あいらいふレポート

【知っトク「注目のトピック」vol.11】介護や家事に追われる子どもや若者に、行政の支援を。国会で成立した「ヤングケアラー支援法」とは?

2024年6月、家族の介護や家事に追われる子どもや若者、いわゆる“ヤングケアラー”を、国・地方公共団体が支援に努めるべき対象と明記した「改正子ども・若者育成支援推進法」が国会で成立しました。今回は、この「ヤングケアラー支援法」の内容をご紹介します。

課題解決に向け法改正が実現
ヤングケアラーを初めて定義

「ヤングケアラー」とは、本来は大人が担うと想定される家族の世話や家事を、日常的に請け負う子どもや若者のこと。背負わされる負担や責任の重さによって、学業や就職に影響が出てしまうこともあります。

2021年に行われた国の実態調査によると、ヤングケアラーの割合は、中学生のおよそ17人に1人に上るとされています。また、学校を遅刻や早退、欠席する割合も高くなるなど、子ども自身への影響が少なくないこともわかりました。

これらの活動に時間を取られ過ぎて、子どもたちが将来の夢をあきらめるなど、自分のことを後回しにしてしまわないよう、社会が目を向けなければいけません。

今回の法改正では、ヤングケアラーを「家族の介護、その他の日常生活上の世話を過度に行っていると認められる子ども・若者」と初めて定義。国や地方公共団体に対して、ヤングケアラーへの各種支援を行う努力義務を課しました。

具体的な支援内容としては、本人が担っているケアを、介護保険など各種外部サービスで代替していくほか、日常的なケアから離れた息抜きの機会や、同じ立場の人たちが相談し合える機会を作るなど、必要な支援の実施体制を整備するよう要請。

また、18歳未満の子どもに対しては、市区町村の「こども家庭センター」などでサポートプランを作成し、包括的・計画的に支援することを求めました。

このほか、支援に際しては、本人やご家族の抱える心情に十分配慮するほか、国民の理解の推進、調査研究、人材育成など、支援のための下地づくりにも留意するよう求めています。

ヤングケアラー支援
ケアマネらの役割は?

ヤングケアラーの中には、要介護や認知症などの事情を抱えたご高齢のご家族を、主介護者である親に代わって子どもや若者が介護しているケースも多く存在します。

介護福祉分野の従事者は、実はそのようなヤングケアラーの発見や、関係機関との連携、当事者への支援において大きな役割を果たしています。

ケアマネジャーやホームヘルパーは、ご利用者のご家庭を訪問する機会が多く、比例してヤングケアラーに遭遇する機会も多くなります。

ご利用者とともにご家族全体を視野に入れ、普段、サービスを提供しているご家庭の中で孤立しているヤングケアラーの存在に気がつくことができれば、本人やご家族との対話のほか、お困りごと・ニーズを把握して関係機関(教育、生活福祉、医療など)につなげるなどの支援が期待できます。

子どもたちの健やかな成長の機会を確保するため、既存の仕組みを最大限に活用しながら、さまざまな支援機関と連携し、効果的なヤングケアラー支援につなげていくことが大切です。

こども家庭庁「ヤングケアラーについて」
こども家庭庁では、ヤングケアラーの認知度向上に向けて、広報・啓発活動を実施しています。
https://www.cfa.go.jp/policies/young-carer

介護情報誌『あいらいふ』編集部
【誌名】『あいらいふ 』 vol.172(8-9月号)
【概要】 初めて老人ホームを探すご家族さまの施設選びのポイントをさまざまな切り口でわかりやすく解説。著名人に人生観を語っていただくインタビュー記事のほか、人生やシニアライフを豊かにするためのさまざまな情報や話題を取り上げて掲載。
【発行部数】4万部
【配布場所】市区役所高齢者介護担当窓口・社会福祉協議会・地域包括支援センター・居宅介護支援事業所・訪問看護ステーション・病院・薬局など1万か所

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