【コラム】ホスピス住宅とはどのような施設?
近年、「ホスピス住宅」という言葉をよく耳にするようになりました。
ホスピス住宅とは、おもに末期のがんや難病を患っている方が入居され、ご自宅に近い環境で終末期を過ごすための施設です。
施設数は年々、増加傾向にあり、あいらいふ入居相談室でも、多くのお問い合わせをいただいています。
本コラムでは、ホスピス住宅について、一般的な有料老人ホームとの違いやかかる費用、入居が可能な方の条件などを解説します。

ホスピス住宅の特徴
ホスピス住宅は、末期のがんや難病を患っている終末期の方に向けて、治療に対する苦痛を和らげ、自分らしい生活を送っていただくための「緩和ケア」を提供する施設です。
医療従事者による医療用麻薬を使用した疼痛コントロールや、介護職員による身体介助などでご本人の身体的・精神的な苦痛を和らげ、穏やかに、そして最期まで能動的に暮らすことを目指します。基本的に、疾病の種類や医療行為の内容、年齢による入居制限はありません。
緩和ケアに似た言葉で「ターミナルケア」がありますが、こちらは回復の見込みのない病気や老衰を抱えた方に対して、痛みやストレスを伴う延命治療をせず、苦痛を取り除いた状態で終末期を迎えていただくための医療、看護、介護を差します。
一般的なホスピス住宅のほか、ホスピスプランのある有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅、高齢者向け賃貸住宅など、施設のタイプはさまざまです。
ホスピス住宅のメリット
ホスピス住宅は、
①病院のように医療行為を受けられる
②介護施設のような見守りを受けられる
③自宅のような居心地のよさがある
という、3つの場所の“いいとこ取り”をした施設です。
医師、看護師、薬剤師、介護職員、ケアマネジャー、ソーシャルワーカーなど、地域のさまざまな職種が連携して、ご入居者のQOL(Quality of Life:生活の質)を支えます。
ご入居者には外出や外食、ご家族とともに過ごす時間など、人生の最期を比較的自由に設計できるメリットがあります。
ホスピス住宅の費用
ホスピス住宅の医療的ケアは、外部、もしくは併設された訪問看護ステーションを利用する形で提供されます。
一般的に、要介護認定を受けている方が訪問看護を利用する場合は、介護保険が適用されますが、利用回数が多くなると、すぐに介護保険の利用限度額に達してしまいます。
しかし、厚生労働大臣の定める「特掲診療料の施設基準等別表第七に掲げる疾病等」(いわゆる別表第7)に該当する疾病であれば、週4日以上の訪問看護が医療保険で利用できるようになります。

本来、医療保険による訪問看護は週3日までしか適用されませんが、別表第7に該当する場合は、週4日以上の訪問看護、さらに、1日に複数回の利用も保険適用となります。このため、ご家族の費用負担は大幅に軽減されます。
該当する疾病によってホスピス住宅に入居された方は、介護保険と医療保険を併用することになりますが、それぞれに自己負担の上限額が設定されています。また、「難病法」に定められた指定難病として、医療費助成の対象となるケースもあるため、該当する方は申請するとよいでしょう。
有料老人ホームとホスピス住宅が提供するサービスの違い
一般的に、有料老人ホームに入居されるのは、介護を必要とされる方や、自立の状態でも日常生活に不安がある方です。施設では食事や入浴、トイレなど日常生活の介助が行われます。
対してホスピス住宅では、おもに緩和ケアが提供されます。病気による耐え難い痛みを緩和するためには、看護師による医療用麻薬を利用した疼痛コントロールが欠かせません。ほかにも、在宅人工呼吸器や経鼻経管栄養など、一般的な有料老人ホームではほとんど行われない、高度な医療的ケアが提供されます。
一般的な有料老人ホーム
食事や入浴、トイレなど、主に日常生活における介助がなされ、リハビリや食事の内容、レクリエーションなど、暮らしの質にこだわったケアが提供される。

ホスピス住宅
疼痛コントロールや在宅人工呼吸器、経鼻経管栄養など、一般的なホームではほとんど行われない高度な医療的ケアが提供される。

ホスピス住宅の課題
ご入居者とご家族にとって、さまざまな利点の多いホスピス住宅ですが、過去には難病の方への訪問看護が医療保険の適用を受けられる仕組みに乗じて、一部の事業者が過剰な医療ケアを提供したり、不正請求を行ったりする問題が報じられました。
このため、入居を検討する際は、地域のニーズをきちんと理解し、適切な運営を行っている事業者を選ぶ必要があります。
ホスピス住宅への入居をご検討されている方は
治療中の病院からホスピス住宅への入居をご検討されている場合は、病院のソーシャルワーカーに相談するのが一般的です。
退院後であれば、担当のケアマネジャーに相談するのがよいでしょう。お住まいの自治体の地域包括支援センターでも情報を入手することができます。
「さがしっくす」をはじめとするインターネットの施設検索サイトを活用して、ご自身で希望の条件に合うホスピス住宅を探すことも可能です。
もちろん、あいらいふ入居相談室でも、皆さまの施設探しを経験豊富な相談員が中立公正な立場でお手伝いします。ご相談、ご見学同行はすべて無料です。どうぞお気兼ねなくお声がけください。