【ソーシャルワークの現場から-支援連携の輪-】[神奈川]クローバーホスピタル / 医療ソーシャルワーカー・林 航平 氏

医療ソーシャルワーカー・林 航平 氏
medical social worker / Hayashi Kohei
患者さんの一番近くで 心の通う支援を
ご自宅で過ごす患者さんを支える、地域医療の拠点「在宅療養支援病院」に医療ソーシャルワーカー(以下、MSW)として勤務する林航平さん。
超高齢社会になくてはならない同病院の役割や、患者さんの思いに寄り添うソーシャルワークの実践について、お話をうかがいました。(聞き手:あいらいふ編集部、あいらいふライフコーディネーター・樋田 恵美)
地域の医療と暮らしを支える 在宅療養支援病院
■あいらいふ編集部(以下、あいらいふ):
林さんは現在、神奈川県藤沢市にある「クローバーホスピタル」の患者サポートセンターで、MSWとしてご活躍されています。同病院の特徴について、お聞かせください。
■医療ソーシャルワーカー・林さん(以下、MSW林):
クローバーホスピタルは、地域包括ケア病棟53床、回復期リハビリテーション病棟60床などを中心に173床を有し、藤沢、鎌倉、茅ケ崎といった湘南エリアの地域医療に貢献する「在宅療養支援病院」です。
ご自宅で過ごされる患者さんへ、訪問診療・看護を行っているほか、ご自宅やご入居先の施設で、体調が急に悪化された際の受け入れ(サブアキュート)にも対応しています。
また、急性期病院での治療を終えた方を、地域包括ケア病棟で受け入れ(ポストアキュート)、在宅復帰につなげる役割も担っています。病院内だけでなく「地域に数百のベッドがある」という意識で、地域医療に携わっています。
■あいらいふライフコーディネーター・樋田(以下、ILC樋田):
ご自宅も、受け持つベッドの一つということですね。在宅療養支援には、病院の内外で緊密な連携が欠かせない印象がありますが。
■MSW林:
私が在籍する患者サポートセンターには、現在、センター長の医師を筆頭に、MSW5名、入退院支援に携わる看護師4名、事務職4名、救急救命士が所属しています。
自分は、おもに地域包括ケア病棟のご相談を担当していますが、同病棟やセンター内での連携はもちろん、訪問診療部門の医師や看護師、回復期リハ病棟のリハビリ職、在宅療養を支える外部の医療機関や、ケアマネジャーとの連携も不可欠です。
カンファレンスには、多忙な合間をぬって訪問診療のスタッフにも参加してもらい、情報の共有に努めています。
当院では、入院部門と訪問診療部門が連携し、手を取り合って患者さんの在宅復帰を目指すという意識が、しっかり共有されています。それぞれに熱意があって、自分も頑張らなければと思わされますね。

人のために働く 母の姿を見て社会福祉の道へ
■あいらいふ:
林さんが、MSWを目指されたきっかけは?
■MSW林:
学生の頃から漠然と、人の役に立つ仕事をしたいなとは思っていましたが、いま振り返ると、母の存在が大きかったように思います。
母は、特別養護老人ホームや、デイサービスに勤めて、介護の仕事をしていました。祖父母の介護も短期間ですが、自宅で献身的に行っていて。本当の介護とはこういうものかと思わされました。
介護の仕事に就く前には、知的障がいのある子どものための福祉施設に勤めていたこともあるのですが、その頃から十数年が経っていても、「先生いますか」と、電話がかかってくることもあるんです。
そんな母親の姿を見て育つ中で、自ずと医療・福祉の仕事を視野に入れるようになりました。
■ILC樋田:
お母さまの、どのようなところを尊敬されていますか?
■MSW林:
とても優しいところですね。時間をかけて相手の話に耳を傾け、人のために動く。ごく自然にそうしたふるまいができるところに、影響を受けたと思います。
■あいらいふ:
林さんは大学を卒業後、福祉の道に進まれます。
■MSW林:
当初は、ケアミックス病院のPT科(理学療法部門)で、リハビリの支援職をしていたんです。その過程で、MSWという仕事の存在を知り、働きながら通信制の専門学校で勉強して、社会福祉士の資格を取りました。
■あいらいふ:
働きながら学ぶ上でのモチベーションとなったのは、どのような点ですか?
■MSW林:
まず、病院での仕事そのものが楽しかったというのが一番ですね。
理学療法士(PT)さんや看護師さん、多くの方に支えられながらの経験でしたが、患者さんやご家族はもちろん、多職種のチームの一員として、自分が周囲の人々の力になれるのでは、と感じたことが、MSWへの第一歩となりました。

“医療につながらない” 悩みに手を差し伸べる
■あいらいふ:
林さんが、患者さんやご家族と接する上で、心がけていることはありますか?
■MSW林:
患者さんやご家族が決められたことに対しては、できるだけ後押しをしたい。客観的には「リスクが高い」と言われるようなことでも、まずはご本人のお気持ちに寄り添う。その姿勢は、この仕事に就いた当初から変わらないと思います。
また、お話の内容だけでなく、話し方のトーンや表情をキャッチして、うまく言葉にできていない部分を汲み取ること、それを医師や看護師と正しく共有し、適切な対応につなげることを心がけています。
■あいらいふ:
多くの患者さんと接する中で、印象に残っているエピソードを教えてください。
■MSW林:
当院の患者さんには、“医療につながらない”悩みを抱えている方が、多くいらっしゃいます。
例えば、ご夫婦の二人暮らしで、ご主人の認知機能が低下していることはわかっているのに、奥さまが受診を勧めると怒り出してしまう。私たちがお会いするのは、ご主人がいよいよ動けなくなって、救急車で運ばれたとき。そんなケースです。
そういった場合、まずはご家族のお話を丁寧にうかがい、これまでの悩み、辛さを受け止めます。入院自体は大変なことですが、「ここからは、いろいろなお手伝いがあります。一緒に、これからを良い方向に向けていきましょう」と呼びかけます。
また、「これまでのことは間違っていなかったし、入院して医療につながったのは、奥さまがこれまで頑張ってこられたからです。本当にお疲れさまでした」とねぎらう気持ちをお伝えすることは、とても大切だと感じます。
あるケースでは、ご主人は自立度が高く、絶対に家に帰りたいとお考えでした。しかし、奥さまは心労が重なり、在宅での介護に不安を抱えていらっしゃいました。
最終的には、ご自宅に戻る判断をされたのですが、奥さまから「時間をかけて話を聞いてくれたことが、本当にありがたかった」と何度も、何度も言っていただいたときには、胸にこみ上げてくるものがありました。
■ILC樋田:
素敵なお話です。地域包括ケア病棟のMSWさんは、患者さんの生活再建に向けたサポートを担う側面がより大きいですね。林さんにぴったり合っていると思います。
■あいらいふ:
ご自宅に戻るのが難しい方のために、高齢者向け施設との連携も欠かせないと思われますが、あいらいふのような老人ホーム紹介業については、どのような印象をお持ちですか?
■MSW林:
私も当院に移ってきて日が浅いので、エリアをまたいでも信頼できる、紹介業者さんの情報量は頼りにしています。施設の特徴に加えて、リアルタイムでの空き情報をいただける点が、特に助かっています。
あいらいふさんは、いただいた資料のわかりやすさが印象に残っています。ご家族に見てもらうものとはいえ、私たちでは、この水準のものはなかなか揃えられないですね。
心を許し、頼られる存在に
◼️あいらいふ:
クローバーホスピタルに勤めて、林さんが思い描く支援ができている実感はありますか?
■MSW林:
はい。レスパイト入院※をはじめ、さまざまなご事情を抱えていながら、急性期の病院では入院を断られてしまう方の受け皿として機能し、医療へのアクセスと生活再建のお手伝いをするのが当院の役割です。
この病院に務めて、自分がしっかりとした伴走者の一人として、患者さんとご家族のお力になれることに、やりがいを感じています。
■あいらいふ:
最後に、今後の目標をお聞かせください。
■MSW林:
MSWとしてのキャリアは8年になりましたが、当院では1年目。在宅療養については知らないことも多く、まだまだ知見が足りないと感じています。
患者さんがご自宅でどのように生活されているのかを理解し、より信頼していただけるよう、病院の内外で、連携の輪を育てていきたいです。
また、当院では、地元のコミュニティカフェをお借りして、市民講座を開催するなど、アウトリーチ活動にも力を入れています。病気や介護に備えた情報発信や、未病対策にも積極的に取り組んでいきたいですね。
患者さんとは、関わる期間は限られますが、近しい存在として、心を許し頼ってもらえるMSWになりたいと思っています。患者さんとご家族のお気持ちに寄り添い、よりよい方向に進んでいただけるように力を尽くしていきたいです。
※介護者の休養を目的とした被介護者の短期入院

===取材協力===
医療法人篠原湘南クリニックグループ クローバーホスピタル
神奈川県藤沢市鵠沼石上3-3-6
取材・文:北林 あい / 撮影:坪田 彩
豊かなシニアライフのための情報誌『あいらいふ』編集部
【誌名】『あいらいふ』vol.182(2026年3月26日発行号)
【概要】初めて老人ホームを探すご家族の、施設選びのポイントをさまざまな切り口でわかりやすく解説。著名人に介護経験を語っていただくインタビュー記事のほか、人生やシニアライフを豊かにするためのさまざまな情報や話題を取り上げて掲載。
【発行部数】4万部
【配布場所】市区役所の高齢者介護担当窓口・社会福祉協議会・地域包括支援センター・居宅介護支援事業所・訪問看護ステーション・病院・薬局など1万か所