
私の「介護・医療記事」の読み方 Vol. 31
〈特別編〉介護情報を伝える上で、どんな点に注意を払っているのか?
「施設向けの『ソフト食』の調理法を『家庭でできる』というコンセプトでアレンジしたレシピ集です」

株式会社河出書房新社
編集第三部部長
谷口亜子
数社の出版社で若者向けの雑誌編集をした後、2000年、河出書房新社へ。主に料理、手芸、健康関連の実用書のほか、タレント本、シルバー川柳などのユーモア本など、様々なジャンルの書籍編集を手掛ける。
新聞記事を読んで、「人のためになる本」ができると直感した
食べ物を噛んだり、のみ込むことが困難な高齢者でも安心しておいしく食べられる「高齢者ソフト食」のレシピ集『家庭でできる高齢者ソフト食レシピ』は、2003年の刊行以来18刷5万部と、この種の本では異例のロングセラーとなっています。企画の発端は、「高齢者ソフト食」の考案者である黒田留美子先生が、老人介護施設でこの画期的な食を実践されていることを紹介した新聞記事です。食べる喜びがあることで、入居者の心身の状態が目に見えて改善されているという記事を拝見し、「人のためになる本」ができると直感しました。ただ、元々の先生のレシピは施設全体で提供するためのものだったので、アレンジを加えて「家庭でできる」というコンセプトのレシピ集にしたいと考えました。
「簡単に手に入る食材で、高齢者の誰もが好きな料理をつくる」
制作には、実用書の編集経験が豊富な編集プロダクションが、タイトな予算にもかかわらず、「世の中に必要とされている本だから、ぜひ、やりたい」と協力してくれました。メニュー選びの目安になる便利なアイコンを各レシピに付けることやニーズからレシピが探せる逆引きインデックス、「高齢者ソフト食」のわかりやすい冒頭説明などは、その制作会社とともに工夫をして編集しました。
気を配ったのは、介護している方も中高年であることを考慮し、文字を大きくしたこと。また、食べる喜びから遠ざかって元気をなくしている高齢者のための本なので、写真もなるべくアップ気味のものを大きく配置して、「おいしそう」であることがストレートに伝わるようにしました。
簡単に手に入る食材を使い、高齢者の誰もが好きな家庭料理をつくれるレシピを厳選してまとめた定番の一冊なので、介護中の方に、ぜひ、ご活用いただければと思います。
※月刊あいらいふ2018年11月号を再掲載したものです。
撮影: 川畑里菜