ご両親が入院中に認知症が発症、あるいは進行して、退院後の在宅復帰が難しくなり、急きょ、老人ホームを探さなければならない―。こうした場合の老人ホームの選び方のポイントをお伝えします。

 

入院中に認知症が進み老人ホーム入居へ。「選び方のポイント」は、3つ

認知症を患う人は年々増加しており、現在、65歳以上の高齢者の4人に1人は認知症、またはその予備群とされています。その中で、突然の入院加療をキッカケに認知症を発症したり、認知症が進行するケースも少なくありません。例えば、転倒による骨折で入院中、一時的にせん妄症状が見られたため薬物調整や身体拘束が行われ、その影響で認知症が発症・進行するといった事例です。入院患者に認知症がある場合、興奮したり同じことを繰り返し尋ねる、カテーテルなどを引き抜くといった行動・心理症状がよく見られます。

 

認知症の発症や進行で退院後の在宅復帰が困難となり、病院から直接、老人ホームに入居する場合、老人ホームの選び方には重要なポイントが3つあります。

 

まず「症状に見合ったホームか」。認知症の症状は人により様々です。入院中に表れた症状を把握し、医師による症状進行予測なども合わせてホームに伝え、症状に合ったケアを受けられるホームを選ぶことが大切です。次に「往診医の診療科目」。内科だけでなく、精神科や心療内科など、専門の医師の往診があるホームならより安心です。そして、「認知症対応フロアがあるか」。認知症が中・重度の入居者のためのフロアが設けられているなど、認知症の人にとって、過ごしやすい環境かどうかも重要なポイントです。

 

本人になり代わり、折に触れて「人生歴」を伝える

近親者の認知症に直面したとき、多くの人は「とまどい、否定」から「混乱、怒り、拒絶」の感情を経て「割切り」そして「受容」に至るという心理的プロセスをたどると言われます。

 

想定外の入院からホーム入居に至った時点では、ご家族の多くは受容とはほど遠い心理状態にあります。認知症という事実を認められず、つじつまが合わないご本人の言動を信じてホーム側の対応を疑い、トラブルが生じることも。ご家族とホームが信頼関係を築くには、相互のコミュニケーションを密にすることが不可欠です。ご家族が折に触れ、ご本人になり代わってその人生歴を伝えることで、ホームはご本人の行動の裏にある理由を推測し、適切に声をかけることができます。

 

ご家族とホームが協力することで、認知症を持つご本人を尊重し、その立場に立った「パーソン・センタード・ケア」が可能になるのです。

 

認知症の場合、「ホーム見学には、午後2時か、4時に行くべき」

昼食とティータイムの間の午後2時頃、あるいはティータイム以降、夕食前の午後4時頃は、ホーム見学の狙いどきです。一般的に、この時間帯はスタッフ交代があったり、ベッド上で生活している人の介助などのルーティンワークがあるため、見学で立ち入れる共有スペースでのスタッフの対応が最も手薄になる時間帯です。

 

この時間帯に、そこでどのようなケアが行われているかを見ておけば、平均的にはそれ以上のケアが行われていると判断でき、ケアの水準を的確に見極めることができます。

 

見学時の12個のポイント

  1. 「センサー」は導入されているか
  2. 「汚染された下着」の処理方法は?
  3. 廊下は見通しがよいか
  4. 往診医の診療科目を確認する
  5. ニオイ対策が可能な構造の建物か
  6. 同一階に個別浴槽があるか
  7. 個別にトイレ排泄を誘導しているか
  8. 入居者に対する言葉づかいを見る
  9. 「暗証番号パネル式」を導入するなど、安全対策がなされているか
  10. 家族が通いやすいホームであるか
  11. アロマテラピーを導入しているか
  12. 窓の開閉に工夫があるか

 

中・重度の認知症の場合、入居のご相談をためらう方がいます。こういうときこそ、ぜひ、ご相談ください。