【ソーシャルワークの現場から-支援連携の輪-】[大阪]NPOあったかい手 / 介護支援専門員(ケアマネジャー)・成田 明美 氏

成田 明美 氏
care manager / Narita Akemi
寄り添いとチーム連携で、笑顔をつなぐ
大阪市中央区のNPOあったかい手でケアマネジャー(以下、ケアマネ)として働く成田さん。他業種から介護の世界へ飛び込み、デイサービスや訪問介護などの現場の経験を経て、ケアマネに。自らを「陰で支える存在でありたい」と、常にご相談者に寄り添い続ける成田さんが思う、チームでつなぐ支援とは。
幼少の頃の感謝の気持ちを胸に介護の道へ
■あいらいふ編集部(以下、あいらいふ):
最初に成田さんのご出身と、介護の道に進まれたきっかけについてお聞かせください。
■ケアマネ・成田さん(以下、CM成田):
大阪の岸和田で生まれ育ち、繊維会社に就職し、そこで15年ほど勤めていました。福祉とは無縁の世界に身を置いていましたが、「いつか自分も誰かを助ける仕事ができたら」という思いを抱き続けてきました。
その理由は、私が幼い頃に小児ぜん息を患っていて、夜中に発作を起こし、度々、家族もお世話になっていた近所のお医者さんへ運び込まれる経験をしたからです。そのとき、献身的に手当てをしてくださった医療関係者の方への感謝の気持ちは、今でも心に残っています。
しかし、人を手助けする仕事なんて「自分に務まるはずがない」と思い込んでいたため、なかなか一歩を踏み出せませんでした。
そんな中、結婚を機に退職し、時間をかけて考えているうちに「やはり、医療の現場で働きたい」という思いが再び沸き上がりました。そこで、まずはクリニックの受付スタッフの仕事を始めました。その後、リハビリ助手として働くかたわら、ヘルパーの資格を取得し、デイサービスや訪問介護の業務で5年余り経験を積んだ後、ケアマネとしての歩みをスタートさせました。
■あいらいふ:
これまでのキャリアの中で印象的なエピソードがあればお聞かせください。
■CM成田:
もともと高齢者の方と接するのが大好きで、毎日が楽しく、無我夢中で仕事に没頭しました。
今も私の支えになっているのは、当時107歳だったご利用者との思い出ですね。その方はもう耳もほとんど聞こえず、目もほぼ見えない状態でしたが、それでも私が挨拶すると、笑顔で応えてくださったんです。お茶やおまんじゅうを美味しそうに召し上がっている姿を見て、ご家族との関係の大切さや『一日一生』という言葉の意味を教わった気がします。
一方で、責任の重さを痛感するケースもありました。一人暮らしで認知症を患うご利用者さんでした。
担当するヘルパーさんから「食材の減りが早すぎる」「ご自身では開けられないはずの缶詰の空き缶が捨てられている」という報告を受け、ご利用者の自宅を訪問すると、見知らぬ人物が無断で居住していたんです。さらに、勝手に住民票まで移していました。
私も何度も現場へ足を運び、住民票の異動を粘り強く依頼したものの進展せず、最終的には警察と連携して、解決に導きました。
また、一人暮らしをしていたある女性が、自炊も入浴もできない状況にありながら、「絶対に施設には入りたくない」と頑なに拒絶していたケースが非常に印象に残っています。
入院がきっかけで、悩み抜いた末に施設への入所につなげましたが、後日訪ねると「楽しいよ。今は幸せやで」と満面の笑顔。その言葉に心から安堵しました。
それは、私自身の満足なのかもしれませんが、迷いや葛藤を抱えながら寄り添い続けた時間が、このように「これで良かった」と思える瞬間につながることがあるのだと実感しました。

■あいらいふ:
数々の困難を乗り越えてこられた、そのエネルギーの源はどこにあるのでしょうか?
■CM成田:
私の場合、介護を通じたさまざまな日常を振り返りながら、ご利用者の気持ちに寄り添うことを心がけています。とにかく、ご利用者が住み慣れた地域で、その人らしく生活できるように、共感して、その場の空気を共有することを大切にしたいなと考えています。ただ単に隣にいて寄り添うというよりは、同じ空間で、同じ気持ちになるというか…。そんな「感情の共有」が、私の原動力になっている気がしますね。
チームでつなぐ支援の輪
■あいらいふ:
ご家族に寄り添う姿勢に加え、成田さんが持つ「共感力」が、その信頼関係の強さを支えているのですね。
■CM成田:
そうであればいいなと思っています。ご家族にはまず「ここまで本当に頑張られましたね」という気持ちをしっかり伝えることを意識しています。そのうえで具体的な問題解決への道のりを一緒に模索していきます。
介護保険には限界もありますが、「この方法なら実現できるかもしれません」と、前向きに次のステップを考える姿勢を大事にしています。
もう一つの支えは「チームワークの力」です。先日、難病を抱えたご利用者を在宅で最期までお見送りした際、看護師や訪問入浴スタッフなど、関わるすべてのメンバーの思いが一つの方向を向いていることを肌で感じました。
介護に携わる複数の専門職が連携し、それぞれの強みを活かして協力することで、1+1が5や10にもなるような大きな力が生まれます。「チーム全員でこの方を支えている」という共通認識のもとで生じる一体感こそ、この仕事の醍醐味だと実感します。こうした団結力があるから、ご利用者やご家族との深い信頼関係が築けているのだと思います。
■あいらいふ:
長らくこの仕事を続けてこられた成田さんご自身は、ケアマネの役割をどうとらえていますか?
■CM成田:
基本的には「陰で支える存在」でいたい。現場は専門職の方たちにお任せし、私は一歩引いて見守る。それと同時に、スタッフの方々が働きやすい環境を整えることも大切な役割です。もちろん、いざというときは先頭に立って矢面に立つ。そんな黒子であり続けたいです。

共に学び、チームで支え続ける
■あいらいふ:
これからこの仕事を目指す方や、後輩たちに伝えたいメッセージはありますか?
■CM成田:
「何でも一人で抱え込まないでいてほしい」というのが伝えたいことです。この仕事には厳しい一面もあるものの、仲間たちと支え合うことで得られる喜びを実感できれば、もっと楽しさを見出せるはずです。
実際、私自身も始めたころは何もわかりませんでした。でも、安心して質問してほしいし、どれだけでも何度でも教えますと伝え続けています。この職に出会えたおかげで、こうした大切な考え方を持つことができたのだと思います。
■あいらいふ:
成田さんが叶えたい、今後の目標をお聞かせください。
■CM成田:
視野が狭くなりがちな「木を見て森を見ず」な状態にならないよう、常に全体を見渡せる視点を忘れないようにしたいと思っています。
昨年は障がい福祉支援の資格を取得しました。さらに先を目指して学びを深め続けています。介護の枠を超え、仲間との協力の力を信じながら、ご利用者がその人らしく過ごせる日々を共に目指し、力強く伴走を続けていきたいです。
===取材協力===
NPOあったかい手
大阪府大阪市中央区安堂寺町1-4-12ヴェルドール安堂寺201号
取材・文:山田 ふみ / 撮影:あいらいふ編集部
豊かなシニアライフのための情報誌『あいらいふ』編集部
【誌名】『あいらいふ』vol.182(2026年3月26日発行号)
【概要】初めて老人ホームを探すご家族の、施設選びのポイントをさまざまな切り口でわかりやすく解説。著名人に介護経験を語っていただくインタビュー記事のほか、人生やシニアライフを豊かにするためのさまざまな情報や話題を取り上げて掲載。
【発行部数】4万部
【配布場所】市区役所の高齢者介護担当窓口・社会福祉協議会・地域包括支援センター・居宅介護支援事業所・訪問看護ステーション・病院・薬局など1万か所