
自宅介護の処方せん ~専門家集団に聞いて歩けば~
― 医療ソーシャルワーク室だより ― Vol.2
レスパイト入院

早稲田大学 大学院 人間科学研究科 博士後期課程 ・ 医療ソーシャルワーカー
影山康博
早稲田大学人間科学部卒業。アメリカ合衆国にて大学院正規留学。早稲田大学に在籍する一方、救急医療機関の医療ソーシャルワーカーとして勤務。主たる研究テーマは、急性期医療機関におけるMSWと退院支援看護師の協働促進。日本医療マネジメント学会、日本看護福祉学会、日本保健福祉学会に所属。社会福祉士国家資格を保有。日総研出版発行の隔月刊誌、『地域連携 入退院と在宅支援』でも連載原稿を執筆中、監修も行う。
「レスパイト入院」という言葉やその意味は、一般的にはそれほど広く知られていないと思います。この入院は、自宅介護を行うご家族に、休息や息抜きを提供することを目的としています。また、ご家族が傷病を患ったときや、冠婚葬祭など何らかの用事があるときも一時的にフォローします。
私が日常的に連携・協働する医療機関で見ると、レスパイト入院を積極的に行っている病棟は、地域包括ケア病棟や療養病棟が多いです(すべての医療機関で行われているわけではありません。また、他種の病棟で行われていることもあります)。
受入れ条件は、医療機関によって違いがありますが、大まかには、「医療行為が必要(注1)」「病状が安定」「介護が常時必要」「退院先が自宅または居住系介護施設等」「介護保険によるショートステイが利用困難」などです。入院期間は、2週間以内のところが多いです(これ以外もあります)。
介護疲れ、介護不能、介護放棄の予防につながる
私は、レスパイト入院の利用が、退院後の近い将来に必要または有効と考えられる場合、急性期医療機関入院中に、レスパイト入院やそれを積極的に行う医療機関・病棟に関して、ご家族にわかりやすく説明しています。レスパイト入院については、患者様やご家族、医療・福祉・保健・介護関係職種の方々に、もっと知っていただき、うまく活用していただきたいです。
毎日忙しく介護に専念し、自身の時間もほとんどもてず、希望などはもてないと、心塞いでいる方はたくさんいらっしゃいます。レスパイト入院の適時適切な活用は、自宅介護を行うご家族に、きっと、安らぎとともに希望を届けます。こうした安らぎと希望は、介護疲れ、介護不能、介護放棄の予防につながるものであり、また、患者様とご家族のご自宅における生活の質を向上させるものと考えます。
(注1)人工呼吸器を使っている方、気管切開をしている方、胃ろうを造設している方、点滴、経鼻経管栄養、医療用麻薬管理、褥瘡(じょくそう)処置、痰(たん)吸引を必要としている方など。
※月刊あいらいふ2017年11月号を再掲載したものです。
2017.11 あいらいふ 掲載
撮影: 近藤豊