あいらいふレポート

【知っトク「注目のトピック」vol.01】認知症による「資産凍結」という巨大な社会課題。解決策のひとつ「家族信託」とは!?

現在、日本では超高齢社会の到来に伴い、「認知症による資産凍結」という大きな社会課題を抱えていることをご存知でしょうか。その解決方法のひとつとして、昨今注目されているのが「家族信託」です。なぜ注目されているのか、どのように活用されているのか。トリニティ・テクノロジー株式会社で司法書士を務める浅沼礼奈さんにお話をうかがいました。

「成年後見」申立件数は増加も
普及率は低迷が続く

認知症高齢者は2020年に600万人を超え、2025年には、65歳以上の高齢者の5人に1人は認知症になると言われています。認知症により判断能力を失うと「資産を凍結」され、預金を口座から引き出せなくなり、ご自宅の売却ができなくなるなど、ご家族にとっても生活に大きな不安を与える社会課題となっているのです。

資産凍結への対策としてまず思いつくのが「成年後見制度」ではないでしょうか。家庭裁判所に選任された成年後見人が、財産管理を行う制度です。 適切な判断をしてもらえるようになる反面、以下のようなデメリットもあります。

● 途中で後見人を解除できない
● 月2〜5万円程度の報酬が必要
● 財産管理に家族や本人の意向が反映されるとは限らない

そのため、申立件数は前年対比で増加するものの、認知症高齢者数に対する普及率は伸び悩んでいる状況です。

「家族信託」とは
財産を家族に任せておく仕組み

一方で、認知症による資産凍結の対策として新たに注目されているのが「家族信託」です。 任された家族が財産を管理できるようになると、委託者の判断能力に影響されず、自由度が高く柔軟な財産管理が実現できます。

具体例をみてみましょう。高齢のご両親が共有名義で不動産をお持ちの場合、どちらか一方でも認知症を発症すると不動産の売却が困難になります。

そこで、ご両親それぞれの家族信託契約を作成し、不動産名義は受託者が預かることになります。すると、不動産の売却を検討する段階で万が一、ご両親が認知症になってしまっていても、受託者の判断のみでスムーズな売却が可能になります。

このように、家族信託は認知症による資産凍結対策のみならず、広くさまざまな事態の備えとなる選択肢です。成年後見制度と比べると手続きも簡単で、継続的かつ高額な費用もかからず、ご家族の負担も抑えられるメリットもあります。ご自身やご家族の安心を守るため、家族信託の活用を検討してみてはいかがでしょうか。

取材協力:
トリニティ・テクノロジー株式会社 司法書士
浅沼 礼奈(あさぬま・れいな)さん

成年後見制度のデメリットとして挙げた問題を解決し、家族信託を活用するすべての方が安心して財産管理を行うことができるよう、家族信託用の財産管理サービス「スマート家族信託」を提供しています。
https://sma-shin.jp/

介護情報誌『あいらいふ』編集部
【誌名】『あいらいふ 2022年12-2023年1月号』
【概要】 初めて老人ホームを探すご家族さまの施設選びのポイントをさまざまな切り口でわかりやすく解説。著名人に介護経験を語っていただくインタビュー記事他、人生やシニアライフを豊かにするためのさまざまな情報や話題を取り上げて掲載。
【発行部数】4万部
【配布場所】市区役所高齢者介護担当窓口・社会福祉協議会・地域包括支援センター・居宅介護支援事業所・訪問看護ステーション・病院・薬局など1万か所

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