暴力行為があっても受け入れる老人ホームはある

 相談者の概況

大企業のモーレツ社員だった80代のお父様は、定年退職後に認知症を発症し家族に暴言、暴力を振るうようになりました。問題行動があっても受け入れ可能で、かつ、かかりつけの心療内科医の往診ができる老人ホームはないかと相談を受けました。そこで、施設とは思えないほどの洗練された雰囲気で、オープンしたばかりでまだ入居者が少ない老人ホームへの入居を提案しました。

【困っていること】

・80代のお父様は認知症があり、家族への暴言、暴力がひどい。
・精神病院からの退院が決まっても、自宅に戻ってほしくない。
・プライドが高いので、自尊心を傷つけずに入居を説得する必要がある。

 エピソード詳細

認知症の80代のお父様は、同居するお母様への暴言、暴力がエスカレートして心療内科のある精神病院に入院しました。服薬治療で落ち着きを取り戻しましたが、再発の恐れがあるため自宅復帰は難しいと近所に住む娘様が判断し、老人ホームへの入居を検討することにしました。

精神病院の医療ソーシャルワーカー様からご連絡をいただき、娘様に話をお聞きすると、お父様は大企業のモーレツ社員で仕事一筋のサラリーマン人生を送ってきたそう。定年退職して仕事という生きがいを失って日がな一日ボーっと過ごす生活が続き、それが原因かはわかりませんが、ほどなくして認知症を発症。しばらくは緩やかに進行していましたが、数か月前から急激に症状が悪化したとのことでした。

娘様がお父様に老人ホームへの入居話を持ち掛けたところ、「年寄り扱いするな!仕事はどうするんだ!」と激高されたと言います。お父様は、ご自分がまだ現役のサラリーマンだと思っているような節がありました。

娘様に希望条件をお聞きすると、お父様の自尊心を傷つけないよう施設っぽくない老人ホームであること。かかりつけの心療内科医の往診が可能なこと。この2軸を優先した施設選びを重視されていました。

そこでこの2軸と、暴言や暴力があっても入居できる認知症ケアに定評のある3つの老人ホームを提案。その中でも、オープンしたばかりで、屋上庭園や最新機器を配したリハビリルーム、レストランのような食堂、オフィスの会議室のような多目的ルームなど、共用設備が充実した老人ホームを気に入ったようでした。また、長い年月が経ちすでに文化ができあがっている老人ホームより、これから築かれていく新しくオープンした老人ホームのほうが、プライドの高いお父様にあっているのではないかと判断されたようでした。

娘様がお父様を説得するにあたり、これまでのお父様の生活歴を考慮して語り掛けてみることを提案しました。すると娘様は、「退院後は新しい環境で生活をリスタートしてはどうかな」、「自宅は駅から遠いので、どこに行くにも便利な駅から徒歩圏内のマンションに移ってみたらどうかな」、「そこなら共用スペースで仕事の打ち合わせもできるし」と、根気強く語り掛けました。

すると、退院後にやりたいことを自ら話すようになるなど態度が軟化、表情にも明らかな変化が感じられました。娘様の説得と並行して、お父様が入院する病院に往診を交渉。この老人ホームと同エリアに、同じ医療法人の系列病院があることがわかり、そこからの往診なら可能とのお返事をいただきました。老人ホーム側に相談すると、「提携している協力医療機関ではありませんが、ご入居者様の病状を第一に考えましょう」と往診を快諾。前例の有無に捉われず、病院側も老人ホーム側も互いに歩み寄り「お父様とご家族のためなら」と環境を整えて、無事入居と相成りました。

今回、認知症による暴力行為を理由に受け入れNGとなった老人ホームもありました。しかしながら問題行動を隠して入居しても、最悪の場合、退居を余儀なくされお父様とご家族もそうですが、老人ホームにとっても不利益しかありません。今回のように現状を包み隠さず話していただくことが、最適な受け入れ先をご提案するうえでは不可欠です。老人ホーム選びは、ご本人とご家族、そして老人ホーム側との信頼関係が大切です。話しにくいことも、あいらいふ入居相談室を信頼して打ち明けていただいた娘様に感謝しています。

 選定ホーム

ホーム(1) ※入居ホーム
医療法人による運営で、24時間看護スタッフ常勤の介護付有料老人ホーム。見晴らしのよい屋上ガーデン、おいしい食事、充実したレクリエーションなど、施設と感じさせない洗練された雰囲気がある。

ホーム(2)
大手企業が運営する小規模な介護付有料老人ホーム。コンパクトでアットホームでありながらホテルのような品があり施設っぽさがない。認知症ケアの実績も豊富。

ホーム(3)
オープン10年目を迎える介護付有料老人ホーム。理学療法士が常勤し、2:1の手厚い人員体制でケアレベルが高い。ユニットケアを実施している。

 今回のポイント

・暴言や暴力があっても入居できる老人ホームはある。
・入居に際しては問題行動を隠してはいけない。あとで発覚すると退去もあり得る。