
私の「介護・医療記事」の読み方 Vol. 41
〈特別編〉介護情報を伝える上で、どんな点に注意を払っているのか?
「認知症の高齢者を介護する方の食に関する困りごとを可能な限り解消したい」

女子栄養大学出版部
次長 編集課課長
関 純子
兵庫県姫路市出身。大学卒業後、京都にて学術書系出版社に勤務。上京後、女子栄養大学出版部に入職。管理栄養士国家試験対策本をはじめ、栄養学、食事療法の本など、食と健康に関わる書籍編集に携わる。健康情報が溢れる中、大学出版部として真に役立つ情報提供を心掛けている。
日本歯科大学の菊谷武先生が、介護者の悩みに応える
例えば、認知症の方がなかなかごはんを食べてくれないという場合。料理の皿数が多いと、それぞれが食べ物だと認識できないのかもしれません。おかずをワンプレートにまとめてあげると問題なく食べられることもあります。
『認知症「食事の困った!」に答えます』では、日本歯科大学口腔リハビリテーション多摩クリニック院長の菊谷武先生が、訪問診療先などで実際に見聞きしたケースをもとに、こうしたアドバイスをQ&A形式で紹介しています。
「食べてくれないには、必ず、理由があるものです」
介護する側には、「どうして?」と感じられるような行動も、認知症のご本人にとっては理由がある。それがわかれば困りごとを解決できます。
この本は、理由があってもそれを伝えられない方々、食べる時に困っていることを表現できずにいる方の視点に立ち、その思いを代弁したいと願い、つくりました。それによって介護する側とされる側が互いに優しくなれるのではと思ったのです。介護の本は、たくさんありますが、私達、女子栄養大学出版部は、食に関するテーマを中心に扱っていますので、認知症の高齢者を介護する方々の悩みを、食の面で可能な限りフォローできればと考えました。
イラストを豊富に盛り込み、絵本のようにパラパラと見てわかりやすい本にすることも心掛けました。深刻になりがちなテーマだからこそ、ほのぼのとしたテイストのイラストを使い、色合いも優しくしました。
食べることは、人生の大きな楽しみの1つです。ちょっとした工夫によって、食べる人にとっても介助する人にとっても、楽しい食事の時間を取り戻すことができるなら、とても嬉しく思います。この本に詰まったたくさんの工夫やアドバイスが、1つでもお役に立つことを願っています。
※月刊あいらいふ2019年9月号を再掲載したものです。
撮影: 坪田彩