言葉の選び方ひとつで、自尊心を傷つけてしまうことも
相談者の概況
独居の70代のお母様は、自宅で熱中症を起こしてしまい救急搬送されました。入院によって体力が落ちて自宅復帰は難しいと感じた娘様でしたが、老人ホームには絶対に入りたくないとお母様。そこで、夏の間だけでも、と担当のケアマネジャー様に説得をしていただき、無事入居となりました。
【困っていること】
・お母様が自宅で熱中症に倒れ救急搬送。
・点滴加療で回復するも、体力低下で自宅には戻れそうにない。
・老人ホームへの入居を検討するが、入居拒否。
エピソード詳細
初夏とはいえ朝晩はまだまだ肌寒い5月のある日、70代で独り暮らしのお母様は、熱中症で倒れてしまいました。この日は真夏日になるほど気温が上昇し、お母様は屋内で過ごしていましたが、まだ身体が暑さに慣れていないこともあり急激な気温の上昇に対応できませんでした。
この時期、もっとも注意したいのが熱中症です。7~8月に救急搬送のピークを迎えますが、暑さに体が慣れていない5~6月や残暑が厳しい9月も注意が必要です。熱中症というと屋外での作業や運動中に発生するものと思われがちですが、屋内でも相当数発生しています。特に高齢者の場合、半数以上が住宅内で発生しています。「自宅で過ごしているから大丈夫」とはいえない現状があります。
幸いにも近所に住む娘様が発見し救急搬送。点滴加療のみで回復しました。しかし、数日間の入院生活ですっかり体力が落ち、歩くのもやっとの状態です。お母様は軽い認知症を患っており、日ごろから自宅での生活に不安を感じていた娘様は、ケアマネジャー様の勧めもあり、老人ホームへの入居を検討することにしました。しかし、20年近く独り暮らしをしていたお母様は老人扱いされたことに怒り、これまで誰の世話にもならずに独りで暮らしてきた自信もあって、「絶対嫌だ、自宅に戻る」と娘様の提案に耳を貸しません。
娘様とケアマネジャー様から「プロのアドバイスが欲しい」とあいらいふ入居相談室に連絡をいただき、老人ホームの選定とともにお母様の同意を得るためにどうすればいいのかを一緒に考えることにしました。
まず、「老人ホームに入居したら二度と出られない」という誤解を解くことにしました。老人ホームは終の棲家ではありますが、身体の状態が回復すれば自宅に戻ることも可能ですし、自分に合わなければ転居もできます。次に「何もすることがなく一日中ボーっと過ごす」という誤解です。老人ホームでは、ご入居者に最期まで自立した生活を送っていただきたいと考えています。必要最低限の介助はしますが、歩けるのに車イスを使うなどの自立を妨げるようなケアはしません。また、リハビリやレクリエーション、茶話、季節ごとのイベントなど、楽しみはたくさんあります。もちろん、独りで静かに過ごしたいということであれば、自室でゆっくりすることもできます。
娘様は、夏は熱中症、冬は脳梗塞や心筋梗塞など、夏と冬の自宅での生活は命にかかわることがあると考えており、この時期だけでも老人ホームに入ってもらいたいと思っていました。そこで、体験入居をして、気に入っていただけたらそのまま正式に入居することにしたらどうでしょう、と提案しました。
お母様は、ケアマネジャー様をとても信頼していました。もしかしたら、ケアマネジャー様がお母様を説得したらスムーズなのではないかと考え、話をしていただくことにしました。するとお母様は、「先生(ケアマネジャー)がそう言うなら、夏の間だけでも老人ホームの世話になろうかね」と受け入れてくれました。
そのあとはとんとん拍子に話が進み、1週間後には老人ホームに入居することができました。お母様は老人ホームでの生活が気に入ったようで、「職員さんはみんなやさしいし、食事もおいしい。お友達もたくさんできたので、毎日が楽しい」と、そのまま正式に入居することになりました。
選定ホーム
ホーム(1)※入居ホーム
大手企業運営の介護付有料老人ホーム。ケア内容、医療対応、アクティビティ、食事のクオリティが高い。駅に近くご自宅から徒歩圏内。
ホーム(2)
介護付有料老人ホーム。提携医療機関と連携しており、手厚い医療対応が必要な方でも受入れ可能。比較的安価。ケア内容は一般的。
今回のポイント
・熱中症は7~8月が救急搬送のピークだが、5~6月や9月もリスクが高い。
・短期間の入院でも、急激に体力が低下することがある。
・生活を安定させるには、見守りがある老人ホームでの生活がベスト。
・入居拒否がある場合、信頼している方に説得してもらうとうまくいくことがある。