見学後「お母さんの認知症の症状がおかしい」
相談者の概況
自宅で仕事をしながら認知症のお母様を介護している息子様。親思いですが、リゾート地を希望したり、本人判断を求める見学同行を要望したりと、認知症の性質を考えると、その孝心はピントが外れ気味。強行した同行見学後のお母様は、認知症の症状が悪化してしまいます。現在は孤独感から生じる不安を軽減できる多床室施設で、見守られながら落ち着いて暮らしています。
【困っていること】
・昨日のことは、もう忘れている。トイレの失敗と徘徊もある、お母様は認知症。
・一緒に老人ホームを見学後、お母様に不穏な症状が現れた。
・実は、認知症のことをよくわかっていないかもしれない。
エピソード詳細
息子様はご自宅で仕事をしながら、認知症のお母様を介護しています。お母様はトイレの失敗や徘徊の他、記憶の持続が短く、昨日のことは忘れてしまいます。そんなある日、排泄物でお客様への納品物を汚してしまいました。
今後を心配し、ケアマネジャー様を経由してご相談くださいました息子様は、暖かく景観の良いリゾート地や保養地を希望。近隣ならば面会に通いやすいところがいいが、予算はタイト、抑えたい。
年中温暖な避寒地は、抜けるような青空が広がり、お望み通りのゆったりとしたリゾート感にあふれていますが、かなり遠方。保養地は、温泉街らしいのんびりとした雰囲気と海山の眺めに心安らぐのですが、都心から離れても、それほど安価ではありません。
相談員は、ご自宅近隣で予算に収まりそうなところも合わせて選定し、ご案内しました。
すると、息子様から「母が気に入る施設にしたいので、近くなら、どうしても見学に連れていきたい」とご要望が。相談員は認知症の特性から、ご本人の見学は慎重に、と助言しますが、強い希望は変わりません。
見学はつつがなく進みました、が、お母様がぽつり。
「こういうところに入らなければいけないの……?」
翌日から、以前まで認識していたものがわからなくなり、会話も成立せず、驚く息子様。なにより不潔行為が悪化し、途方に暮れてしまいました。昨日の見学は忘れてしまっても、その時に感じた不安が残り、症状に反映されているようです。
認知症の方は、短期記憶しかなくとも、昔の記憶の中で安心して暮らしていることが多いもの。日常と異なる刺激が生じる日や環境を変える際は、十分な注意が必要です。
入居した施設は見守りと声掛けに努め、孤独感を軽減する多床室。不安感の和らいだお母様は症状も軽減、落ち着いた毎日を送られています。
選定ホーム
ホーム(1)住宅型有料老人ホーム。明るくも落ち着いたリゾート感のある内装は、心身開放される雰囲気。同一建物内には内科・歯科・薬局が入居、近隣にも大きな協力医療機関がある。
ホーム(2)介護付有料老人ホーム。大浴場は温泉の源泉を引いた、癒しのお湯。各種機械浴も完備し、サウナルームもある。食事は地域の食材を利用して色彩豊か。
ホーム(3)※入居ホーム
介護付有料老人ホーム。多床室で入居者の孤立からくる不安を緩和し、見守りや声掛けで安心感ある生活を目指している。
入居したホーム
見守りや声かけに努め、多床室で入居者の孤立防止を図っている老人ホーム
今回のポイント
・認知機能に問題がない場合は見学に支障はないが、そうでない場合は注意が必要。
・認知症は周辺環境の変化が症状悪化につながることも。
・老人ホームは生活の場、本人の特性に合わせて考える。