【ソーシャルワークの現場から-支援連携の輪-】[大阪] 四條畷介護支援センター / 介護支援専門員(ケアマネジャー)・高尾 浩史 氏

介護支援専門員(ケアマネジャー)・高尾 浩史 氏
care manager / Takao Koji
常に全力でぶつかり続け、その先に見えてくるもの
四條畷(しじょうなわて)介護支援センターでケアマネジャー(以下、ケアマネ)として活躍する高尾浩史さん。ご利用者一人ひとりに真摯に対応し、全力で支え続けている。冷静で落ち着いた印象を持つ一方で、秘めた情熱を抱きながら、真摯に仕事と向き合う高尾さんにお話をうかがった。
人生の転機は「ありがとう」と感謝されたこと
■あいらいふ編集部(以下、あいらいふ):
本日はよろしくお願いいたします。まず、高尾さんのご経歴と、ケアマネを目指したきっかけを教えてください。
■ケアマネジャー・高尾さん(以下、CM高尾):
私は、少年時代には、親にたくさん迷惑や心配をかけたと思います。ただ、スポーツが好きで、学生時代は長距離走の陸上選手として競技に打ち込んでいました。
進路を考える際、過去を振り返って「これまで多くの人に迷惑をかけてきた自分だからこそ、人を支える仕事がしたい」と思い、ケアに携わる仕事への興味を抱きました。
感謝される機会の少ない人生を歩んできた私にとって、「ありがとう」と言ってもらえるのは素直にうれしいと感じたことも、大きなきっかけとなりました。
大学卒業後は介護職として、デイサービス、特別養護老人ホームなど様々な施設で働きました。少し仕事に慣れてくると、特にデイサービスやショートステイでは、ご利用者と関わる時間や人数が限られている状況に、もどかしさを覚えるようになりました。
数年間の介護職の経験を通じて、もっと多くの人を助けることができないかと考え、ケアマネを志すことにしました。
1対1の現場のケアも大事ですが、より細やかに、奥深く、生活全般に踏み込んだ支援を、多くの人に届けたい。それができるのが、ケアマネだったのです。
心でぶつかり向き合う 高尾さんの「あきらめない支援」
■あいらいふ:
高尾さんがお仕事をされているなかで、大切にしているモットーはありますか。
■CM・高尾さん(以下、CM高尾):
「最後まであきらめないこと」ですね。私は、サッカー元日本代表選手の本田圭佑氏や、プロボクシング元世界チャンピオンの辰吉丈一郎氏が好きなんです。
本田選手の『人はどうせ死ぬんだから、やりたいと思うことをやったらいい』という言葉や、辰吉選手の『99%だめでも、あと1%ある』という考え方に影響を受けています。
どんなに困難な壁にぶち当たっても、残りの1%の可能性を信じて挑む。たとえ敗北しても、その理由を徹底的に検証して、必ず再挑戦します。学生時代、陸上選手として辛くとも一歩一歩あきらめずに足を進めてきた経験も、今の仕事につながっていると思います。

■あいらいふ:
ケアマネの仕事で「あきらめないこと」とは?
■CM高尾:
私たちの仕事を突き詰めると、ご利用者の望まれている生活はなんだろうと考え、挑み続けることが最大のテーマだと思うんです。ご本人が望まれている生活を送り、最期をどう迎えたいのか。真摯に寄り添って、全力で叶えたい。ただ、現実的に難しい面がたくさんあるので、それをひとつひとつクリアしていく必要がありますね。
■あいらいふ:
ご利用者との信頼関係はどのように築いていくのでしょうか?
■CM高尾:
その人の人生のプランは、その人にしか決められません。こんなふうに過ごしたい、こんなことをするのが好き、でも、この部分だけは助けてほしい……というように、細やかにご利用者の気持ちをすくい取る必要があります。
ご利用者には、やりたいことを存分にやって、考えていることを遠慮なく伝えてほしいので、私も全力でご利用者に向き合います。でも、あまりに真剣すぎて、時にはぶつかることもあるんですよ(笑)。
■あいらいふ:
高尾さんにとって、印象深い出来事はありますか?
■CM高尾:
余命を宣告されたことで、絶望に陥り、ご家族に対して暴力的な行為に及ぶようになってしまったご利用者の深刻な場面に急行したことがありました。「ご本人とご家族を傷つけるくらいなら、その怒りをすべて私に向けてください」と膝を突き合わせて向かい合い、最悪の状況を回避することができたのです。
今では「あの時、あなたが立ち向かってくれたおかげで今の自分がある」と感謝される関係になりました。私自身が全力で向き合っていけば、必ず相手にもその思いは伝わるんだということがわかった経験でした。
ご利用者には、思いをしっかりとぶつけてきてほしい。それがどんなものであっても、受け止める準備はしていたいなと思います。
介護職もご利用者も“自分ファースト”でいい
■あいらいふ:
現在は管理者という立場でいらっしゃいますが、スタッフには仕事に対する姿勢をどのように伝えていますか?また、介護職としてスタッフが長く働けるようにすることは、管理者としての手腕が問われる部分だと思いますが、いかがですか?
■CM高尾:
介護を志す人たちは、人と接することが好きな方が多いと感じます。ただし、あまりにも無理をすると、心身共に疲れてしまいます。ですから、部下たちに最初に伝えるのは、「自分が幸せでなかったら、他人を助けることは難しいよ」ということです。
心に余裕がなくなれば、周囲への気配りも困難になります。そのため、趣味を楽しんだり、家族との時間を大切にしたり、積極的に有給休暇を取得することで、自分のための時間を過ごしてほしいのです。まず何よりも、自分自身を大切にすることが大事です。
■あいらいふ:
ご自身のこれからのキャリアや、介護の枠組みの中で挑戦していきたい活動はありますか?
■CM高尾:
ここ数年、地域支援事業を通じて、住民の皆さんに介護に関するさまざまなお話をする機会が増えています。介護に関わる細かな内容というのは、実際のところ誰も教えてくれないことが多いものです。
例えば、各種介護施設の違いや、介護が必要になった際の生活費がどの程度必要になるかといった話、またそれらに関する個別相談ができる場づくりにも積極的に取り組んでいます。
なかでも、限られた年金の中で生活する以上、すべてをケアマネに丸投げしてしまうのは良くない、という点が最も伝えたい内容です。
また、最近よく耳にする「健康寿命」という言葉は、多くの方にとって関心の高いテーマかと思います。しかしながら、「介護」を自分事として捉える意識は、自分や家族に直面する状況が起こらないと湧きづらいのが実情です。
これからの時代は、単に健康寿命を延ばすだけではなく、より能動的に自分自身の人生のあり方を設計していくことが重要ではないでしょうか。
理想的な形としては、利用者の方々が「こうありたい」という希望や「ここだけサポートがほしい」という要望を共有することで、その思いを大切にしながらサービスを効果的に利用していただくことだと思います。
元気なうちに、自ら望む生き方をかなえるための人生設計を立てることは充分可能です。ケアマネにすべてを依存するのではなく、自発的に計画を練ることの大切さを、多くの方に伝えていきたいと考えています。

===取材協力===
医療法人徳洲会
四條畷介護支援センター
大阪府四條畷市雁屋南町27番-3号
取材・撮影:あいらいふ編集部 / 文:遠藤るりこ
豊かなシニアライフのための情報誌『あいらいふ』編集部
【誌名】『あいらいふ vol.181(2026年1月29日発行号)
【概要】初めて老人ホームを探すご家族の、施設選びのポイントをさまざまな切り口でわかりやすく解説。著名人に介護経験を語っていただくインタビュー記事のほか、人生やシニアライフを豊かにするためのさまざまな情報や話題を取り上げて掲載。
【発行部数】4万部
【配布場所】市区役所の高齢者介護担当窓口・社会福祉協議会・地域包括支援センター・居宅介護支援事業所・訪問看護ステーション・病院・薬局など1万か所