父から離れたくても本心は裏腹
相談者の概況
ご対象者様は認知症で独居の90代の男性。娘様が毎日、通いで介護する中、お父様は肩の骨折で入院。退院日が迫り、娘様は家から遠く離れた老人ホームに入れようとしますが、複雑な思いが錯綜します。
【困っていること】
・独居で認知症の父を娘が通いで介護する中、父が肩の骨折で入院。
・退院日が迫り、娘は父を遠くの老人ホームに入れることを考えていた。
・父から離れたいと思う半面、それでいいのかという不安な気持ちも錯綜。
エピソード詳細
ご対象者様は90代の男性。認知症で独居。近所に住む娘様が毎日、お父様を介護していました。お父様の認知症が進むと、娘様は暴言や暴力にさいなまれるようになります。ある日、お父様は肩を骨折して入院。退院日が迫り、病院の医療ソーシャルワーカー様からご連絡がありました。
娘様にお会いすると、お父様の介護に疲れ切ったご様子で老人ホームに入居させたいと。ただし、家に近いと年中、お父様から呼び出される恐れもあるため、遠くのホームをお望みでした。そこで、ご自宅から遠い所で2軒、あえて近いホームも1軒ご提案。それにはこんな理由があったからです。
娘様は愚痴を吐いていたものの、お父様を心配される気持ちも……。また、認知症で遠くに移ると精神的に不安定になりやすく、何かあった時に娘様もすぐに駆けつけられません。結果的に家に近いホームを選ばれました。
後日、娘様からお礼の電話がありました。「父をうとましく感じていながら、心のどこかで近くにいてほしいと思う気持ちもあったのです。それに気づかせていただきありがとうございました」と。今ではお父様も娘様の訪問を楽しみにされ、お互いに穏やかな日々をお過ごしになっています。
選定ホーム
ホーム(1)※入居ホーム
介護付有料老人ホーム。認知症の受け入れに積極的。家から近い。多床室だが費用は予算内。
ホーム(2)
小規模でアットホームな住宅型有料老人ホーム。家から遠いが居室も広めで費用が安い。外部サービス利用可。
ホーム(3)
看護師が24時間常勤。住宅型で少人数なので自宅さながらの生活が送れる。家から遠くて交通の便が悪い。費用は安い。
入居したホーム
家から近い。多床室で料金も手頃な施設。
今回のポイント
・相談員は相談者、ご家族の話から本当のニーズを引き出して提案を行う。
・相談員に自分の思いを率直に伝えた方が解決の糸口も見つけやすい。
・ホームを選ぶ際、家から近くても、遠くてもそれぞれに一長一短がある。
・予算とエリアの条件が厳しい場合、どちらを優先すべきかが要になる。
・エリアが限定され、予算が少ない場合は多床室のホームも検討すべき。