老人ホーム入居において、「リハビリの充実」を求めるニーズは根強い。しかしながら、その要望を実現するために、どんなリハビリが必要であるかまではなかなか理解がおよびません。ここでは、疾病によって、どんな専門家のもとで、どのようなリハビリを受けるべきかを整理しました。

 

ホームのリハビリは、千差万別。入居者のニーズに合った所を選ぶ

「老人ホームのリハビリ」とひと口に言っても、理学療法士(PT)や作業療法士(OT)、言語聴覚士(ST)によるリハビリ、さらには「生活リハビリ」など、その内容は多岐にわたります。しかし、それぞれが実際に、どんなことを行い、どのような違いがあるのか、完全に把握しきれていない方も多いのではないでしょうか。

 

ご本人の疾病や機能障害の度合い、何を目指すかにより、必要なリハビリは異なります。リハビリはニーズに合ったものを選ばなければ、十分に効果が発揮されません。それぞれのリハビリが具体的に何を行い、どのような方に適したものなのかをまとめました。

 

ホームのリハビリにおいては、PTやOTといった専門家によるご本人の身体機能の評価がケアマネジャーに共有され、ケアスタッフによる生活リハビリの展開に反映されるのが望ましいあり方です。また、最も重要なのはご本人の意欲です。前向きに取り組む気持ちなしにリハビリは成り立ちません。ホームでの暮らしの中で、入居者の声なき声にケアスタッフが耳を傾け、それをケアマネジャーがプランに組み込めるかがポイントです。

 

PT、OT、ST、そして、生活リハビリ。その技能を100%享受するために、それぞれの専門領域を理解し最適なホーム選びをしてください。

 

「理学療法士(PT)」がいれば、損なわれた運動機能の回復に取り組むことができる

大腿骨頸部骨折などで入院すると、多くは退院後に回復期病院(リハビリテーション病院)、さらに老人保健施設に移ってPTのリハビリを受けることになりますが、期間が限られているため、十分なリハビリを受けることができない場合があります。

 

PT常勤のホームなら、ホームで暮らしながらPTによる個別リハビリを受け続けることができます。ただ、ホームのPTは人員が少ないため、リハビリ病院や老健並みの長時間、かつ高い頻度のサービスを期待するのには無理があります。

 

ホームの規模にもよりますが、PTによる個別リハビリは週1回、30分程度と考えてよいでしょう。補完的に、訪問マッサージや通所リハビリなどの外部サービスを併用しているホームもあります(みなしPT)。また、理学療法の観点では「これ以上リハビリを続けても完全な回復は見込めない」と判断されるケースもあります。こうした場合は、PTとは別のリハビリが必要となります。

 

有料老人ホームの「PT」によるリハビリとは?

身体機能を元通りに回復させることを目指してリハビリを行う

大別すれば、ケガや病気の発症によって損なわれた身体の機能を、リハビリによって「回復可能な状態」までにするのが理学療法です。ホームのPTは個別リハビリの他、一定期間でその効果を測定し、評価を行います。効果を測定し、評価すること、これが、実は最も重要です。

 

PTの入居者との関わり方を確認する

ホームによって、入居者とPTとの関わり方は様々(入居時のみ重点的に行う、特に必要な方のみ、評価・指導のみ)。事前に、そのホームのPTの行うサービス内容を確認したい

 

通所リハビリ(デイケア)は事前確認を

住宅型有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅では、ケアマネジャーと相談の上、サービスを利用できる場合がある

 

特に、こんな疾病の方に:
大腿骨頸部骨折・腰椎圧迫骨折・脳梗塞、脳出血などによるマヒの回復期

 

 

有料老人ホームの「作業療法士(OT)」「言語聴覚士(ST)」によるリハビリとは?

身体にマヒがあっても残った力でやりたいことをできるように導く「OT」と飲込みなどをサポートする「ST」

PTによるリハビリで完全な機能回復が見込めない場合、残っている機能を使ってやりたいことを実現するための訓練を行うのがOTです。例えば、脚を完全には動かせないけれど散歩がしたいという場合には、その希望に沿った補助具や訓練内容を選定し実現を支援します。老人ホームにおいては、最も必要性の高い領域の一つと言えるでしょう。

 

STがホームで行う代表的なものは嚥下(えんげ)訓練です。例えば、冷たい氷をなめることで嚥下反射を誘発する「アイスマッサージ」もその一つです。在宅では難しいOTやSTのサービスを受けることができるのは、ホームならではです。フラワーアレンジメントやアクセサリー作りなど、アクティビティとからめた作業療法が展開されています。

 

PTやOTはいずれも、ホームに配置される「機能訓練指導員」の位置づけなので、実態としてはPTがOTの領域の訓練を行うこともあれば、その逆もあります。

 

より自分らしい生活を取り戻せるようサポート

理学療法後、残存する能力を使って希望する動作を可能にすることが作業療法です。言語聴覚士は、言語機能、失語症や、摂食および嚥下機能、聴覚障害がある人に、機能維持・向上のための訓練を行います。

 

OTと入居者との関わり方を確認する

OTの役割は、「○○をしたい」という希望から、具体的な方法を提案して具現化すること。そこで、入居者、あるいは、ご家族は、明確に本人の旅行をしたい、華道を楽しみたい、自力排せつができるようになりたいなど「○○したい」という希望をホームに伝えることが重要になってくる

 

ST常勤は少ない

STのサービスを受けたい場合、ある程度、自宅からの距離は遠方になることは覚悟する。同様に、「認知リハビリ」を提供するホームはさらに少ない

 

特に、こんな疾病の方に:
脳梗塞、脳出血・失語症・誤嚥(ごえん)性肺炎(また、胃ろうの方など)

 

 

できないことだけを支援する「生活リハビリ」とは?

暮らしの中の動作一つひとつをリハビリとして行い自立を支援する「生活リハビリ」

加齢により身体能力が低下している高齢者全般にとって最も重要なのは、自立した生活のための支援です。「生活リハビリ」とは、そのような特別なプログラムがあるというわけではなく、生活の中の動作を、「その動作自体がリハビリになる」という意識を持って行うものです。

 

例えば、車イスを使っている人が、食事の際にケアスタッフの介助を受けながら食堂の椅子に移乗することもその一つです。車イスのままテーブルにつかず、あえて座り直すことで筋力や体の感覚の訓練になるのです。また、居室内のトイレまでは車イスを使わず歩いて行けるよう、トイレ介助の際にスタッフが手引き歩行で介助するのも生活リハビリの一環です。ケアスタッフがご本人の身体状態を適切に把握し、日常的にケアを行うホームという環境であるからこそ可能なリハビリと言えます。

入居に際しては、こうした生活リハビリがどのように行われているかも見極めのポイントとなります。

 

ホームの日常生活で行う動作が、そのままリハビリに

生活リハビリとは、立つ、歩く、座る、着替え、歯磨き、食事など、日常生活の中で行われる動作を適切に支援することにより、身体機能や生活能力の維持向上につなげるもの。ホームには可能な限り、具体的な身体状況を伝えるとよいでしょう。

 

特に、こんな疾病の方に:
加齢による身体能力の低下している方、高齢者全般