179cm/東京都

普段は、東京都内の区役所で働いています。チームには、同じ区役所で一緒に働いている先輩のメンバー(辻井隆伸選手)もいます。

私自身のハンドボールのキャリアは、まだ1年半ほど。コーチの谷口俊さんと出会ったことが、きっかけです。昨年の夏、駒沢体育館(東京都世田谷区)で試合をしたんですが、ボロボロの結果で。その時に谷口さんから「やっぱりカラダが重いよ、ダメだよ」と。結構ショックを受けたんですが(笑)、減量して、フィジカル向上に意識をもつようになりました。

デフハンドボールはできたばかりのチームですが、メダル獲得を目標にしたいです。「日本のゴールは、私に任せろ!」と胸を張って、まずは1試合1試合を着実に戦い抜きたいと思います。


斉藤純(さいとう じゅん):手話通訳

大学時代に言語学を学び、手話言語を覚えました。私自身もハンドボールの経験者であり、競技に関する専門的な知識は持っていますが、手話通訳となると難しさを感じます。

例えば、選手との位置関係によって見えていない部分が出ないようにしたり、接戦を繰り広げている最中のタイムアウトの場面では、監督の言葉を間違えないように端的に、熱意が伝わるように意識しています。

通訳として普段はあまり自分の発言をすることはないのですが、本当に陰ながら選手たちの一番のファンであり、サポーターでもあると自認しています。

この大会をきっかけにして、ハンドボールの魅力を、特にきこえない子どもたちに届けていけたら。そしてデフハンドボールの人口が増え、手話言語も普及していけばうれしいです。

デフハンドボール日本代表試合日程

今大会には8ヵ国がエントリー(男子のみの開催)。日本はドイツ、トルコ、ブラジルとともにグループAで戦います。

会場:駒沢オリンピック公園総合運動場(東京都世田谷区)屋内球技場

【デフハンドボール日本代表 予選ラウンド試合日程】

11月16日(日) 10:00~ 日本vsトルコ
11月17日(月) 10:00~ 日本vsブラジル
11月19日(水) 19:00~ 日本vsドイツ

競技会場はこちら

豊かなシニアライフのための情報誌『あいらいふ』編集部
【誌名】『あいらいふ』vol.179(2025年9月25日発行号)
【概要】初めて老人ホームを探すご家族さまの施設選びのポイントをさまざまな切り口でわかりやすく解説。著名人に介護経験を語っていただくインタビュー記事のほか、人生やシニアライフを豊かにするためのさまざまな情報や話題を取り上げて掲載。
【発行部数】4万部
【配布場所】市区役所の高齢者介護担当窓口・社会福祉協議会・地域包括支援センター・居宅介護支援事業所・訪問看護ステーション・病院・薬局など1万か所

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