あいらいふレポート

第15回 ユカリア フレンドシップミーティング 医療DXが導くヘルスケアの産業化 ユカリアグループと医療×介護の未来

あいらいふの親会社である株式会社ユカリアは、7月6日、東京・港区の虎ノ門ヒルズフォーラムで、「第15回 ユカリア フレンドシップミーティング」を開催。

全国から多数のヘルスケア関係者が出席する中、同社のビジョンである“ヘルスケアの産業化”を実現するために欠かせない「医療DX」の推進をテーマに、産官学医のキーパーソンをお招きして、日本における医療・介護の未来を語り合いました。

今回は、同イベントの開催当日のもようをお伝えします。

医療・介護業界の課題解決を視野に
ユカリアとあいらいふ

老人ホーム紹介業をメイン事業に、「シニアライフのトータルサポートカンパニー」を目指すあいらいふは現在、株式会社ユカリアのグループ企業として、“介護の悩みのない社会へ”のビジョンを実現するための事業展開に取り組んでいます。

では、あいらいふの親会社である株式会社ユカリアとは、どのような企業なのでしょうか。

ユカリアは、“ヘルスケアの産業化”をビジョンとして掲げ、病院経営のコンサルティングや、医療・介護の現場におけるDX(デジタル技術による業務プロセスやビジネスモデルの革新)支援を手がけながら、顧客の課題解決と価値創出をサポートする、BtoB(企業間取引)をメインとするヘルスケア事業会社です。

また、全国の病院・介護施設、製薬企業、研究・教育機関との取引を豊富に抱えるユカリアは、医療・介護の現場で得たノウハウをもとに、数多くの新規事業を生み出しています。

電子カルテと連動し、入院している患者さんの情報をベッドサイドで確認、多職種間で共有できる情報端末「EUCALIA TOUCH(ユカリアタッチ)」は、2017年の発売以来、全国の70を超える病院に導入され、累計導入台数は2万台を突破しました。

リーズナブルな価格・短時間で受診ができる健診サービス「スマートドック」は、MRIなどの高度な医療機器の非稼働時間を活用したシェアリングエコノミーによって、気軽に脳やがんの画像検査が受けられる環境を提供しています。

そのほか、ユカリアでは、各事業が連携して「現場」を支え、医療・介護を切れ目なく提供する地域包括ケアシステムの一角を担うことで、社会インフラをより強固なものとするべく、グループ会社を通じて介護施設の運営事業、紹介事業にも取り組んでいます。

株式会社クラーチは、高齢者向け入居施設を12ホーム、約1000室運営しており、実際の介護の現場において“感動とサプライズをデザイン”する中で、日々ノウハウを蓄積しています。

あいらいふは、高齢者向け入居施設の紹介事業に加えて、ご入居に伴うさまざまな調整や手続きの代行、不動産の売却や引っ越しの手配までトータルでサポート。施設検索ポータルサイト「さがしっくす」も運営しており、相談員数や提携施設数などで、業界トップクラスの紹介事業者となっています。

フレンドシップミーティング
コロナ禍経て4年ぶりに開催

ユカリアでは、経営支援・運営支援を行っているパートナー病院の経営陣をお招きして、情報共有のための「フレンドシップミーティング」を、2007年から14回にわたり開催してきました。

新型コロナウイルス感染症の流行を受けて、2020年以降は開催を延期していましたが、今回、「ユカリア フレンドシップミーティング(以下、EFM)」に名称を変更し、4年ぶりの再開を決定。

また、これを機に従来のパートナー病院に加えて、医療関連の研究・教育機関、製薬企業、金融機関など、ユカリアの関係者を幅広く招待するフォーラムへの刷新を図りました。

今回のテーマとなった医療DXとは、文字どおり「医療分野における、デジタルによる変革」のことを指します。

保健・医療・介護の各段階で発生・保存される情報やデータ(発症予防、診察・治療・薬剤処方、診断書の作成、地域医療連携、医療・介護の連携、研究開発など)を、デジタル技術を活用して広く共有することで、多くの人々の病気の予防を促進し、より良質な医療やケアを受けられるように、社会や生活の形を変えていくための取り組みです。

社会の高齢化が進み、医療や介護に対するニーズがますます高まる中、社会保障制度を将来にわたって持続可能なものとし、将来世代が安心して暮らしていけるようにするためには、医療DXは避けては通れない道のりです。

EFM当日は、全国から多数の参加者が会場を訪れ、開会のあいさつでは、ユカリア代表取締役会長の古川淳が登壇しました。

㈱ユカリア会長・古川 淳による開会の辞

古川は、4年ぶりの開催となったEFMの参加者に向けて感謝を伝えるとともに、「本日のテーマである医療DXは、医療・介護分野における企業の質と効率を、飛躍的に向上させる可能性を秘めている」と紹介。

労働力人口が減少し、働き方改革が喫緊の課題として取り上げられる中、医療・介護の現場においても、IoT(モノのインターネット)やAI(人工知能)、ロボティクスの活用による業務負担の軽減が重要課題になりつつあると述べるとともに、患者側の視点からも、最新技術の適用によって医療現場の信頼度や治療成績が向上し、QOL(生活の質)の改善が期待できると説明しました。

また欧米、特に米国において、ユカリアのビジョンである“ヘルスケアの産業化”が成功を収めている重要なポイントとして、産官学の各分野と病院が高い次元で連携しながら、価値の創造を目指している点を挙げ、

「硬直化した日本のヘルスケアシステムに変革を起こすためには、新しい仲間を見つけ、お互いに共感し、支え合う関係を築くことが大切。今回のイベントがその一助となれば幸いだ」と呼びかけました。

東京大学・松尾教授が基調講演
AIが変える医療の現場

続いて行われた基調講演では、日本におけるAI研究の第一人者であり、内閣府の「AI戦略会議」座長も務める、東京大学大学院の松尾豊教授が登壇。「医療×AI」をテーマに、「AIが変革する、未来の医療現場」と題して、解説を行いました。

松尾 豊教授の講演。AI×医療の可能性はあらゆる分野に及ぶ

講演では、AI研究の最新動向、今後の技術発展の方向性、AI分野における日本の立ち位置と果たすべき役割などに言及。

医療分野においても、事務作業や周辺のサポート業務にとどまらず、画像診断や創薬など、さまざまな場面でAIが活用される機会はさらに増加すると予測し、東京大学松尾研究室でも、同研究室発のスタートアップ企業が、認知症の初期症状を検出するためのサービスを開発していることを紹介しました。

また、日本の医療に特化したAIモデルを開発するためには、海外企業の提供するデータをそのまま使用するのではなく、日本人の医療データを活用できる仕組みを構築すべきと提言。現在、内閣府の戦略的イノベーション創造プログラムが主導している医療特化AIモデルの開発構想に賛意を表しました。

講演終了後の質疑応答では、医療機関の方から、ご利用者からデータを収集・活用することの難しさについて質問が寄せられました。

松尾教授も同意し、「官民ともに多くの企業・団体が医療データの収集に取り組んでいるが、まだまだ不十分。また、集めたデータを統合する作業には、技術的な問題に加えて倫理面の課題も絡んでいる。業界全体でコンセンサスを取りながら進めていくことが重要だ」と述べました。

ビッグデータ活用と予防医療
パネルディスカッション2件を実施

その後、ランチミーティングを挟んで午後からは、ユカリアの新たなパートナー病院の紹介を実施。続けて、2件のパネルディスカッションと、ユカリアの事業内容の紹介が行われました。

このうち、パネルディスカッション①では、「医療ビッグデータ活用」をテーマに取り上げ、産官学医それぞれの最前線で日本における医療ビッグデータの利活用を推進している方々に、議論を交わしていただきました。

登壇者は、法整備が進んだことや、データの流通コストの低下によって、病院が医療データを活用しようとする機運はかつてなく高まっているとの認識で一致。最大の課題であるデータを提供する側のインセンティブ(動機づけ)については、個別の健康予測の精度を高めるなど、提供者にとってのメリットを明確にしていく必要があると述べました。

左から今西、小林議員、中村教授、松島会長
 
パネルディスカッション①
テーマ:「医療ビッグデータ活用」─グローバルスタンダードに追いつくためには─
パネリスト:
衆議院議員・小林史明
熊本大学病院教授 医療情報経営企画部 兼 副病院長(AI・DX推進担当)・中村太志
㈱JMDC取締役会長・松島陽介
モデレーター:
㈱ユカリア デジタル事業本部 データインテリジェンス事業部長・今西是裕
(敬称略)

また、パネルディスカッション②では、「未病・予防医療」をテーマに据え、「人生100年時代を健康に生きるには」と題して、認知症やフレイル(加齢により心身が衰えた状態)の予防に欠かせない社会的なつながり、社会保障といった切り口から、解説をしていただきました。

左から石川氏、塩崎議員、高井院長、富田教授
 
パネルディスカッション②
テーマ:「未病・予防医療」─人生100年時代を健康に生きるには─
パネリスト:
衆議院議員・塩崎彰久
メディカルチェックスタジオ 東京銀座クリニック院長/東京国際大学 副学長・高井信朗
東京大学大学院 薬学系研究科 機能病態学教室 教授・富田泰輔
モデレーター:
(公財)Well-being for Planet Earth 代表理事・石川善樹
(敬称略)

続けて行われた講演「ユカリアの取り組み─病院へのサポートを通じてヘルスケア業界の変革を目指すユカリアの世界観─」では、執行役員 事業部門管掌役員 兼 営業本部長の山田和宏が、ユカリアの取り組みについて解説。

電子カルテのデータを製薬企業や研究機関に提供し、創薬や研究開発に役立てる医療データ事業や、構造計算から設計・施工、メンテナンスまでを一括して手がける医療・介護施設の建て替えサポート事業など、新規事業を紹介しました。

ユカリアの現在地と将来への展望
医療・介護のあるべき姿を目指して

すべての講演プログラムの終了後、2024年3月にユカリアの代表取締役に就任した三沢英生から、閉会の挨拶が行われました。

㈱ユカリア社長・三沢英生が語る“ヘルスケアの産業化”の未来

現任の東京大学アメリカンフットボール部の監督であり、また、筑波大学の客員教授を務め、大学スポーツの改革に取り組みながら、ユカリア社長と三足のわらじを履く三沢は、

「スポーツビジネスを手がけていた2020年、ユカリアに出会い、日本における産業化の遅れという医療・スポーツ共通の課題に共感を覚えて、医療・介護の世界に飛び込んだ。

そこから4年間が経過し、現在は、このままでは日本の医療・介護は立ち行かなくなるのではという、強烈な危機感からくる使命感に突き動かされている。

前回までのEFMは交流会の色合いが強かったが、今回、パートナー病院の方々を中心に、産官学医の最前線で活躍する皆さまに向けて、ユカリアのビジョンを共有できたのではと考えている。

また、医療・介護分野における社会的な課題といったものも浮き彫りになった。皆さまに少しでも、共感いただける部分があったかと思う。

現状、ユカリアはかなり広範囲の医療・介護関連ビジネスを手がけているが、一つひとつのサービスを個々にご提案するのではなく、ヘルスケアにおけるさまざまな課題にワンストップでお応えし、『あるべき姿』を実現していきたい。

このミッションに共感いただいた皆さまは、仲間です。仲間の皆さまのお力をお借りしながら、事業をしっかりとスケールアップしていくことで、初めてミッションは達成できる。ヘルスケアの未来をともに切り拓いていくため、お力添えをお願いしたい」と述べ、参加者にさらなる協力を呼びかけました。

併せて、来年もEFMが継続開催されることが発表され、会場が拍手に包まれる中、今回のフォーラムは幕を閉じました。

その後は、会場を移してアフターミーティングを盛大に開催。参加者同士が活発な意見交換・情報共有を行い、来年の再会を約束して散会となりました。

取材・文/あいらいふ編集部
撮影/近藤 豊

介護情報誌『あいらいふ』編集部
【誌名】『あいらいふ vol.173(2024年10-11月号)』
【概要】 初めて老人ホームを探すご家族さまの施設選びのポイントをさまざまな切り口でわかりやすく解説。著名人に人生観を語っていただくインタビュー記事のほか、人生やシニアライフを豊かにするためのさまざまな情報や話題を取り上げて掲載。
【発行部数】4万部
【配布場所】市区役所高齢者介護担当窓口・社会福祉協議会・地域包括支援センター・居宅介護支援事業所・訪問看護ステーション・病院・薬局など1万か所

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