【ソーシャルワークの現場から-支援連携の輪-】[京都] 居宅介護支援・訪問介護こうめ / 介護支援専門員(ケアマネジャー)・松本 光正 氏

介護支援専門員(ケアマネジャー)・松本 光正 氏
Care manager / Matsumoto Mitsumasa
会って話して時間をかける 現場感覚を大切に
京都市の居宅介護支援事業所「こうめ」でケアマネジャー(以下、ケアマネ)を務める松本光正さん。「〝自分らしく生きる〟という願いを、最後まであきらめずに支える」を信念に、介護の現場や地域の要となり、奮闘している松本さんにお話をうかがった。
「答え」は自分の中にある それを引き出すのが仕事
■あいらいふ編集部(以下、あいらいふ):
本日はよろしくお願いいたします。まず、松本さんが考える、ケアマネという仕事について教えてください。
■CM・松本さん(以下、CM松本):
私たちケアマネの役割は、ご利用者の中にある「答え」を共に見いだしていくことにあります。一般的な物差しで、できる・できないや、良い・悪いといった価値判断を押し付けるのではなく、ご本人にとっての最善を見つけたいと考えています。
例えとしては極端ですが、散らかった部屋でタバコを吸い、お酒を飲みつつ、一日中野球観戦をして過ごすご高齢の方がいたとして、それがその方にとって満足できる日常であり、体調も安定しているのであれば、何も問題はないと感じています。それが「その人らしい暮らし」だとしたら、尊重すべきではないかと思いますね。
もちろん、医療的な視点で見れば、タバコやお酒は健康に悪いので控えるべき、という結論になるでしょう。そこには「人は少しでも長く生きるべきだ」という価値観が根底にあります。一方、介護の現場では、できる限りその方が望む生活を支えていくのが本筋です。
人が人をケアすることに「これが正しい」という「正解」はありません。たとえ第三者には測れないような価値観から生まれる「答え」であっても、一人ひとりに「正しさ」があります。
実際に会ってご利用者の言葉に耳を傾け、時間をかけて向き合う中で、その方が心から望む生活の姿が自ずと見えてきます。それを一緒に考え、そっと寄り添い、一緒に「答え」を探していく。このプロセスこそが私たちの役割だととらえています。
■あいらいふ:
実際にこれまでケアマネとして関わってきた方々には、どのような願いがあって、どう叶えてきましたか?
■CM松本:
ある時、認知症が進んだ独居の高齢女性から「どうしても家で暮らしたい」と強く訴えられました。ご家族や関係機関からは施設入所が妥当と判断され、支援の調整は難航しました。混乱や暴言もあって、「在宅は無理では」という空気が流れていたんです。
でも私は、ご利用者のその一言を信じることを選びました。確かにリスクはある。でも、それを上回る“その人らしさ”が家での生活にはあると思ったんです。だから、これがこの方の「答え」なのではないかと思いました。
そこで、訪問介護・訪問看護・主治医との連携に加え、地域の人々の協力も得ながら、暮らしを支える体制を一つひとつ組み立てて行きました。時間はかかりましたが、やがてご本人は以前のような混乱を起こすことも減り、感謝の言葉を伝えてくれるようになりまた。そして、自宅で穏やかにその人生を全うされたのです。
ありがとうと笑ってくれた、最期の顔が忘れられません。

難題を解決するために 学ぶことを止めない
■あいらいふ:
松本さんの調整能力の高さは、ケアマネとしての豊富な経験によるものでしょうか?
■CM松本:
ケアマネとして重要なのは、多くの状況や事例に対応できるように、「選択肢」、つまり「カード」をたくさん持っていることだと思います。場面に合わせて「こういうときにはこれを」と選べる手札が多ければ多いほどいいですよね。
持っているカードの中から適切なものをいくつか選び出し、ご利用者の前に提示して、その中から一緒に最適な選択肢を決めていくことを心がけています。 どれだけ目の前の悩みや困りごとを解決したくても、それに対応できるカードがこちら側になければ、力になれないこともあります。
だからこそ、日々さまざまな事例を学び続けていますし、相手の気持ちに寄り添う力を磨いています。
たぶん、私は何かを知りたいという探求心が強いタイプなんだと思います。わからないことや自分ができないことに直面するのが苦手だからかもしれません。好奇心旺盛なので、医療関連の研修に積極的に参加して学び続けています。幅広い知識を得ることで、介護職として提供できるサポートの幅も広がっています。
もし余命1年というご利用者がいらっしゃる場合、私は医療専門職ではないので、「延命」を直接的に支えることはできません。ただ、ケアマネとして「その限られた時間を少しでも皆で楽しく過ごせるように」といった形で、何か“できること”を見つけ、そういった面で手助けをすることができるのです。
■あいらいふ:
松本さんにとって、ケアマネは「天職」だとお感じになりますか?
■CM松本:
正直なところ、「自分はこの仕事に向いていないかもしれない」と感じることもあります。実際、「これはあくまで他人の人生」と、どこかで割り切らないとやっていけない部分もあるんですよ。
この姿勢がドライだと思われる方もいるかもしれませんが、適度なバランス感覚として大切だと思っています。
ご利用者と深く関わる立場として、行動や考えを過度にコントロールしないよう、常に自分を律しながら向き合うことを大切にしています。
ご利用者に対して指示を出したり、過度に操作しようとする姿勢は、良くありません。「ああしなさい」「こうしなさい」と命じるものではないのです。
私たちケアマネは、責任を負う立場にはあるものの、他者の選択に対して最終的な決定権を持つわけではありません。
だからこそ、ご利用者それぞれが「どう生きたいのか」という、その人にとっての「答え」を共に見つけることが私たちの役割だと考えています。
決定権はありません。そのことを心に留め、これからもその人がどのように生きたいのかという「答え」を一緒に探し続けています。
===取材協力===
居宅介護支援・訪問介護 こうめ
京都府京都市右京区西京極西池田町13-2 林ビル202
取材・撮影:鈴木孝英 / 文:遠藤るりこ
豊かなシニアライフのための情報誌『あいらいふ』編集部
【誌名】『あいらいふ vol.181(2026年1月29日発行号)
【概要】初めて老人ホームを探すご家族の、施設選びのポイントをさまざまな切り口でわかりやすく解説。著名人に介護経験を語っていただくインタビュー記事のほか、人生やシニアライフを豊かにするためのさまざまな情報や話題を取り上げて掲載。
【発行部数】4万部
【配布場所】市区役所の高齢者介護担当窓口・社会福祉協議会・地域包括支援センター・居宅介護支援事業所・訪問看護ステーション・病院・薬局など1万か所