病院では回復困難と言われても、希望は捨てたくありません
相談者の概況
お父様は、大動脈解離により脳にダメージを受け要介護5に。マヒが残ったため胃ろうを造設しましたが、せめて口から食べる生活を取り戻してほしいと、嚥下リハビリが受けられる老人ホームへの入居を強く希望されました。病院ではこれ以上の回復は見込めないという判断でしたが、一縷の望みを託し、言語聴覚士による嚥下リハビリを積極的に行っている老人ホームへご入居されました。
【困っていること】
・お父様が大動脈解離で心肺停止。脳にダメージを受け要介護5。
・マヒが残ったため胃ろうを造設した。
・せめて口から食事ができるようになってほしいと老人ホームで嚥下リハビリを希望。
エピソード詳細
お父様は、お母様と娘様の3人暮らしでした。突然、胸に激しい痛みを覚えて心肺停止となり救急車で病院に搬送。原因は大動脈解離でした。一命はとりとめましたが脳にダメージを受け、嚥下障害や言語障害、日常の動作も不自由で全てにおいて介助が必要となり要介護5に。リハビリ病院ではこれ以上の回復は見込めないと言われ、老健への入居も難しい状況です。
お父様の年齢は65歳。定年を迎えて第二の人生を謳歌しようと思っていた矢先のことで、心肺停止の前日まで元気だったため、娘様は急な変化を受け入れ難いご様子です。お父様は食べることが好きでしたが胃ろうを造設。娘様はせめて口から食事を摂れるようにと、言語聴覚士のもとで嚥下(えんげ)リハビリを高頻度で受けられる老人ホームを強く希望されました。
リハビリが充実した老人ホームは一般的に費用がかさむものですが、予算は潤沢ではありません。そこで、予算はオーバーしますが高頻度で嚥下リハビリを受けられる老人ホームへ入居して、1、2年集中してリハビリを行い、経過次第で予算内の別の老人ホームに移るプランをご提案しました。
見学に行った5つの老人ホームは、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士によるリハビリを受けられるのが特徴です。しかしながら、お父様の場合、リハビリをしても現状維持が妥当という見解の老人ホームが大半でした。その中で娘様の心を動かしたのは、「要介護5でも経口摂取を目指して全力で機能向上をサポートします」と、嚥下リハビリに前向きな老人ホームです。
この老人ホームは、週3回の個別リハビリを行う言語聴覚士と、研修を受けたケアスタッフが一丸となって嚥下リハビリに取り組み、経管栄養から経口摂取へと回復した実績も豊富です。地域の歯科医院と連携しVEテスト(嚥下障害の原因を探ったり現在の状態を観察したりするための嚥下内視鏡検査)も行っていて体制は万全です。また、退居率が高いことも特徴でした。通常、老人ホームで退居率が高いことは良しとしませんが、医療依存度の高い方がリハビリにより回復して退居するケースが多いと聞いています。
あいらいふ入居相談室では、今回のケースのように比較的若い方の入居相談も少なくありません。その場合、自立度が高ければ、自宅の延長のような暮らしができる老人ホームをご紹介しています。また、疾患がある場合は、その方のニーズに合わせて医療的ケアが整った老人ホームをご提案し、多様なケースへの対応が可能です。
選定ホーム
ホーム(1)
医療法人が運営する介護付有料老人ホーム。理学療法士によるリハビリに力を入れ、言語聴覚士による嚥下リハビリも行っている。食事がおいしく、アクティビティも盛ん。
ホーム(2)
閑静な住宅街にあり、24時間看護スタッフ常勤、重い病状の方でも受け入れ可能な介護付有料老人ホーム。言語聴覚士による嚥下リハビリあり。
ホーム(3)
24時間看護スタッフ常勤の介護付有料老人ホーム。理学療法士、作業療法士、言語聴覚士によるリハビリが受けられる。
ホーム(4)
24時間看護スタッフ常勤の介護付有料老人ホーム。クリニック併設で医療的に重い方でも受け入れ可能。理学療法士、作業療法士、言語聴覚士が常勤。食事やアクティビティにも力を入れている。
ホーム(5) ※入居ホーム
24時間看護スタッフ常勤でクリニック併設の介護付有料老人ホーム。歯科医院と連携し嚥下リハビリに力を入れている。言語聴覚士による週3回の個別リハビリに加え、それ以外の日は言語聴覚士の指導のもとケアスタッフが嚥下リハビリを担当。「口から食べる」を施設全体でサポートしている。
今回のポイント
・リハビリ病院や老健並みの嚥下リハビリができる老人ホームもある。
・嚥下リハビリをしたい場合、言語聴覚士がいる老人ホームを選ぶとよい。