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医療ソーシャルワーカーが、今、介護者に伝えたいこと

― 退院後、1日もはやく落ち着いた暮らしを取り戻すには? ―

「まず、患者様の現在の力、自助力を把握します。 その上で、家族が何を補えばよいかわかれば、 自然と退院後に必要な行動が見えてきます」

1910年に開設され、77年には、日本第1号の救命救急センターとして救急医療センターが発足したことでも知られる「日本医科大学付属病院」。この病院の患者支援センターの柴田将宏さんに、「退院後、1日もはやく落ち着いた暮らしを取り戻すには?」というテーマでお話を聞きました。
インタビュイー写真
患者様の生活を家族が支えることができれば、自宅での生活は最高のリハビリの機会になります。

日本医科大学付属病院

患者支援センター 主任

柴田将宏

2004年に日本社会事業大学卒業後、精神科の訪問看護に携わったのち、新東京病院勤務を経て、17年に日本医科大学病院に入職。患者支援センターで療養支援部門のMSWとして入院患者の退院支援などを手掛ける。

スムーズな退院に向けて、入院前から支援を開始する

 

 平成28年度(2016年)中に当院を退院された1万9000人弱の患者様のうち、1万1000人以上が60代以上の方です。 

 私達、医療ソーシャルワーカー(MSW)が手掛ける退院支援も高齢の方の事例が7〜8割を占めます。

 当院の患者支援センターでは、私を含めた7人のMSWが退院支援にあたっており、スムーズな退院に向けて、入院前の段階から支援をスタートさせる体制を整えています。

 患者様側にとって入院は、「よくなるため」のもので、治療後に起こり得る身体機能の低下や認知症の進行は想定しにくいかもしれませんが、入院に関する心配や不安を少しでもはやい段階で取り除くと同時に、退院に向けての支援を早期に開始するために、こうした試みをすすめています。

 

自宅に戻ることを不安視するご家族は少なくないが…

 

 退院後、自宅に戻ることをご家族が不安視されるケースは少なくありません。例えば、脳卒中や骨折などで急性期の治療を終えた後、ご家族が、すぐに自宅に戻ることへの不安から、リハビリ病院への転院を希望されることもよく見受けられます。

 ですが、こうした場合でも、ご本人の自宅での生活を、ご家族が支える協力体制を整えることができるのであれば、自宅で生活することが、逆に、実践的なリハビリになる場合もあります。

 よりはやい退院後の生活の安定を第一に考えるのであれば、退院前に、ご本人の身体の状態、ご家族の状況を洗い直してみるのもよいでしょう。

 

地域を巻き込んだ退院支援のあるべき構図とは?

 

「退院後に、ご本人の身体状態がどうなっていくのか」、そして、「悪化させないためにできることは何か」を、ご家族が患者様、ご本人と一緒に考えることが大切です。退院後の生活で最も重要なのは、患者様、ご本人の力、「自助力」です。そこで足りない部分をご家族が補い、さらに、それを地域の方が補い、最終的に、社会保障が補うというのが、理想的な形です。

 

 

患者様、そして、ご家族を取り巻く社会資源をしっかり把握する

 

 ご家族の役割は、患者様、本人の力を信じ、それを補うこと。

 こうした役割がわかれば、自然に、病気について調べたり、医師や看護師に相談したりするようになり、ネットや書籍から膨大な情報を得過ぎて、逆に混乱をするようなこともなくなるのではないでしょうか。

 さらに、地域包括支援センターをはじめとした介護を支えてくれる窓口の存在など、ご家族を取り巻く社会資源を把握しておくだけで安心感はまったく違ったものになります。

 退院後、一日も早く落ち着いた生活を取り戻すために必要なのは、何か。それは、ひと言で申し上げれば、知識を含めた「備え」に他ならないと思います。

 私達、MSWは、退院後の患者様にとって大事なものや幸せは何かをともに考えながら、「備え」のお手伝いをさせていただきます。

 

 

 

 

 

※月刊あいらいふ2018年11月号を再掲載したものです。

日本医科大学付属病院

所在地:東京都文京区千駄木1-1-5

診療科目:42科。循環器内科、神経・脳血管内科、腎臓内科、リウマチ・膠原病内科、血液内科、糖尿病内分泌代謝内科、消化器・肝臓内科、呼吸器内科、化学療法科、精神神経科など。

ベッド数:877床( 一般850床・精神27床)

開設:1910年

2018.11 あいらいふ 掲載

取材: 堀江令子 / 撮影: 近藤豊

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