恐怖心と介護疲れで、父を引き取れる状態でない

 相談者の概況

認知症による暴言が顕著な90代の男性。恐怖を感じたご家族様が老人ホーム入居を検討しますが、「逃げ出してすぐに帰ってくるのでは」と心配しています。多くの老人ホームでは、入居者の安全を考慮してエントランスの鍵を施錠しているため、遠方にこだわらなくても心配ないことを説明し、老人ホームを提案しました。

【困っていること】

・90代で認知症の父を、近所に住む三女が通いで介護にあたっていた。
・父の暴言がひどくなり、治療とレスパイトを兼ねて精神病院に入院。
・家族は恐怖心と介護疲れで、退院後、父を引き取れる状態でない。

 エピソード詳細

奥様と二人暮らしの90代のお父様は、1年ほど前に認知症を発症し要介護1になりました。近所に住む三女様が通いで介護をしていましたが、お父様の暴言がひどくなる一方で家庭崩壊寸前に。治療とレスパイト(在宅介護をする家族のための休息)のために、お父様は精神病院に入院。退院が決まっても、ご家族様はお父様を家に戻すつもりはないということで、病院の医療ソーシャルワーカー様からご相談をいただきました。

お母様も三女様も介護疲れで、お父様と距離を置くことを希望し、遠方の老人ホームを検討したいとおっしゃいます。「健脚なお父様が老人ホームから逃げ出さないか?」「今度は暴力も振るわれるのではないか?」と、恐怖心をジワリと感じ、すぐ帰ることができる距離にある老人ホームは絶対に避けたいと考えています。

不安に思うのはごもっともですが、老人ホームでは、エントランスに事務スペースを配置することで、スタッフの見守りによりご入居者様が不意にいなくなることを防止しています。また、多くの老人ホームでは、認知症のご入居者様の安全を考えて、エントランスを施錠し、その開閉をスタッフが管理しています。

このように、どこの老人ホームも不意に外出することがないように安全対策がされているので、ご家族様が心配されるようなことはないとお伝えしました。その上で、緊急時のことを考えれば近隣のほうが望ましいことと、距離を置くことで関係が改善することがよくあることなどをご説明し、「自宅に近い老人ホーム」と「自宅から遠い老人ホーム」をご提案しました。結果的に選ばれたのは、「自宅から遠い介護付有料老人ホーム」でした。

施設長が認知症に対する理解が深く、ご家族の悩みや苦労話に対して親身に傾聴し、相談に応じてくださったのです。さらに、老人ホーム全体が認知症ケアに力を注いでいる点も決め手になりました。

唯一の懸念材料が、お父様の入居拒否でしたが、三女様が老人ホームに移る話をしたところ、本人面談で施設長と会ったときの印象が良かったようで、「あのやさしい人ともっと話をしたい」と、すんなりと受け入れてくれたそうです。今ではお父様も老人ホームの生活に慣れ、落ち着いた暮らしを送られているそうです。

 選定ホーム

ホーム(1)
認知症ケアに特化し、精神科医の訪問診療がある介護付有料老人ホーム。レクリエーションが豊富。月額利用料は予算内。同じ市内。

ホーム(2)
(1)と同系列の介護付有料老人ホーム。家から一番近い。開設したばかりで建物もきれい。

ホーム(3)※入居ホーム
施設長が認知症に理解があり、認知症ケアも充実。アットホームな雰囲気の介護付有料老人ホーム。家から遠い。月額利用料は予算内。

 入居したホーム

認知症のケアに力を入れていて家庭的な雰囲気。家から遠い。

 今回のポイント

・認知症の介護に限界を感じ始めたら早めにプロに相談した方がいい。
・老人ホームによって認知症の受け入れ態勢は異なる。
・入居をスムーズに促すためには、認知症の方と施設との相性が大事。
・多くの老人ホームでは、認知症の入居者の安全を考えて、エントランスを施錠。