支援連携の輪

【ソーシャルワークの現場から-支援連携の輪-】[京都]居宅介護支援事業所 アミケア / 介護支援専門員(ケアマネジャー)・籾井 大 氏

介護支援専門員(ケアマネジャー)・籾井 大 氏
care manager / Momii Dai

「崖っぷちから、光へ」苦難を乗り越え、挑戦を続ける

京都市で居宅介護支援事業所「アミケア」を経営するケアマネジャー(以下、CM)籾井 大(もみい だい)さん。過去に味わった苦難を乗り越え、現在は介護の現場や地域の要となり、奮闘している。20代では就職に苦戦し、30歳で志したのが「介護」の領域だった。実務経験を積みながら介護福祉士の国家資格を取得し、独立した籾井さんにとって、挑戦の連続だったこれまでの経験についてお話をうかがった。

介護職としての奮闘と正規職員への道

■あいらいふ編集部(以下、あいらいふ):
籾井さんが介護の道に進まれたきっかけと、これまでのキャリアについてお聞かせください。

■CM・籾井さん(以下、籾井):
私は現在42歳で、介護の道に進んで12年目になります。大学卒業後は就職に苦戦し、30歳を機に介護業界へ進むことを決めました。母が福祉関連の仕事をしていたので、興味がありチャレンジしてみようと。

最初は特別養護老人ホームでのアルバイトからスタートしましたが、試行錯誤の連続でした。上司から「君の取り柄は、体が頑丈そうなところくらいだ」と言われるなど、厳しい評価を受け、自分の能力不足を痛感した時期もありました。
その後、転職を繰り返しましたが、何件目かの介護施設で、ようやく正規職員として務めることができました。

■あいらいふ:
正規職員になってから、仕事への姿勢やキャリアパスにどのような変化がありましたか?

■籾井:
とにかく、ひたむきに仕事に取り組みました。在職中に介護福祉士の資格を取得し、4年目にはCMの試験にもストレートで合格。意欲的にキャリアアップを目指すようになりました。ところが、資格は取ったものの、当時働いていた施設ではCMの席が空いておらず、結局は再度転職の道を選ぶことに。しかし運良く、一つ目の事業所で採用が決まり、CMとしてのスタートを切ることができました。

在宅ケアマネジャーとして開花した能力

■あいらいふ:
CMの仕事はいかがでしたか?

■籾井:
CMの仕事は、大きく分けて「在宅CM」と「施設CM」があるのですが、私は在宅CMを選びました。施設勤務と異なり、個人の力量が一層求められる職種です。当初は不安もありましたが、この職種に就いてから、仕事が非常にスムーズに進み、経験とともにスキルが順調に向上したと実感できるようになりました。評価基準である担当件数が個人の成果として明確に見えるので、自信とやりがいにつながり、自分の能力をより発揮できる環境を手に入れたという手応えがありましたね。

■あいらいふ:
籾井さんは、利用者の方からの評価も非常に高かったとうかがっています。その理由をどのように分析されていますか?

■籾井:
CMの仕事全般に言えることですが、ご利用者のご要望を真摯に受け止める「聞き上手」な姿勢がとても重要です。
私は、個人の生活スタイルに正解や不正解はないと考えています。ご利用者が「どうしたいか」という気持ちが、その方にとっての正解であり、それを尊重すべきだからです。

専門家の意見を押し付けるような姿勢になってしまうと、ご利用者との信頼関係は築けません。もちろん、こちら側の意見は伝えますが、最終的にはその方のお気持ちに寄り添うことを徹底した結果が、良い評価につながったのかもしれません。

自己資金での独立という選択 収入とキャリアの壁を越え、次のステージへ

■あいらいふ:
在宅CMとして順調に実績を積まれる中、独立を選ばれたのはなぜですか?

■籾井:
自分の成果や能力を、直接事業の成長や収入に結び付けたい、という思いが強くなったからです。当時の組織では、どれだけ高い実績を上げても、昇給や報酬への反映は限定的でした。自分の仕事の価値をより合理的に追求できる環境が、他にあるはずだと感じました。
また、このまま組織で働くことに限界を感じていたことも理由です。

■あいらいふ:
事業所名である「アミケア」には、どのような意味が込められているのでしょうか?

■籾井:
「アミケア」と言う法人名は、「友達」や「仲間」を意味する「アミーゴ」と、「ケア」を組み合わせた造語です。関係機関の皆さんが「仲間」となり、ご利用者とご家族を一緒に支え合う、という思いを込めて名付けました。

独立当初からのビジョン 事業拡大への確固たる意志

■あいらいふ:
設立当初から、小規模な居宅介護支援事業所のまま、運営を続けるつもりはなかったそうですね。

■籾井:
はい。最初から、他の介護サービスを併設しながら展開するというビジョンをもって事業を続けてきました。
「起業するならリスクを恐れず、大きな目標を持つべき」と考えるからです。
安全運転を望むなら、サラリーマンでいる方が合理的でしょう?
現在は事業所の経営状況を安定させることを優先する段階ですが、通所介護などの導入も視野に入れています。

■あいらいふ:
最後に、この業界で働いている方、働くことに迷われている方へのメッセージをお願いします。

■籾井:
介護業界は、外からはネガティブな側面を語られがちですが、キャリアアップの道筋が比較的明確に用意されているのが大きな魅力です。
介護福祉士、CMと順に資格を取得していくことで、最終的に主任CMまで到達することができます。主任CMになれば、施設の管理者や地域包括支援センターのセンター長など、多彩なキャリアップの道のりが開けます。
また、CMは年齢を重ねてからも働き続けられるため、安定したキャリアを目指す方には非常におすすめできる分野だと思います。
目の前の仕事に淡々と取り組み、挑戦のタイミングが来たら、しっかりと踏み出して挑むこと。それが、未来を切り開く鍵になるはずです。

===取材協力===
アミケア株式会社 居宅介護支援事業所「アミケア」
京都府京都市右京区西院平町25
ライフプラザ西大路四条7階

取材・撮影:鈴木孝英 / 文:山田ふみ

豊かなシニアライフのための情報誌『あいらいふ』編集部
【誌名】『あいらいふ vol.180(2025年11月27日発行号)
【概要】初めて老人ホームを探すご家族の、施設選びのポイントをさまざまな切り口でわかりやすく解説。著名人に介護経験を語っていただくインタビュー記事のほか、人生やシニアライフを豊かにするためのさまざまな情報や話題を取り上げて掲載。
【発行部数】4万部
【配布場所】市区役所の高齢者介護担当窓口・社会福祉協議会・地域包括支援センター・居宅介護支援事業所・訪問看護ステーション・病院・薬局など1万か所

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